トムヤムやザリガニ味も マレーシアでおにぎりが定着 コンビニの普及が後押しか
シンプルな日本のファストフードといえば、おにぎりを思い浮かべる人が多いでしょう。
おでかけ用に簡単に準備でき、持ち運びも便利。あの三角形のおにぎりは、日本特有です。
そんなおにぎりが今、マレーシアで大人気です。日本人にはシンプルに見えるおにぎりですが魅力のポイントは何でしょうか?
そこで今回は、マレーシアにおけるおにぎり事情について紹介していきます。
マレーシアで日本のおにぎりがブームに
赤道に近い熱帯のマレーシア。お料理も辛い味のものが多く、日本と比べると食文化がかなり異なります。
そんなマレーシアで日本のおにぎりが大人気になっています。理由としては日系スーパーやコンビニの戦略が大成功したことが挙げられます。特にマレーシアに進出したファミリーマートのおにぎりが、マレーシアの人々の間で大人気なのです。
ファミリーマートのおにぎりがマレーシアで普及
マレーシアのファミリーマートでは、おにぎりに限らず、日本でも買えるお菓子、おでん、ファミリーマートオリジナルブランドのものなど、日本の店舗と変わらないくらい豊富な品ぞろえがあります。
パッケージもかわいく味も洗練された日本のお菓子は、マレーシアに限らず諸外国でも大人気です。その中でも特におにぎりに力を入れているのがファミリーマート。
店内に並ぶ、たくさんの種類のおにぎりには、日本の定番の具もあれば、日本にはないマレーシアならではの具もたくさん。現地の食材や人々の好み、食文化に合わせて工夫していることがわかります。
三角形のごはんの中に具を入れて、さらにパリッと食感もよい海苔を巻く。この日本のおにぎりのスタイルや具の豊富さから、マレーシアでおにぎりが大人気になったようです。もちろん、海苔の食感(開封時に巻くタイプ)や、お米の鮮度にもこだわりがあり、おいしさを追求した結果と言えるでしょう。
日本のおにぎり専門店も登場
ファミリーマートやスーパー以外にも、日本のおにぎりを専門に販売するお店があります。
中でも、日本に15年以上滞在していたオーナーが手がける「ニコニコおにぎり(Niko Niko Onigiri)」では、店内でおにぎりや寿司、日本の定食が食べられます。特におにぎりは、具の種類が29種類もあり、さまざまな味を楽しむことができます。
テイクアウト用のおにぎりは、日本のコンビニおにぎりのように透明シートを切って海苔を後から巻くタイプのものです。パリッとした新鮮な海苔の食感が味わえるのも、マレーシアで人気が出た理由の1つでしょう。
おにぎりが受け入れられた理由とは
日本のおにぎりがマレーシアで受け入れられたのには、マレーシアの食文化に根付く、ローカルフードの影響もあるようです。
おにぎりに似ている料理がある
もともとマレーシアには、「ご飯と具(おかず)を一緒に包んだ定番食」があります。
お皿に盛って提供される場合と、バナナの皮と紙でおにぎりのように包んだ形があります。ごはんは、ココナッツで炊かれた甘い風味と味です。
お皿に盛る場合は、茶碗に固めたごはんをひっくり返したように丸く固めたごはんに、さまざまな具材を一緒に添えます。
代表的な具は次のとおりです。
・卵
・煮干し魚を揚げたもの
・生のキュウリ
・皮付きピーナツ
・ココナッツのピリ辛薬味
バナナの皮に包んで持ち歩ける形のものは、手の平サイズでテイクアウトに最適です。この場合、生のキュウリは添えられません。
日本のおにぎりと異なる点は、ごはんはきれいな三角形の形でなく、ごろっとしたかたまりの形状である点、具はごはんの中ではなく、ごはんの外側に添えて包まれている点です。
それでも、コロッとかわいらしく包まれている姿は「マレーシア風おにぎり」と呼ぶのにぴったりです。
マレーシアではこの「マレーシア風おにぎり」がコンビニのセブンイレブンや、屋台などで売られており、またマレーシア航空の機内食(朝食)として提供されることもあるほどポピュラーなものです。
屋台の影響
他のアジアの国と同じように、マレーシアでも屋台はポピュラーです。そのため、おにぎりも気軽にテイクアウトでき、屋台料理のように食べられるメニューとして受け入れられやすかったのでしょう。
おにぎりの商品開発に力を入れているファミリーマートでは、お店の前にテーブル・イスを備えた広いスペースがあるお店も多くあります。食品の買い物というよりもファーストフード店で注文する感覚で、おにぎりが買われている点もあります。
マレーシアで人気のおにぎりの具は?
マレーシアで日本のおにぎりが受け入れられたのには、おにぎりそのもののおいしさに加え、こうした新しい具の開発が大きかったようです。
「えびマヨ」「ツナマヨ」「照焼サーモン」など、日本にもある具を提供する一方で、日本のおにぎりには見られない、マレーシア独特の具もたくさんあります。
例えば、次のようなものが挙げられます。
・スパイシーツナ
・スパイシーカニ
・スパイシーチキン
・トムヤム風旨辛シーフード
・中華イイダコ
・ザリガニ
トムヤムなど、マレーシアの伝統料理もそのままおにぎりの具に応用されています。
特に驚くのは、ザリガニでしょう。マレーシアなど東南アジアの国では、ザリガニを食べる習慣があるようです。海に面したマレーシアなので、魚介類の具が豊富なのが印象的です。
日本のおにぎりとの違いはある?
豊富な具がたくさんそろったマレーシアのおにぎりですが、日本のおにぎりとは何が違うのでしょうか?
日系のスーパーやコンビニでは、日本と見た目も味もほぼ変わらないおにぎりも提供されています。同時に、日本にはないシリーズも常時開発されていて、豊富な具の種類が人気のようです。
日本でおにぎりといえば、「ごはん」がメインの印象で、塩おにぎりはまさにごはんだけ。海苔や梅干しがあれば、りっぱなおにぎりです。
一方、マレーシアで大人気のおにぎりの傾向を見ると、ごはんというよりも具のほうがメインで人気になっているようです。あるいは「ごはんとおかずのセット」という認識なのかもしれません。
このようにマレーシアで売られているおにぎりの具は非常に豊富で、マレーシア料理にもつながるローカライズされた味付けが特徴。具材がどんどん開発され、まさにごはんの「おかず」として、何でも具にしてしまう自由度を感じます。
おにぎりは日本から輸入のメニュー。マレーシアの人々には目新しいものだからこそ、新しい具のおにぎりにも抵抗なく人気を博しているようです。
ファミリーマートでは、月に一度は新商品を開発しているなど、具材に力を入れています。そこからも、おにぎり人気がうかがえますね。
まとめ
マレーシアで日本のおにぎりが人気になったのは、マレーシアの食文化に「ごはんとおかずを包む」習慣があったことが影響しています。
その上で、マレーシアの人々の口にあう味付けや、新しい具材を開拓していったのも、成功の理由です。
日本で定番のおにぎりが、日本のおにぎりの枠を超えて、新しい味と具材でマレーシアで大人気なのは、興味深い現象です。
マレーシアに行く予定があれば「マレーシアのおにぎり」を現地で体験してみてください。