世界と日本の代替肉市場|現状と将来性について

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現在、代替肉は環境だけではなく人にも優しい食品として、世界中から注目を集めています。この人気にともなって、海外での代替肉の市場規模は年々拡大していますが、これと比較して日本の現状はどうなのでしょうか。

今回は「世界における代替肉市場の現状」と「日本企業の代替肉商品への取り組み」、そして「世界と日本での代替肉市場の将来性」について紹介します。

世界における代替肉市場の現状と将来性

ここでは、代替肉市場の概要および代替肉市場の現状と将来性について、グローバルな視点で解説していきます。

世界における代替肉市場の現状

市場調査を手がけるシード・プランニングによれば、世界における代替肉の市場規模は2020年に110億ドルに達し、2030年には886億ドルにまで及ぶと報告されています。

出典:SEED PLANNING公式ホームページ

代替肉市場がこれほど注目されている理由は、代替肉の利用により現在抱えている国際問題が解決できる可能性があるためです。

例を挙げれば、温室効果ガスの排出が多い畜産業と比較して、植物性食材の利用は温室効果ガスの発生を抑制し、結果として環境への負荷を軽減できます。

代替肉市場の広がりは、現状では欧州が中心となっています。欧州は環境問題に対する国民の関心がとても高く、これが代替肉を購入する動機づけとなっているためです。

世界における代替肉市場の将来性

代替肉の素材として「植物由来」以外に、「動物細胞由来の細胞培養肉」の商業化が世界中で繰り広げられています。

特にシンガポールでは、すでに細胞培養肉の販売・製造に対する規制の枠組みが導入されています。シンガポールだけでなく、アメリカや中国のスタートアップ企業も商業生産の準備を進めています。

細胞培養肉の商業化を急ぐ理由の1つに、将来的にタンパク質不足の危機が起こるという懸念が強まっていることが挙げられます。2058年には約100億人に到達すると予測される人口増加に伴い、タンパク質源の需要と供給バランスが明らかに崩れることが示唆されています。

細胞培養肉は、動物肉の筋肉をもとに肉を製造できる唯一の方法です。既存の畜産業に頼る必要がないため、将来的には細胞培養肉の製造へシフトしていくことが考えられます。

このデメリットとしては、代替肉の普及により畜産業が衰退し、畜産業界に関わる雇用が失われる可能性があることです。

日本企業の取り組みと代替肉商品一覧

海外での代替肉市場の拡大に伴い、日本でも代替肉の商品化が本格化しています。ここでは、カゴメ、マルコメ、日本ハム、大塚食品、イオンの国内大手5社が販売している代替肉商品について紹介します。

カゴメ株式会社の代替肉商品

出典:カゴメ公式ホームページ

カゴメは、動物性素材を一切使用していない「プラントベースシリーズ」を展開しています。

「ベジミートボールのトマトのソース」という銘柄で販売されており、NGO法人ベジプロジェクトジャパンからのヴィーガン認証を受けています。ミートボールは大豆由来で、玉ねぎや生姜なども原料に含まれています。

茹でたパスタとこのパスタソースを混ぜるだけで、植物性のトマトパスタができあがります。

マルコメ株式会社の代替肉商品

出典:マルコメ公式ホームページ

マルコメは大豆を使った「ダイズラボシリーズ 大豆のお肉」を販売中です。

大豆は高タンパク質・低糖質に加え、低カロリー・低脂質と理想的な食材です。マルコメは大豆ミートに力を入れており、ダイズラボは大豆の油分を搾油して加熱加圧・高温乾燥させてできた、お肉の代用品として使える大豆のお肉です。

湯戻しや水切りなしでそのまま使えるレトルトタイプで、すべての商品がそのまま使えるように加工されています。

日本ハム株式会社の代替肉商品

出典:日本ハム公式ホームページ

日本ハムもマルコメと同様、大豆ミートシリーズを展開しています。大豆のもつ特有の青臭さを減らすために独自の水戻し製法を開発し、肉のうま味が引き立つように工夫されています。

銘柄は「ナチュミート」で、ハムタイプとソーセージタイプが販売されています。ハムタイプはハムの代替品としてサラダやサンドイッチなどのレシピに、ソーセージはホットドックの具材として利用可能です。

大塚食品株式会社の代替肉商品

出典:大塚食品公式ホームページ

大塚食品では、大豆加工食品として「ゼロミートシリーズ」を展開中です。お肉を一切使っていない植物性ハンバーグが主力商品で、購入者からは味も歯ごたえも本物の肉のようだと大変好評です。

販売中のハンバーグには、デミグラスタイプとチーズインデミグラスタイプの2つがあり、どちらもレンジもしくはお湯で温めるだけで完成です。

イオントップバリュ株式会社の代替肉商品

出典:イオントップバリュ公式ホームページ

イオントップバリュではお肉を大豆で代替したブランド「Vegetive(ベジティブ)」を提供中です。Vegetiveはお肉に限らず乳製品・白米・小麦を植物性の素材に置き換えた商品シリーズです。

販売している商品はハンバーグ、マヨネーズ、プリンなど、様々なバリエーションがあります。

日本における代替肉市場の現状と将来性

最後に、日本で急速に普及し始めた代替肉の現状と将来性について解説します。

日本における代替肉市場の現状

シード・プランニングの調査結果によると、2020年における日本の代替肉市場は346億円に到達しました。2030年には、780億円規模にまで拡大すると予測されています。

出典:SEED PLANNING公式ホームページ

日本で代替肉の普及がはじまったのは、2020年と考えられています。同年10月に農林水産省が「フードテック官民協議会」を立ち上げ、新しい技術を利用した食材の一つとして「代替肉」が提案されているためです。

2021年1月には、代替肉だけを取り扱うスタートアップ企業「ネクストミート株式会社」が創業わずか7ヶ月でアメリカSPAC上場となり、大きな話題を呼びました。

その証拠に、イトーヨカドーでは代替肉の売り場をさらに広げ、大豆ミートの販売に力を注いでいます。また、一人焼肉チェーン店「焼肉ライク」の全店舗では、すでに代替肉の提供がはじまっています。

日本における代替肉市場の将来性

代替肉がテレビや雑誌で頻繁に取り上げられるようになって以来、日本での代替肉の認知度は高まりを見せています。

現在日本では、大豆ミートのような植物性代替肉が求められる傾向にありますが、将来的には培養肉へ移行する可能性もあります。その理由は、培養肉には本物の肉の味を再現できる可能性があるためです。

ただ、おいしい培養肉を作るためには高額な費用がかかることは事実で、低コスト化が課題となっています。

まとめ

今回は「世界と日本における代替肉市場の現状と将来性」について紹介しました。

代替肉市場の現状としては、世界では欧州を中心に年々広がりを見せ、これを受けて日本でも、大手食品会社による代替肉の製造・販売がはじまりました。

将来的には、先に起こるタンパク質危機を避けるため、また本物の肉のおいしさを再現するためにも「培養肉」へシフトしていく可能性が示唆されています。

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