台湾では砂糖を入れた甘い味噌汁が人気 淡白な味付けの食文化が影響

親日国としても知られる台湾。近年、台湾では日本食ブームが起こっており、今もなお続いています。

日本食ブームのきっかけの一つとして、多くの台湾人が日本へ旅行に行くようになったことが挙げられます。日本へ来た台湾人は、滞在中に様々な日本食文化に触れます。帰国後、台湾料理に日本のアレンジを加えるなどして、発展させた料理が台湾で人気になっています。

もともと食文化が似ている両国。多くの台湾人にとって日本食は非常にヘルシーで食べやすく、健康志向の高い台湾で人気がでるのもうなずけます。

実際に台湾国内では日本食チェーン店が数多く出店しています。しかし、本格的な日本食は少し高いイメージがあり、日本人も納得できるレベルの日本料理が食べられるのは、一部の富裕層に限られます。

そのため一般の人々が食べる日本食は、台湾人に向けてアレンジが加えられたものが多く、その一つが味噌汁です。台湾旅行に行った日本人が、日本食が恋しくなり現地の日本食レストランに入ると、その味の違いにかなり驚くようです。

そこで今回は、そんな台湾の味噌汁事情と、日本食が親しまれる理由について解説していきます。

台湾で日本食が親しまれる3つの理由

台湾に詳しい専門家によると、台湾で日本食が好まれる理由は以下の3つになります。

日本への観光旅行が人気

右肩上がりで増え続ける訪日観光客。2009年には約100万人だった訪日観光客は、2018年には約475万人まで増えるなど、9年間で日本へ来る観光客はおよそ5倍に増加しています。

もともと日本へのイメージも良く、日本ブランドが受け入れられやすい土壌ができていると言えますね。

女性の社会進出

近年、台湾でも女性の社会進出が非常に加速しています。アジア・オセアニア地域の14か国で比較したところ、台湾における女性の社会進出は同地域内で5位となっています。

共働き世帯が多いため、外食頻度が非常に高くなっており、それに比例し外食産業も右肩上がりで成長を続けています。ちなみに日本は13位と遅れをとっており、台湾で女性の社会進出がいかに進んでいるかが分かります。

昔から「日式料理」として親しまれていた

日清戦争で清の敗北をきっかけに、1895年から50年間も日本に統治された台湾。この間、インフラ整備や学校教育など様々な貢献をした日本への信頼は非常に厚く、今もなお親日的な国民が80%以上もいるという調査結果もあります。

そんな時代から日本料理は「日式料理」として日常的に親しまれてきた歴史的背景があります。

台湾人は「台式」味噌汁が大好き

「台湾料理は中華料理であり、脂っこく、強い香辛料が多く使われ、日本人には少しなじみにくい」と想像される方も多いのではないでしょうか。

しかし、実際の台湾料理は本場の中華料理に比べて、あっさりした料理が多いのが特徴です。

主に東南アジアなど、年間通して気温の高い熱帯地域では塩分の濃いものより、甘いものを好む傾向にあります。台湾もその例外ではありません。

台湾の食文化

台湾は中国福建省から移住した民族が多く、国民全体の7割にもなります。ですので、台湾料理は中国南部の料理がベースとなっています。その特徴は淡白な味付けが多く、塩分を控えめにし、素材そのものの味を生かす調理法が多く用いられるそうです。

台湾味噌汁の定番の具材

台湾では長く日常的に日本料理が食べられており、台湾人にとって味噌汁は親しみのある料理の一つです。そんな台湾人が大好きな味噌汁の定番の具材は、非常にシンプルです。代表的なものは、我々日本人もよく食べている豆腐、わかめやとき卵です。

また前述したように、あっさりしたものを好む台湾人は、ダシなどの繊細な風味も大好きです。味噌汁の特徴的な調理法として、ダシをとるためのカツオやいりこは取り除かずに、なんとそのまま具材として一緒に食べてしまいます。

日本と台湾の味噌汁の違いは?

食文化が似ているようで違う日本と台湾。味噌汁一つとってもかなり大きな違いがあります。

台湾人はあっさりしたスープで食事を締めくくる

台湾の食文化として、スープなどの汁物は食事の最後に食べる風習があります。ですので、最後にあっさりとしたスープで食事を締めくくるという位置づけです。

そうなると、必然的に日本食レストランで食べる味噌汁も食後に食べられるため、非常にあっさりした味で、具材も多くありません。日本人にとっては「味噌汁をさらにお湯で割ったもの」という少し物足りない印象です。

台湾の味噌汁は甘い?

日本人が台湾の味噌汁を飲むと、あっさりとした味付けに驚くでしょう。しかし、台湾の味噌汁は「甘い」という特徴もあります。

前述したように、台湾では年中気温が高いため日常的に甘いものやあっさりしたものを好む食習慣が根付いています。「まさか味噌汁までもが甘いのか」と驚く方も多いかもしれませんが、実際に台湾の味噌汁には砂糖が入っています。

日本の味噌汁は塩辛すぎる?

甘い味が大好きな台湾人にとって日本の味噌汁は塩分が濃く、少し食べづらいもののようです。

また日本では多くの場合、味噌汁を台湾のように食後ではなく、食中に白米と一緒に味わいます。ですので、塩分を少し濃くし食べ合わせを考えて作られています。

そのため、台湾人が日本へ訪れた際に日本の味噌汁を飲むと、親しんだ台湾味噌汁との違いに驚くそうですよ。

台湾の日系のラーメン屋などでは、スープの味が濃いと感じた台湾人へ、お湯を注いでスープを薄めるサービスを提供しているお店もあるようです。

台湾で売られている日本の味噌

一般的なスーパーでは近年、当たり前のように日本の味噌が売られています。日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査によると、2016年時点での味噌1パック(300~500g)の価格は、408~923円。日本国内では1kgで300~500円程度なので、やはり少し割高です。

台湾の物価は日本の約3分の2程度。日本人の平均年収が約420万円に対して、台湾人の平均年収は約200万円と半分以下。そう考えると、やはり日本の味噌をはじめとした食材は安くありません。

輸入品である日本製の味噌より、現地で製造された味噌が今では多く流通しており、そういったものであれば比較的安価で手に入ります。

実際に売られている商品は日本製に比べ少し小ぶりだそうですが、薄味の味噌汁を好む台湾人にとっては、一度に使う量が日本人よりも少ないため、ちょうどいいサイズだと言えます。

まとめ

ジェトロの調査によると、コロナ禍により台湾では在宅勤務率が50%も上がっており、同時に健康志向の人も増加しているそうです。共働き家庭が年々増加傾向にあり、もともと日常的に外食文化のある台湾は、あまり料理に手間をかけたがらない国民性だと言えます。

そのためヘルシーで体に良く、且つ手軽に作れる料理が好まれます。そういった意味でも、まさに味噌汁はその条件を満たした料理と言えますね。今後味噌汁のように多くの日本食が台湾式にアレンジされ、台湾の食文化においてさらに日常のものとなるのではないでしょうか。

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