【2023年施行】遺伝子組換え表示制度の改正ポイント

2023年4月、改正された遺伝子組換え表示制度が施行されます。改正を行った消費者庁によれば、変更されている内容と現行のまま維持されている内容があるようです。

今回は遺伝子組換え表示制度について説明したあと、2023年からはじまる新制度の改正ポイントについてまとめていきます。

遺伝子組換え表示制度とは

マーケティング事業を行っているイデア・プロジェクトの調査によれば、消費者の約4割が遺伝子組換え食品に対して不安を感じていることが報告されています。その不安を取り除くために作られた制度が「遺伝子組換え表示制度」だと言えます。

1997年頃、遺伝子組換えされた農作物が日本の食品に使われはじめました。当時は安全性が確認された作物のみを輸入していたため、遺伝子組換えに関する表示は義務付けされていませんでした。

1998年に近畿大学が行った「遺伝子組換え作物に関する認識調査」によれば、約7割の人たちが「安全であれば問題はない」と回答しました。その反面、約8割の人たちが遺伝子組換えに関する情報不足から「安全かどうかの判断ができない」という事実が明らかになりました。

その後、消費者団体などから「どの製品に遺伝子組換え作物が使われているのかを知りたい」という要望を受け、農林水産省・消費者・専門家の間で2年半におよぶ議論が重ねられました。

その結果、既存のJAS法を改正した「遺伝子組換えに関する品質表示基準」が2001年4月に施行されました。2009年以降、この食品表示規制に関しては消費者庁が担当しています。

遺伝子組換え表示制度では、遺伝子組換え作物の使用が確認できた食品を検査することで、「遺伝子組換えである」または「遺伝子組換え不分別である」という表示を義務付けています。

現在この表示が義務づけられているのは、9つの農産物(大豆・とうもろこし・ばれいしょ・なたね・綿実・アルファルファ・てん菜・パパイヤ・からしな)及び、これらの農産物を原材料とした加工後も組換えられたDNAが検出される33の加工食品に限定されています。

改定後の食品表示基準

遺伝子組換え表示制度が目指しているのは、消費者が正しく理解できるような情報発信をしていくことです。この表示制度は、「義務表示」と「任意表示」の2つに分けられます。ここでは新制度において、この2つの表示方法がどう変わるのかについて説明していきます。

義務表示

新制度の義務表示については、現行制度のままです。安全審査を通過した9つの農産物と33の加工食品に対して「義務表示」が求められることに変更はありません。

義務表示の方法には、遺伝子組換え農産物であることを示す場合と、遺伝子組換え農産物と非遺伝子組換え農産物が分別されていないことを示す場合の2パターンがあります。

■遺伝子組換え農産物であることを示す場合
表示例としては、「大豆(遺伝子組換え)」が挙げられます。この表示がきな粉のパッケージにあった場合、このきな粉の原材料である大豆は、分別生産流通管理のもとで「遺伝子組換え農産物である」と証明されていることになります。

分別生産流通管理とは、生産・流通・加工の各段階において、遺伝子組換え農産物と非遺伝子組換え農産物が任された管理者によって分別管理されているシステムのことです。

■分別されていないことを示す場合
表示例としては、ポテトチップスのパッケージにある「じゃがいも(遺伝子組換え不分別)」が挙げられます。このじゃがいもの場合、分別生産流通管理はされておらず、遺伝子組換え農産物と非遺伝子組換え農産物の区別はできていないことになります。

また、分別生産流通管理をしていたにもかかわらず、意図しない遺伝子組換え農産物の混入が5%以上認められた場合にも「遺伝子組換え不分別」の表示が適用されます。

ただ、不分別という表現は消費者にとって理解しづらいため、余白があれば「遺伝子組換え不分別」の意味を説明する文を付加することが勧められています。

任意表示

2023年4月に新制度が適用されるのは、任意表示に対してのみです。消費者に情報が正確に伝わるように、表現方法が2つに分けられました。これから説明することが、新制度における主な改正ポイントです。

出典:消費者庁「新たな遺伝子組換え表示制度について

現在の任意制度では、分別生産流通管理のもと、意図しない混入を5%以下に抑えている大豆及びとうもろこし、並びにそれらを原材料とした加工品に対して、「遺伝子組換えでない」という表示が可能でした。しかし、新制度では「遺伝子組換えでない」の代わりに、適切に分別生産流通管理されたことを表示できるようになります。

そして、分別生産流通管理下で遺伝子組換えの混入がない(不検出)と認められた大豆及びとうもろこし、並びにそれらを原材料とした加工品に対して、「遺伝子組換えでない」の表示が可能になります。

食品メーカーに求められる対応

任意表示の改正にともなって、食品メーカーは商品パッケージのラベルを変える必要が出てきます。表示の仕方には2パターンありますが、どちらも原料が大豆又はとうもろこしの場合です。

「分別生産流通管理済み」表示

改正後の表示制度では、意図しない遺伝子組換え大豆(又はとうもろこし)の混入が5%以下の場合、「分別生産流通管理済み」という表示ができます。

他の表現としては、「遺伝子組換え作物の混入を防ぐため分別」「IP管理品」などの記載も可能です。IP管理とは分別生産流通管理の別の言い方で、正式にはIPハンドリング(Identity Preserved Handling)と呼ばれています。

もし余白があれば、一括法表示の欄外に「原料に使用している大豆(又はとうもろこし)は、遺伝子組換えの混入を防ぐため分別生産流通管理を実施しています」などと表示することも可能です。

大手食品メーカーの中には、新制度への対応をすでに開始しているところもあります。例えば、豆腐や納豆製品を販売しているタカノフーズは「分別生産流通管理済み」の表示に切り替え、徐々にパッケージを変えているようです。

「遺伝子組換えでない」表示

新制度では、遺伝子組換え大豆(又はとうもろこし)の混入がない場合、「遺伝子組換えでない」と表示ができます。

この表示の条件は、分別生産流通管理されていることが必須です。生産・流通の過程において、遺伝子組換え作物の混入がないことを証明することが求められ、証明書をもって取引することが条件となります。

留意すべき点は、生産地から輸入するときに専用コンテナを使用して輸送すること、流通の過程で他の栽培国からの輸入品と混ぜないことなどが挙げられます。

任意表示制度についてのQ&A

最後に、改正後の任意表示制度に関するよくある質問について回答します。

Q.改正後の在庫は処分すべき?

改正前に現在の表示制度に基づいている商品であれば、在庫を処分する必要はありません。ただ、消費者に正しい情報が伝えられない恐れがあるため、食品メーカーには早めの表示の切り替えが求められています。

Q.改正までの期間が空いている理由は?

新制度は、2023年4月1日から施行されます。期間が空けてある理由は、食品メーカーが表示切り替えを行う準備期間を設けるためです。新制度施行前でも「分別生産流通管理済み」など、分別生産流通管理された旨を表示することは可能です。

まとめ

2023年4月に施行される「遺伝子組換え表示制度」では、任意表示のみが改正されています。その理由は、消費者から遺伝子組換えに関する情報が少ないことが指摘され、これを受けて消費者が正しく理解できるように情報発信をしていくためです。

改正後の任意表示には、「分別生産流通管理済み」「遺伝子組換えでない」という2種類の表示が可能になり、どちらも分別生産流通管理がされていることが条件となります。

食品メーカーには、改正までの空いた期間中に表示切り替えを行うことが求められています。

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