輸出の9割が集中する最大のパートナー!香港の日常に溶け込んだ日本産鶏卵の「安心」

卵といえば卵かけご飯、目玉焼き、卵焼きといった定番の家庭料理から、茶わん蒸しや温泉卵、スイーツの材料に至るまでその用途は多岐にわたります。
日本の食卓には欠かせないといえる鶏卵ですが、海を越えた香港でも日本産の鶏卵が熱狂的な支持を集めているのをご存じでしょうか。
かつての香港では高級品というイメージが強かった日本産鶏卵ですが、現在ではスーパーマーケットに当たり前のように並び、現地の人々の食生活に浸透しています。
この記事では、香港で日本産鶏卵が普及している背景をひもときながら、「生食」を可能にする徹底した品質管理や衛生管理体制、現地で広がる多様な食シーンなど最新の消費動向について詳しく解説します。
日本産鶏卵の輸出先は「香港市場」が9割以上

日本産鶏卵の海外輸出は、近年驚異的な成長を遂げています。2022年の全国の鶏卵輸出実績は数量で約30,535トン、金額で約83億9,000万円に達し、過去最高を記録しました。
この輸出額のうち実に93.5%が香港向けとなっており、2023年1~6月のデータではその割合は97.7%に達しています。これに続くシンガポール(2.0%)や台湾(0.3%)と比較しても、香港市場の集中度は圧倒的で、日本産鶏卵にとって香港はほかにはない最大のパートナーといえるでしょう。
※出典:神戸税関「鶏卵の輸出について」
香港は食料の約9割を輸入に頼る都市であり、鶏卵消費量が多い地域でもあります。2024年の香港の鶏卵市場において、輸入量だけで見れば陸路で輸送可能な中国本土産が全体の約75%(金額ベース)を占めていますが、日本産はそれに次ぐ第2位(約19%)につけており、独自の地位を築いています。
10年前の2014年時点では、日本産のシェアはわずか3%に過ぎなかったことを考えると、この短期間での躍進がいかに凄まじいかがわかります。
※出典:ちくさんクラブ21「香港における日本産鶏卵の広がりについて」
この急速なシェア拡大の背景には、新型コロナウイルス感染症の流行による市場の変化もありました。コロナ禍での物流混乱によって他国産の鶏卵価格が高騰し、相対的に日本産との価格差が縮まったことで、「少し高くても安心・安全な日本産を試してみよう」という層が拡大したのです。
それ以前は富裕層向けの「高級品」だった日本産鶏卵は、今や現地のスーパーマーケットの棚を大きく占める「日常の選択肢」へと変わりました。
「生食」を可能にする日本産鶏卵の品質管理
日本産鶏卵が香港で選ばれる最大の理由は、価格競争の結果ではなく、「安心・安全」という付加価値にあります。
世界的に見れば、卵を生で食べる習慣がある国はごくわずかです。多くの国では食中毒のリスクから十分な加熱調理が前提となっているのに対し、日本産鶏卵は「生食」を前提とした厳格な品質管理が行われています。
その中核を担うのが、GPセンター(グレーディング・アンド・パッキングセンター)と呼ばれる施設です。農場から運ばれた卵は、ここで最新の検品システムにかけられます。
この施設では、ひび割れや殻に異常がある卵が自動的にはじかれ、衛生基準を満たした卵のみが出荷されます。また、日本の養鶏場では鶏の飼育段階からサルモネラ菌対策や防疫管理が徹底されており、ワクチン接種、飼料管理、鶏舎内の殺菌・消毒など、多層的な安全対策が講じられています。
さらに、デリケートな卵を新鮮なまま届けるための物流網(コールドチェーン)の確立も重要です。輸出専用の強化段ボールを使用し、リーファーコンテナ(冷蔵コンテナ)で低温を維持したまま輸送することで、日本国内と遜色ない鮮度での提供を可能にしています。
こうした一連の取り組みが、「日本産卵は生で食べられる」という評価を支えています。
香港の多様な食シーンに浸透する日本産卵
香港に届いた日本産鶏卵は、今や単なる「家庭用食材」にとどまらず、現地の外食文化に変化をもたらしつつあります。
「TKG(卵かけご飯)」の熱狂的ブーム
香港では今、日本の「TKG(卵かけご飯)」が若い世代を中心に大人気です。日本食レストランでは、生卵または半熟卵をご飯にのせて醤油をかけるスタイルも見られ、とろりとした黄身の濃厚な味わいが現地の人々を魅了しています。
また、日本のすき焼きや牛丼のように、鍋物のタレ、料理のトッピングとして生卵や半熟卵を絡めて食べるスタイルも浸透しています。かつては生食を不安視していた人々も、日本産の徹底した管理体制を知ることで、安心して新しい食体験を楽しむようになりました。
ローカル料理との融合
日本産鶏卵は、現地の料理にも違和感なく馴染んでいます。たとえば、お茶とスパイスを使った台湾風の煮卵「茶蛋」、香港式チャーシュー玉子ご飯「叉燒蛋飯」などに日本産鶏卵が使われることもよくあります。
現地の飲食店では、日本産の卵を使用していることを店頭で大々的にアピールするケースも増えており、「日本産の卵=高品質の証」というブランドが確立されています。
製パン・製菓分野での活躍

