醤油の輸出における課題と対策|各事業者の取組事例もご紹介

醤油は日本の食文化において、長い歴史をもつ伝統的な発酵食品です。世界的な日本食人気にともない、醤油は広く知られるようになりました。

一方、醤油の輸出についてはいくつかの課題を抱えているのが現状です。

今回は「醤油の輸出の歴史」についてご紹介したあと、「醤油の輸出のイマ」について各醤油事業者の取組を例に挙げながら解説していきます。

醤油の輸出の歴史

醤油が初めて海外へ輸出されたのは、江戸時代といわれています。鎖国をしていたにもかかわらず、長崎の出島からの貿易は許されていました。この出島から中国とオランダに向けて、醤油は船で輸出されていたようです。

「バタビア城日誌」や「長崎商館日記」などによると、中国への醤油の輸出が初めて記録された日は1669年3月31日、その輸出量は20樽程度だったとのことです。輸出経路には、長崎と中国を往復する船とジャカルタを経由して中国を向かう船の2つがあったようです。

また、1737年から約24年間続いたオランダへの輸出経路については、長崎を出たあとジャカルタに到着し、その後オランダへ運ばれていました。ジャカルタを経由する理由は、ジャカルタからタイやベトナムなどのアジア諸国へ醤油を輸出するためでした。

1854年の開国にともない醤油の輸出量の増加が期待される中、しばらく伸び悩みの状況が続きました。大きな変化が見られたのは、第二次世界大戦以降です。

1973年にキッコーマンがアメリカに工場を建設したことを境に、欧米諸国で醤油が親しまれるようになりました。そして長い月日を経て、寿司や刺身などの現在の日本食ブームに至っています。

醤油の輸出のイマ

ここでは、2021〜2023年の3年間で見られた醤油の輸出実績の推移と変化について解説します。

2021年1年間の輸出実績

出典:農林水産省「2021年農林水産物・食品の輸出実績(品目別)」

2021年1年間の醤油の輸出額は91.4億円と過去最高額に達しました。

2020年と比較して、アメリカ向けの輸出額が約5.8%減ったにもかかわらず、ヨーロッパ向けの輸出額が約59.7%増えたことに起因しています。

2022年1年間の輸出実績

出典:農林水産省「2022年農林水産物・食品の輸出実績(品目別)」

2022年1年間における醤油の輸出額は、最高額の前年度と比べて94億円と約2.8%の増加が見られました。

2022年の輸出実績は2021年とは異なり、アメリカへの輸出額が約23.6%増、ヨーロッパ向けの輸出額は約23.0%減が報告されています。

2023年1〜6月の輸出実績

出典:農林水産省 輸出・国際局「2023年1ー6月 農林水産物・食品の輸出額」

2023年1〜6月半年間の醤油の輸出額は、前年度の同期と比較して約4.2%増加していました。その金額は47.5億円でしたが、6月単月で比較した場合、前年度より約5.1%減の結果となりました。

2023年9月の輸出実績

出典:農林水産省 輸出・国際局「2023年9月 農林水産物・食品の輸出額(11月7日(火)公表)」

2023年9月単体の輸出額は、前年9月と比較すると約7.0%増の8.62億円となっています。

各醤油事業者の輸出の取り組み例

世界中で醤油の需要が高まる中、日本の醤油事業者はその需要に応えるため、さまざまな取組を行っています。

ここでは、5つの醤油事業者が実際に行っている具体的な取組についてご紹介します。

ちば醤油株式会社

千葉県香取市に会社を構えるちば醤油株式会社では、輸出拡大に向けた取組がすでに始まっています。特に、海外で開催される食のイベントの参加には積極的です。

2015年にミラノで開かれた国際博覧会では、国際食品アワードで「優秀味覚賞」の二つ星を2度獲得している「下総(しもうさ)醤油」を焼きおにぎりとして提供し、好評を得ました。

