「指圧」に「北海道」!?名称と品種が交差する日本と世界のかぼちゃたち

秋から冬にかけて、食卓を彩る食材のひとつに「かぼちゃ」があります。

煮物や天ぷらなどのおかずだけでなく、パンやお菓子など幅広い料理に使われている身近な食材です。私たちが普段何気なく口にしているかぼちゃですが、その分類や歴史、そして世界での扱われ方には、一般には認識されていない奥深いストーリーがあることをご存じでしょうか。

海外のスーパーやマルシェ(市場)では「Hokkaido(北海道)」や「Shiatsu(指圧)」など、ちょっと不思議な名前に出会うことがあります。

実は、日本では西洋かぼちゃと認識されているかぼちゃの一種が、海外では日本由来と認識されるなど、世界各地で品種や名称が複雑に行き交っています。今回は、日本と世界のかぼちゃをめぐる、ちょっと意外な関係をみていきましょう。

日本でのお馴染みの品種、実は「西洋かぼちゃ」?

現在、日本のスーパーで一年中見かける緑色の皮のかぼちゃは、実はそのほとんどが「西洋かぼちゃ」に分類される品種です。まずは歴史をひもといていきましょう。

アメリカ大陸からの品種が日本に

日本に初めてかぼちゃがもたらされたのは16世紀(1541年頃)のことでした。

ポルトガル船がカンボジアを経由して九州の豊後国(現在の大分県)へ漂着した際に、南北アメリカ大陸原産のかぼちゃが持ち込まれたのが始まりとされています。この「カンボジア」という言葉が訛って「かぼちゃ」という名称になったというのが定説です。この時伝来したのが、現在の「日本かぼちゃ」の仲間でした。

その後、19世紀になってアメリカなどから入ってきたのが「西洋かぼちゃ」です。当初は飼料用などとして使われていましたが、高度経済成長期以降、日本人の好む強い甘みとホクホク感を持つ西洋かぼちゃが急速に普及し、主流のかぼちゃとなりました。

かぼちゃは大きく3つに分類される

かぼちゃにはたくさんの品種がありますが、大きくわけると3つに分類されます。分類ごとのかぼちゃの特徴をみていきましょう。

|分類|日本かぼちゃ|西洋かぼちゃ|ペポかぼちゃ|h
|見た目|表面に深い溝や凹凸があるものが多い|丸みがあり、比較的表面が滑らか|丸みがあり、比較的表面が滑らか|
|代表的な品種|黒皮かぼちゃ、小菊かぼちゃ、バターナッツ|えびす、栗かぼちゃ、坊ちゃんかぼちゃ、ロロン|ズッキーニ、そうめんかぼちゃ、プッチィーニ|
|日本での認識|伝統的な品種|食用として一般的|独自性を持つ品種|
興味深いのは、名称からも西洋のイメージがあるひょうたん型の「バターナッツ」は、植物学上の分類は「西洋かぼちゃ」ではなく「日本かぼちゃ」の仲間に属していることです。

また、ズッキーニは色や形状、硬さも異なりますが、ペポかぼちゃの一種。ペポかぼちゃにはほかにも、茹でると繊維がそうめんのように細長くほぐれるそうめんかぼちゃ、ハロウィンにも使われる小さなプッチィーニかぼちゃなど、独自に改良された品種が多く揃っています。

こうした外見やイメージと実際の分類の違いも、かぼちゃの面白い特徴です。

世界のかぼちゃ料理は日本と違う?

日本と海外では、かぼちゃの食べ方や調理法に大きな違いが存在します。その最大の理由は、果肉の「水分量」の違いにあります。

|分類|日本かぼちゃ|西洋かぼちゃ|ペポかぼちゃ|h
|水分量|多い|少ない|品種により異なる|
|食感|しっとり、ねっとり|ホクホク、粉っぽい|品種により異なる|
|味|淡泊で優しい甘み|濃厚な甘み|品種により異なる|
|調理方法|煮物、蒸し物、スープ|煮物、天ぷら、コロッケ、スイーツ|炒め物、スープ、サラダ|

ホクホクした西洋かぼちゃ

日本で好まれる西洋かぼちゃは、水分が少なく加熱すると栗やさつまいものようにホクホクとした食感に仕上がります。和食の定番である煮物や天ぷらをはじめ、潰してペースト状にするお菓子(プリン、ケーキ、タルトなど)にも最適です。