日本産鶏卵、特に「蘭王たまご」などの大分県産ブランド卵は、その黄身の鮮やかなオレンジ色とコクの深さから、現地のベーカリーや製菓店でも高く評価されています。
香港のとあるベーカリーでは、日本産卵を使用した総菜パンが開発され、「見た目の美しさと香りが格段に違う」と好評を博しています。エッグタルトなどの伝統的なスイーツにおいても、日本産鶏卵による付加価値化が進んでいます。
現地加工による新たな展開
需要の拡大を受け、JA全農インターナショナルなどは香港現地に鶏卵加工工場を設立しました。これまで冷凍輸入が主だった厚焼き玉子や温泉卵を作る技術を開発し、日本から輸入した殻付き卵を使って現地で製造、レストランへ供給しています。
厨房が狭い香港の飲食店にとって、工場で調理した安定品質の卵料理を導入できるメリットは大きく、茶わん蒸しや煮卵など、さらに高度な卵料理の普及が期待されています。
※出典:JA全農インターナショナル株式会社「現地の消費者目線を意識したマーケットイン」
業界団体がリードする「ブランド価値」の醸成
日本産鶏卵のシェア拡大は、業界団体による地道なプロモーション活動の成果でもあります。これまでに、香港において日本産鶏卵の安全性や衛生管理体制を訴求するPRを積極的に展開してきました。
たとえば日本養鶏協会は、SNS(Facebook「日本雞蛋教室」)を活用し、現地消費者に向けて卵の正しい知識やレシピを多言語で発信しています。
また、香港の歴史あるカフェ「大安茶冰廳」とのコラボレーションでは、日本産卵を使用した「紫芋エッグタルト」や「生卵コーヒー」といった斬新なメニューを提案し、インフルエンサーを起用した動画配信を通じて若い層への認知度を一気に高めました。
展示会や試食イベント、現地メディアを活用した情報発信を通じて、「なぜ日本の卵は安心なのか」「なぜ生食できるのか」といった点を丁寧に説明し消費者理解を深めています。
単なる商品PRにとどまらず、現地の食文化に合わせる「マーケットイン(顧客の声を聴く)」の考え方に基づいた活動が、日本産鶏卵を単なる「モノ」から、信頼を伴う「ブランド」へと押し上げてきたのです。
※出典:令和5年度品目団体輸出力強化支援事業「香港における日本産鶏卵プロモーション」
まとめ
日本産鶏卵の輸出の9割が香港に集中しているという事実は、単なる統計上の数字以上の意味を持っています。日本の生産者が守り続けてきた妥協のない「安心・安全」な品質が、食に対する感度の高い香港の人々に正当に評価された結果だといえるでしょう。
かつては一部の人のための高級品だった日本の卵は、今やTKGからベーカリーまで、香港の豊かな食文化を支える欠かせないピースとなりました。
今後も、現地加工工場の稼働と業界団体による強力なリードにより、香港との強固なパートナーシップを続けながら、日本産「TAMAGO」のブランド価値は世界に向けてさらに輝きを増していくことでしょう。
