日本のスーパードリンク「甘酒」が世界へ!発酵の力で海外市場を切り開く

古くから「飲む点滴」として親しまれてきた日本の発酵飲料である甘酒は、その健康・美容効果はもちろんのこと、多様な食のライフスタイルに対応できる柔軟性も相まって、世界中で注目を集めています。
この記事では、甘酒がどのように世界で受け入れられ、なぜ高く評価されているのか、また認知・市場拡大のため日本の企業や政府がどのような取り組みを行っているのか詳しくご紹介します。
甘酒は日本伝統のスーパードリンク
甘酒は日本の長い歴史の中で育まれてきた伝統的な飲み物で、その起源は古く、奈良時代には既に存在していたとされています。江戸時代には庶民の間でも定着し、特に夏場の栄養補給として親しまれてきました。
甘酒は主に2種類あります。一つは米と米麹を発酵させて作る米麹甘酒です。アルコール分をまったく含まないため、子どもからお年寄りまで誰もが安心して楽しめるのが特徴です。米麹の酵素が米のデンプンを分解することで自然な甘みが生まれるため、白砂糖を使わずにおいしくいただけます。
もう一つは、酒粕を水で溶き、砂糖などで甘みを加える酒粕甘酒です。こちらは微量のアルコールを含む場合がありますが、独特の風味があり食物繊維や酵母などの栄養も含まれています。
現在世界的に注目されているのは、主にノンアルコールで自然な甘みが特徴の米麹甘酒です。その製法と特性が健康志向の強い海外消費者のニーズに見事にフィットしているようです。
甘酒は世界でどのように受け入れられている?
甘酒は、健康志向の強い欧米を中心に世界各地で受け入れられ始めています。どのように活用・普及されているのか、いくつか例を挙げていきましょう。
アメリカ
ロサンゼルスやニューヨークのような都市部では、健康志向の強い層やオーガニック食品を好む人々の間で甘酒の認知度が高まっています。スーパーマーケットの健康食品コーナーや、オーガニック系スーパーで甘酒が販売されているのを見ることができます。
アメリカで特に人気なのは、オーガニック玄米を発酵させた甘酒です。ヴィーガンカフェの中には、そのままドリンクとして楽しむだけでなく、スムージーやマフィンなどの甘み付けとして甘酒を使用しているところもあります。
また現地でジュースバーを出店し、甘酒を販売しているという新しい事例もあります。アーモンドミルクや豆乳と混ぜた甘酒ラテなど、現地の好みに合わせてフレーバーをアレンジした商品が提供されています。
フランス
食文化に敏感なフランスでも、発酵食品である甘酒が注目されています。日本食レストランでの提供をはじめ、パリのオーガニックスーパーや自然食品店では、日本の食材コーナーに甘酒が並べられ、健康志向の強い消費者やアジアの食文化に興味を持つ人々に人気です。
現地では黒ごま味やそば茶味など、日本にはない独特のフレーバーの甘酒も製造されており、食事のお供やおやつとしてはもちろん、仕事や運動後の疲労回復ドリンクとしても徐々に認知度を上げています。
タイ
タイでは、日本食ブームを背景に日本食レストランや日系スーパーで甘酒が販売されています。タイ人女性は美容・健康への関心が高く、甘酒によく似た「カオマーク」と呼ばれる飲み物も存在していることから、健康に良い甘酒も自然に受け入れられています。
甘酒を提供しているカフェもあります。プレーンな甘酒だけでなく、現地の味覚に合わせ、タイならではのフルーツを組み合わせたアレンジドリンク、さらにデザートの材料としてなど、活用に広がりを見せています。