欧米で流通しているかぼちゃは水っぽい

一方、欧米で食べられているかぼちゃの多くは、西洋かぼちゃに分類されるものであっても、日本で主流のかぼちゃよりも水分が多いのが特徴です。加熱してもホクホク感が出ず、べちゃっとしやすい傾向にあります。

そのため、角切りにしてそのまま煮物にするような料理には向いていません。

食べ方としては、じっくり茹でて裏ごししてスープやポタージュに、シナモンやスパイスを加えてパンプキンパイのフィリング(詰め物)に仕立てるのが一般的です。

英語圏でのかぼちゃの位置づけと呼び方

私たち日本人からすると、かぼちゃは英語では「パンプキン(pumpkin)」と呼ぶというイメージですが、それは主にハロウィンに使われるオレンジ色の皮のかぼちゃを指し、食用かぼちゃ全般は「スクワッシュ(squash)」と呼ばれています。

日本では見かけない「指圧」や「北海道」ってどんな品種?

ヨーロッパのスーパーやマルシェでは、日本ではあまり見られない名前のかぼちゃに出会うことがあります。

ドイツで定番の「Hokkaido」

代表的なのが、「Hokkaido(ホッカイドウ)」という品種です。玉ねぎのような形と、鮮やかな赤オレンジ色が特徴です。

「Hokkaido」は、その名前に反して北海道が由来の品種ではなく、石川県金沢市で作られた伝統野菜「打木赤皮甘栗かぼちゃ」が元になっています。1993年にドイツ在住の日本人が北海道で育った同品種を持ち込み、栽培を始めたことからこの名前がつけられました。

1990年代以降は爆発的にヨーロッパに普及し、特にドイツ人にとってHokkaidoは、地名ではなくかぼちゃの名前として知られているほどです。

日本のかぼちゃに近い「Shiatsu」

また、フランスのパリなどでは、「Shiatsu(指圧)」という名前のかぼちゃが秋から出回っています。

名前の由来に関しては、かぼちゃの表面の凸凹が指圧の際にかかる圧力を連想させ、東洋の健康イメージも相まってつけられたという一説があります。濃い緑色の皮とオレンジ色の中身が特徴です。

ヨーロッパで一般的に販売されているかぼちゃよりも水気が少なく、日本のかぼちゃに近いほっくりとした食感と甘みで、現地の日本人などにも人気があります。

日本の「かぼちゃ」は海外でも買えるの?

近年では、海外でも「Kabocha」という表記で、日本で食べられているタイプのかぼちゃが販売されるようになってきています。

日本で食べられている西洋かぼちゃに近い、甘くてホクホクした食感のかぼちゃとして認識されており、特に現地のパティシエやお菓子作りが好きな人々の間では、さつまいものように濃厚な甘みとキメのある「Kabocha」は高く評価されています。

海外で「Kabocha」という文字を見つけたら、日本人にとってお馴染みのかぼちゃである可能性が高いです。

日本の西洋かぼちゃが海外では日本由来?

かぼちゃは、食文化が国境を越えて行き来するなかで、品種や名称、そして人々の認識が複雑に交錯し、非常に興味深い状況を作り出しました。

もう一度、歴史を振り返ってみましょう。かぼちゃの原産地は南北アメリカ大陸であり、大航海時代にヨーロッパへ伝わり、そこからアジアや日本へと渡ってきた食材です。日本国内では、学術的・歴史的な区分として「海外から渡来したもの」という意味で「西洋かぼちゃ」という分類名が使われています。

一方で、現代の私たち日本人の感覚としては「海外から来た珍しい野菜」ではなく、長年の品種改良を経た「日本の定番野菜」そのものです。そして、日本で改良されたこれらの西洋かぼちゃが再び海外へ渡った結果、海外では「日本独自の素晴らしい野菜」として認識されるようになりました。

つまり、日本人が「海外の品種」と思っている「西洋かぼちゃ」が、海外では日本由来の「Kabocha」や「Hokkaido」として親しまれているのです。

まとめ

かぼちゃの原産はアメリカ大陸ですが、ヨーロッパなどを経由して広がり、品種改良を経て普及するなど、複雑な歴史を持っています。

今では「西洋」に分類されながら日本で親しまれ、海外では「Kabocha」「Hokkaido」のように日本由来の食材であると認識されているのも興味深い事実です。

この世界を旅したたくましいかぼちゃたちは、今後も日本のみならず世界各地で新しい品種、食べ方が生み出され、形を変えながら親しまれていくことでしょう。

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