韓国、中国、アメリカ、フランスでの納豆事情 粘り気が少ない納豆も人気に

納豆は日本を代表する発酵食品の1つです。スーパーマーケットで見かけないことはないほど、多くの人に食べられています。

しかし、独特のにおいや粘り気があり、日本人でも苦手な人がいる食品でもあります。

納豆は健康に良いことでも知られていますが、はたして海外ではどう受け止められているのでしょうか?そこでこの記事では、納豆が世界でどのように認知されているのか、「韓国」「中国」「アメリカ」「フランス」を例に紹介していきます。

納豆は世界で認知されているのか

納豆は、蒸した大豆に納豆菌を加え発酵させたものです。ねばねばとした糸を引くので「糸引き納豆」とも呼ばれています。

日本の伝統的な発酵食品で、血圧を下げる、免疫力を高める、腸内環境を整えるなど、健康に良い働きがたくさんあります。

近年では認知度が高まっている

独特のにおいや食感から、海外では苦手な人が多い印象のある納豆ですが、近年では海外メディアの注目を集めています。

きっかけは、イギリスやアメリカで「納豆が健康に大変良い」と紹介されたことだと言われています。イギリスの医学誌「BMJ(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル)には、納豆をよく食べている人は死亡リスクが低い、という論文が掲載されました。

この論文は9万人を超す日本人を15年間追跡調査した結果に基づいて書かれており、納豆などの発酵性大豆食品を毎日1パックほど食べている人は、ほとんど食べない人に比べると死亡リスクが約10%も低かった、ということが判明しています。

また、アメリカの健康専門月刊誌「ヘルス」が、2006年に納豆を「世界5大健康食品」に選んだことも、納豆の知名度向上に貢献しました。

認知度は高いが好まれてはいない?

味噌や醤油、豆腐に続いて海外でも知られるようになってきた納豆ですが、あの独特のにおいや粘り気が苦手、という外国人は多く見られます。

そこで納豆の産地茨城県は、納豆メーカーと連携し粘り気が少ない納豆「豆乃香」を開発しました。粘り気がないため、混ぜると粒がバラバラになってスプーンでも食べやすくなり、外国人に好まれています。

このように、国境を越えて多くの人が納豆を楽しめるようにする工夫も見られています。

韓国の納豆事情

韓国では、国を代表する食品企業の「プルムウォン」が2006年より納豆を製造するなど、納豆に対する認知度は高まっています。

健康志向の高まり

韓国は1980年代より経済が急激に発展し、食生活も豊かになりました。しかし反面、2000年代に入ってからは肥満や生活習慣病も増え、社会問題として取り上げられるようになったのです。

その結果、身体に良いものやスローライフに対する関心が高まり、それに伴って納豆も注目を集めるようになりました。

現在では、納豆は「健康に良い成分を多く含んでいる」「料理の必要がなくそのままで食べることができる」といった理由で人気が高まっています。

プルムウォン生産の納豆の特徴

プルムウォンが生産する納豆は、においが少ないけれど粘り気があります。理由は、韓国人の好みに合うよう、納豆独自のにおいがあまり強くない納豆菌を使っているからです。

韓国の納豆のたれは「醤油」だけでなく「ゆず」「辛子」「わさび」などがあります。価格は2個入りパックで3000ウォン、日本円に換算すると約300円と少々高めです。

韓国において納豆は中高年に人気がありますが、若者にはあまり浸透していません。そのため、プルムウォンでは若者が好きな「わさび味」の納豆や、子ども向けの「のり醤油味」や「バター醤油のたれ」の納豆を発売するなど、購買層の拡大にも力をそそいでいます。

中国の納豆事情

中国の立鼎産業研究網のデータによると、中国の納豆市場の規模は急速に拡大しており、2009年の約8500万元(約1億3600万円)から2019年には2億5600万元(約4兆円)と、10年間で大幅な伸び率を記録しています。

納豆の起源は中国の雲南省という説もあり、中国人にとってはあまり抵抗がない食品なのかもしれません。

ナットウキナーゼが注目の要因

中国では脳血管に関する疾病を抱えている人が多く、中国人の死因にはがんと並んで血管疾患があります。

納豆に含まれている「ナットウキナーゼ」は血液をさらさらにする働きがあるので、血管や血圧の病気を抱えている人の注目を集めています。価格も手頃なことから、健康に意識が高い富裕層の中高年を中心に、納豆は人気になっているのです。

手作り納豆も人気

中国では「納豆製造機」も通販などでよく販売されています。蒸した大豆に納豆菌を加えて製造機にセットすると24時間後には納豆が完成するもので、300~500元(約4,800~8,000円)ほどで販売されています。

コロナ禍で外出ができない中、自宅で納豆を作ることができるのが魅力と感じられたようです。

アメリカの納豆事情

アメリカでも中国と同じように高血圧や心疾患、脳血管疾患が主な死因となっています。そこで、健康食品である納豆が注目されています。

プロバイオティクスのブームがきっかけ

アメリカでは、乳酸菌やビフィズス菌などの腸内環境を改善する「プロバイオティクス」がブームとなっており、善玉菌の働きを促す発酵食品にも注目が集まっています。

ニューヨークタイムズでは、プロバイオティクスを多く含む食品として納豆を取りあげており、あらゆる商品の比較を公平に行うことで有名な「コンシューマー・レポート」でも話題になりました。

アメリカでの納豆の扱い方や食べ方

しかし、納豆のにおいやネバネバが苦手な人も多い、というのはアメリカでも同じで、「納豆の粘り気を取るために洗う」という人も。

アメリカの日系スーパーで販売されている納豆は一度冷凍されていますが、冷凍していない生の納豆をリサイクル可能なガラス瓶に入れて製造・販売しているニューヨークの会社もあります。

日本では納豆を主張が少ない白いご飯に乗せて食べることが主流です。しかしアメリカの食事は濃い味付けのものが多いので、ピザにのせたりタコスの具にしたりと、他の料理と組み合わせて食べられています。

フランスの納豆事情

フランスではにおいの強いチーズをよく食べるので、他の国よりは納豆に対する抵抗が少ない人が多いようです。

そのうえヨーロッパの健康ブームにも乗って納豆はフランスでも人気が上昇しており、こだわりの納豆を作って販売しているフランス人もいます。

フランス人もにおいと粘り気が苦手

とはいえ、やはり納豆のにおいと粘り気が苦手なフランス人も多くいます。

そこで、上記で紹介した粘り気が少ない「豆乃香」をリヨンで開催された世界最大級の外食産業向け展示会「Sirha2015」へ出したところ、連日2000食が完食。引き合いは100件以上あったそうです。

フランスの外務大臣までがブースに現れて「おいしい」を連発したほどで、現地のメディアからも連日の取材があり、粘らない納豆が大ブレイク。フランスでの納豆の知名度をより高めました。

まとめ

近年、健康に対して高い関心を持つ人が世界中で増えています。

納豆は健康に良い働きがたくさんあるため、注目を集めている食品です。

においや粘り気に抵抗がある外国人向けの納豆の販売やご飯ではなくパンに合うレシピの開発なども行われており、海外への輸出の広がりも期待されています。

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