スロベニアの蕎麦消費量は日本以上、歴史や食文化から蕎麦事情を見る

現在の日本では蕎麦やうどん、ラーメンなど多くの麺料理が存在し、世界中で親しまれています。

中でも蕎麦は、日本人にとってなじみの深い麺料理といえるでしょう。その蕎麦が今、日本よりもスロベニアの方が消費量が多いと話題を集めているのはご存じでしょうか?

しかしスロベニアと聞いても、どのような国なのかピンとこないかもしれません。また、スロベニアと蕎麦が結びつかない方も多いでしょう。

そこで今回は、スロベニアという国を紹介しながら「スロベニアと蕎麦の関係」や「日本で食べられている蕎麦との違い」などを詳しく解説していきます。

そもそもスロベニアとはどんな国?

スロベニアは、ヨーロッパの南欧に属し、北はオーストリア、ハンガリー、西はイタリア、南はクロアチアに囲まれた国です。

スロベニアの国土面積は日本の四国ほどの面積で、人口は約210万人の小さい国となっています。国土面積の半分以上が森林で「ヨーロッパの緑の宝石」とも呼ばれるほど、自然豊かな国です。

スロベニアの料理はあまり日本人になじみがなく、認知されている料理がほとんどありません。

しかし、オーストリアに併合された歴史や美食の国イタリアなどと隣接していることから、地理的にも歴史的にも様々な影響を受け、食文化や郷土料理が発達してきました。

スロベニアの料理はマイルドな味付けが多く、素材そのものを活かしているのが特徴です。

日本のようにご飯を使う料理も存在しますが、主にジャガイモなどを主食として、使用することが多い食文化となっています。

スロベニアのそば消費量

スロベニアは、石灰質の土地が多い土地柄でぶどうの栽培が盛んです、そのため、ワインが特産品として知られています。またそばの栽培も多く、日本よりもそばの消費量が多いと言われています。

スロベニアのそばの年間消費量は、国内で約3000トンです。人口が約210万人なので、1人当たりのそば消費量は年間で約1.5㎏ととても大きな数字となっています。この1人当たりの消費量は日本人の2倍の消費量を誇っています。

あまり、蕎麦の印象が少ないスロベニアですが、さまざまな料理に使用され、アレンジされています。

日本の蕎麦とは違うの?

日本の2倍そばを消費しているスロベニアですが、日本人が想像するような「ざるそば」や「かけそば」を食べているわけではないようです。

蕎麦の歴史

そもそも蕎麦は日本の伝統的な料理ですが、原産地は日本ではありません。

中国の雲南省からヒマラヤあたりで栽培されていたそばが日本に伝わり、栽培が始まったのが縄文時代にまでさかのぼります。

縄文時代から栽培されていた証拠として、高知県内にある9000年以上前の遺跡からそばの花粉が見つかっており、古くから栽培されていたことが証明されました。

蕎麦といえば、長く麺状にしたものを思い浮かべる人も多いですが、16世紀ごろまでは麺状ではなく、そば粉をお湯で練った「そばがき」や「そばもち」が主流でした。16世紀を境に、今の麺状の蕎麦として広まり、現在に至っています。

スロベニアのそば料理の特徴

日本では一般的に麺料理として好まれている蕎麦ですが、スロベニアではさまざまな料理にアレンジされています。

例えば、そば粉を使ったパンやケーキ、溶かしたバターをかけるスロベニア版のそばがきなどが挙げられます。また、そばがあらゆる料理の具材として登場するなど、日本とスロベニアではそばのレシピが異なることがわかりますね。

スロベニアでそばが日常食になった理由

スロベニアでそばが愛されている理由はいくつかあります。

スロベニアのそばの歴史は1400年頃まで遡ります。そばは中国からロシア、ウクライナを経て伝わり、スロベニアでは1426年にそばの栽培が開始されたとしています。

そばがスロベニアに伝わった当時、そばは貧しい農民たちにとても人気がありました。

理由として、そばが荒れた土地でもよく育つこと、小麦、大麦の収穫の間に間作できることが挙げられます。土地が石灰質のスロベニアでは、痩せた土地でも育つそばは貴重なものでした。

また中世の封建時代において、新しい穀物であるそばは税金を払う対象には含まれていませんでした。そのためそばは「免税食品」として扱われており、誰にでも食べられる食べ物だったことが挙げられます。小麦を食べることのできなかった当時の貧しい農民たちにとってそばは、望ましい食べ物だったと言えるでしょう。

その後、そばは16~18世紀にかけてスロベニア全土に広がり、今日の郷土料理として発展しました。

20世紀になり一時的にそばの作付け面積が減少したものの、その後作付け面積が拡大していき、現在に至ります。

現在そばは「古き良き時代を代表する食べ物」として、スロベニアで親しまれています。

日本の蕎麦は人気がある?

日本では蕎麦を麺状にして、そばつゆにつけて食べられていることがほとんどですが、そのような食べ方はスロベニアでも人気があるのでしょうか。

結論から伝えるとスロベニアでは、蕎麦を麺状にして食べる文化はほとんどありません。そのため、日本の蕎麦料理はあまり知られていないのが現状です。

そもそも人口の少ないスロベニアでは、日本食の普及が進んでいるとは言えない状況です。

しかしスロベニアでは日本文化への関心が若者を中心に高まっています。

スポーツでの交流や、アニメや漫画などのポップカルチャーなどが影響し、日本の文化に触れるスロベニア人が増えています。在日スロベニア大使館が主体となって日本文化イベントが複数開催され、日本の蕎麦打ちデモンストレーションや蕎麦の試食が楽しまれたことがありました。

また寿司やラーメンを中心に日本食の知名度が上がり、日本食レストランの数も増えてきています。

このように日本の文化や日本食がスロベニアで広まるにつれて、日本の蕎麦も「日本版の蕎麦」として親しまれていくことが予想されます。

まとめ

スロベニアのそばの消費量が日本よりも多いという事実に驚いた人もいるでしょう。

日本でも昔から親しまれている蕎麦が、遠く離れたヨーロッパの国で国民食となっているのは、蕎麦が好きな日本人にとっては非常に親近感がわくものですね。

しかし、スロベニアでよく食べられている蕎麦料理は、日本ではなじみのない料理ばかりでした。

そば粉を使用したパンやケーキ、お菓子、またそばがきにしたものなどと、日本の蕎麦料理よりもバリエーションが豊かなメニューが多く挙げられます。

日本の麺料理を代表するそばつゆをつけて食べる蕎麦が、スロベニアでも人気が出てくれると、日本人にとってはうれしいものですね。

現在スロベニアでは、若者を中心に日本の文化への関心が高まり、日本食レストランも増えてきています。

今後、スロベニア人の生活に日本文化が浸透していくことで、日本の蕎麦も受け入れられていくことでしょう。

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