世界で甘酒が評価されているのはなぜ?
甘酒が世界で高く評価されている理由はいくつか挙げられます。一つずつ見ていきましょう。
健康と美容効果
甘酒は「飲む点滴」と呼ばれるほど栄養価が高く、ブドウ糖やビタミンB群、必須アミノ酸、食物繊維、オリゴ糖などが豊富に含まれています。疲労回復や腸内環境の改善、美肌・美髪効果、免疫力向上など、その効果は多岐にわたります。
特に米麹甘酒は、発酵過程で生成される酵素がこれらの栄養素の吸収効率を高めてくれる点も魅力です。近年、世界的に健康志向が強まるなかで、自然由来で体に良い飲み物として甘酒が注目されているのです。
多様なライフスタイルに対応
甘酒は、現代の多様な食のライフスタイルに柔軟に対応できる点も強みです。米麹甘酒は米と麹のみで作られており、動物性食品を一切使用していないため、ヴィーガンやプラントベースの食生活を送る人々にとって理想的な飲み物です。
また小麦粉などのグルテンを含む原材料も使用しないため、アレルギーのある人でも安心して摂取できます。
汎用性の高さ
甘酒は、現地の好みに合わせて、フルーツやスパイス、ハーブなどを加えてさまざまなフレーバーのドリンクを作ることができるのも、受け入れやすさの一つでしょう。
またスムージーのベースやヨーグルトのトッピング、デザートの材料、料理に甘みを加える調味料としても活用できます。この汎用性の高さが、各国の食文化や好みに合わせたアレンジを可能にしています。
世界的な発酵食品ブームの後押し
近年、コンブチャやキムチ、ケフィアなどの発酵食品が持つ健康効果に、世界中から注目が集まっています。腸内環境の改善や免疫力の向上といった効能が広く認識されるなかで、日本の伝統的な発酵飲料である甘酒に対する関心も高まってきました。
発酵食品は多種多様ですが、甘酒は現地の飲み物や食べ物に合わせて活用しやすいことから、独自のポジションを築きつつあるといえるでしょう。
甘酒の認知・市場拡大のための取り組みとは?
日本の企業や政府は、海外における甘酒の認知度向上と市場拡大に向けてさまざまな取り組みを行っています。ここではいくつかの成功事例を紹介します。
発酵食品メーカーによる海外展開
長崎県の発酵食品メーカー・株式会社咲吉では、発酵食品に関するノウハウを活かして甘酒の海外展開に積極的に取り組んでいます。
2018年にニューヨークで開催された日本食レストランショーに出店し、シャーベット状の甘酒をデザートとして提供したことで、契約を取り付けることに成功しました。さらに、甘酒を冷凍しても一般生菌が発生しないことをテストで確認し、現在はアメリカやドイツなどへ輸出も行っています。
出典:https://www.jfc.go.jp/n/finance/keiei/casestudy/detail/003.html
大手メーカーによる戦略的な商品展開
大手メーカーも、甘酒の海外市場への展開を本格化させています。マルコメ株式会社は、10年前から海外拠点を活用して現地のスーパーマーケットやオンラインストア、ショッピングモールへの出店を進め、販売体制を強化してきました。
タイの店舗ではカフェを併設し、伝統的な甘酒に加えて豆乳ブレンドやフルーツフレーバーなど、現地の消費者ニーズに応じた多彩なラインアップを展開。手軽でおしゃれなカフェスタイルにすることで、幅広い層へのアプローチを可能にしています。
さらにレシピサイトやSNSを通じて甘酒を使ったスムージーやデザートのアレンジレシピを紹介し、日常のさまざまなシーンに取り入れやすい提案を行っています。
出典:https://www.marukome.co.jp/news/release/detail/20230105_03/
「甘酒ドリンク」の開発
秋田県の株式会社エスは、甘酒の伝統的な製法を大胆に進化させ、米・麹・水のみと、従来の甘酒と同じ材料を使いながら、まったく新しいタイプの「透明甘酒ドリンク」を開発しました。
ノンアルコールで甘さは控えめ、すっきりとした酸味と自然なフルーティーさが特徴で、甘酒が苦手な方でも楽しめる軽やかな味わいです。そのままはもちろん、スムージーやジュースに加えたり、温めてホットドリンクとして飲んだりすることができます。
この甘酒ドリンクは、2023年にアメリカ・ラスベガスで開催された国際的な食の見本市でも高い評価を受け、アメリカのみならずオランダや台湾、韓国、中国、シンガポールの企業からも注目を集め、海外市場への展開を加速させています。
出典:https://weeeat.tokyogas-com.co.jp/column/interview/c-00051.html
政府によるプロモーション活動
政府も日本の食文化の一つである甘酒のプロモーション活動を支援しています。たとえば国税庁は、自らが運営主体となり「日本産酒類等輸出促進プロジェクト」を実施しており、甘酒を含む日本の酒類の海外展示会への出展、プロモーション活動を積極的に推進しています。
出典:https://sake-consortium.nta.go.jp/
また、農林水産省も民間が運営する「全国甘酒輸出促進コンソーシアム」という取り組みに対して支援を行っています。
出典:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/gfp/attach/pdf/yusyutsu_keikaku_kohyo-323.pdf

まとめ
古くから日本で親しまれてきた甘酒は、欧米を中心に広がる健康志向の強まりと発酵食品ブームの後押しを受け、その豊富な栄養価と多様な食のライフスタイルへの対応力によって世界中で注目されるスーパードリンクへと進化を遂げました。
日本の企業や団体による地道な努力と戦略的な展開が甘酒の認知度向上と市場拡大に大きく貢献し、各国のスーパーマーケットやカフェのメニューにその姿を見せるようになっています。
甘酒は、世界中の人々の健康と食生活を豊かにする存在として、さらにその可能性を広げていくと期待できるでしょう。