ちば醤油株式会社は今後も国際的な食のイベントに参加することで、海外に新規取引先を増やしていく構えです。

山元醸造株式会社

山元醸造株式会社は、富山県の老舗醸造会社として知られています。早くから輸出に向けた取組を行っていたため、現在は醤油関連の輸出が好調な会社です。

最初に試みた取組は、中国・タイ・シンガポールなどのアジア諸国のバイヤーを招へいした商談会に参加することでした。直接バイヤーと話すことで信頼関係を築き、取引先が増える結果となりました。

また、山元醸造株式会は海外の展示会に参加する際には自社商品をアピールするのではなく、富山県を先に紹介することを戦略としています。富山の雪景色とその自然の恩恵を受けて醤油が製造されていることが、海外バイヤーに好評のようです。

株式会社柴沼醬油インターナショナル

茨城県にある株式会社柴沼醬油インターナショナルは、SIAL ParisやFood Expoなどの国際的な見本市を通じて、海外への販路拡大に成功した会社です。

この会社の母体は1688年創業の柴沼醤油醸造株式会社でしたが、輸出に特化することを目的に2017年分社化されました。この会社のこだわりとしては、多岐にわたる各国のニーズに対応した商品を作ることです。

例えば、グルテンフリー醤油や減塩醤油、アルコール不使用の醤油など健康面や宗教を考慮した商品開発に努めています。

現在は、醤油や醤油関連の商品をアジア・ヨーロッパ・アメリカ・オセアニアなどの約60カ国へ輸出するまでに成長しました。将来的には、輸出先を80カ国まで広げることを視野に入れ、現在も海外へのプロモーションを進めています。

鎌田醤油株式会社

香川県坂出市に本社を置く醤油株式会社は、230年の歴史を持つ老舗の醤油製造・販売会社です。2022年3月時点で、アメリカやアジア、ヨーロッパ諸国へ醤油を輸出しています。

戦略としては、その国にあった醤油作りを試みることです。例えば、インドネシア国内の需要に応えるためにハラール認証を受けた醤油を開発し、現在はEU諸国向けにEU HACCPを採用している企業との取引を検討しています。

2021年4月〜2022年3月における醤油の輸出量及び輸出額は、40トンで5800万円程度でした。輸出相手国としては、フランス・中国・アメリカ・台湾・韓国などが挙げられます。

今後は、輸出相手国を増やして醤油の輸出量を増やすことを目標としています。

参考:農林水産省「輸出事業計画 申請者名:鎌田醤油株式会社、品目:醤油」

木桶仕込み醤油輸出促進コンソーシアム

木桶仕込みの醤油を世界に広めようとしているのは、一般社団法人木桶仕込み醤油輸出促進コンソーシアムです。

じつは醤油には、白・淡口・濃口・再仕込・溜の5種類があります。白ワインが合うさっぱりした料理には白や淡口醤油、再仕込・溜醤油は赤ワインに合う味の濃い料理に最適です。

この5種類の醤油をアピールする場となったのが、サンフランシスコにあるTwitter本社でした。5種類の醤油とラーメンをコラボさせ、木樽で作られた醤油をアピールしたようです。

この他にも、海外向けに英語で書かれたWEBサイトを作成したり、海外向けの商品にQRコードを貼り付けたりと、日本からの情報発信に力を入れています。

これからの醤油の輸出の課題と対策

質が良い日本の醤油の輸出量は増加傾向にありますが、いくつかの課題は残されています。

最も大きな課題となっているのは、輸出に対して個々の醤油会社が対応を迫られている現状です。例えば、輸出相手国によっては使用する原料や添加物に対して厳しい規制が設けられている場合もあり、時には規制が改正されることもあります。

上記の規制や改正への対応は個々の会社では大変難しく、オールジャパンとして動く必要が日本政府に求められています。

現在、日本政府はJETROやJFOODOの協力を得て、生産から販売に至るまでの関係者が連携し、醤油の輸出拡大を図る取組を行っています。

まとめ

今回は、日本の醤油輸出の現状と醤油事業者の具体的な取組、現在抱えている醤油輸出に対する課題と対策についてご紹介しました。

醤油の輸出量は、海外での日本食人気にともない増加しているのは事実です。老舗の醤油事業者も世界へ向けてさまざまな取組を行っています。

今後、日本政府はオールジャパン体制で醤油の輸出を推し進めていく構えです。

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