韓国に日本蕎麦ブーム到来か、本格派の蕎麦店から家庭まで、親しまれる日本蕎麦
地理的に近く、多くの文化を日本と共有する国が韓国です。一方で、韓国の食文化は唐辛子やニンニク、キムチなどを使ったスパイシーな味付けのものが目立つなど、日本の食文化との違いも多くあります。
そんな韓国で近年、日本食ブームの高まりもあり、本物志向の日本食が注目されています。注目株は日本の蕎麦で、日本での修行経験を持つ韓国人の蕎麦職人だけでなく、日本の蕎麦職人が腕をふるうような本格派の専門店も増えているなど、人気の高まりを感じさせます。
そこで今回は、韓国でどのように日本の蕎麦が楽しまれているのか、その詳細を解説していきます。
そもそも蕎麦とは
韓国では、日本の蕎麦が注目を集めています。
そもそも日本でいう「蕎麦」とは、ソバの実から作ったそば粉を加工した麺類のことです。そば粉を使っているといっても、そば粉30%以上、小麦粉70%以下の割合で混合したものであれば「蕎麦」になります。
食べ方のバリエーションも様々で、自分で一口ずつつゆに浸して食べる「もりそば」「ざるそば」や、温かいつゆをたっぷり丼にいれて食べる「かけそば」があります。
韓国で日本の蕎麦が人気って本当?
日本とは違った味付けが好まれるというイメージが強い韓国で、日本の蕎麦が人気を得ていることは、にわかには信じ難いかも知れません。
しかし韓国には古くから蕎麦粉を使った麺料理が存在しており、日本の蕎麦が受け入れられる余地は十分にあると考えることが可能です。
韓国北東部の地域には冷たい蕎麦料理があり、夏の定番料理でもあります。このように、蕎麦粉を使った冷たい麺を食べる料理に親しんできた韓国の人々には、日本の蕎麦が持つ魅力に気づくことは容易であったと言えます。
事実、日本の蕎麦を求める韓国の人々は決して少なくありません。
日本の蕎麦を提供する専門店は、韓国内でも人口が集中し、政治経済だけでなく文化の中心地ともなっているソウルとその周辺を中心に展開されています。
高層ビルが立ち並ぶモダンな富裕層エリアとしても知られるソウルの江南区には、東京・西麻布で蕎麦店を営んでいたオーナーが自ら腕をふるうお店があり、こちらは開業から20年ほどが経過している韓国でも老舗の日本蕎麦店となっています。
韓国にも蕎麦料理があるの?
韓国において、麺類はむしろ蕎麦粉を使ったものが基本でした。日本でもおなじみの冷麺は、北朝鮮発祥の料理です。もともとは冬場、暖房のよく効いた室内で食べるものでしたが、現在の韓国では夏のメニューとして親しまれています。
冷麺の特徴として、つなぎに小麦粉が使われていることが挙げられます。コシは強いものの、容易に噛み切ることができます。日本でもよく食べられている水冷麺のルーツとも言えるのが、この冷麺です。
一方で、つなぎにジャガイモのでんぷんが使われた極めてコシの強い麺もあります。これは混ぜ冷麺のルーツとも言える存在です。
韓国の蕎麦料理の味付けは、大根キムチの汁のみで食べるものと、唐辛子味噌ベースのタレで味付けしたものなどがあります。いずれにせよ、辛い味付けがベースになっているようです。
韓国人の味覚に日本の蕎麦は合うのか?
気になるのは、韓国人の味覚に日本の蕎麦がマッチするのか?ということです。
日本でも唐辛子がふんだんに使用された韓国の料理にはなじめない、という人は決して少なくありません。そういった疑問が浮かぶのは、当然と言えるでしょう。
そもそも韓国は、辛い味付けを好む食文化があります。日本の蕎麦は、好みでつゆにワサビを入れて「ツーン」とくる辛さを楽しむことができます。そのため、このワサビとつゆが合わさった味付けが好きだという韓国人も少なくありません。
しかし、日本の料理を「塩辛い」と感じる方も多くいます。これは、日本の料理はしっかりとした味付けがされて出てくるのに対し、韓国では素材そのものの味で出てくる料理が多く、テーブルで各人が好みの味付けにする習慣が関係します。
日本の飲食店では、多くの人がおいしいと感じるやや濃い目の味付けがされることが多くなります。これに対し塩辛い、という感想を韓国人が持つのは当然のことなのかも知れません。
このような背景があり、一般に韓国の人々は日本の蕎麦をかなり塩辛い味と認識します。これに対応するため、テーブルにラー油や天かす、七味唐辛子を常備し、各人が好みで味を調整することができる韓国料理スタイルで提供する日本蕎麦店が登場するなど、多くの工夫がなされてきました。
韓国風の、辛味のある具と混ぜて日本の蕎麦を食べるメニューも好調ですし、東京で流行したラー油入り蕎麦は、韓国でも人気があります。
日本の蕎麦は、さまざまな工夫を重ねて韓国人の味覚にもマッチすることになったと言えそうです。
現地ではどのように蕎麦が食べられている?
韓国では、日本の蕎麦はどのように食べられているのでしょうか。
冷たい蕎麦の主流は「冷やしかけ」
日本での蕎麦の食べ方を質問された時、ざる蕎麦のような冷たい蕎麦を想起する人は少なくありません。冷たい麺類は世界的に見ると珍しい食べ方なのですが、韓国には、日本と同様に冷たい麺類を食べる文化があります。
そのため、韓国でもざる蕎麦は一定の人気があります。ただし、冷たい蕎麦となると、丼に冷たい麺とたっぷりのスープが一緒になっている、日本で言う「ぶっかけ」のスタイルで提供されることもあります。
スープには砕いた氷が入ります。これは大陸性気候の影響を受け厳しい暑さになることも多い韓国の夏に、うまく適応した進化であると言えます。
一般家庭でも食べられている
日本と同様、多様な麺料理が食べられている韓国ですから、家庭の食卓でも麺類はおなじみの存在です。昔ながらの冷麺やうどんに似た小麦麺だけでなく、ラーメンやパスタも人気があります。そして日本の蕎麦も、スーパーマーケットではおなじみの存在です。
また乾麺だけでなく、半生麺も現地のスーパーマーケットで多く売られるようになっています。韓国の経済力が強くなったこと、食に関心を持つ人が増えたことなどの影響もあり、よりおいしいものを求めるようになったことも関係していそうですね。
まとめ
日本と同じく、韓国は蕎麦粉を使った麺類を食べる文化を持っています。そのため日本の蕎麦は、人々に受け入れられる余地を十分に持ち合わせていました。
しかし日本料理に対して、韓国の人たちは一般に「塩辛い」と見ている人が多いようです。日本の蕎麦にもそういった見方は適用されるものの、唐辛子などを用いた韓国風トッピング等の工夫で、より広い層に受け入れられるようになりました。
本格的な日本の蕎麦を提供する飲食店の中には、開店から20年を迎えたところもあります。家庭向けに販売される蕎麦麺でも、半生タイプが人気を得ています。
韓国風のアレンジで日本蕎麦ファンの裾野が広がったこともあり、より本格的な「日本の味」を求める人も増えていく可能性がありそうですね。