アメリカで「TOFU」に注目が集まる|コロナの感染拡大や健康ブームが後押し
豆腐は日本で長く親しまれている食品ですが、現在アメリカでは空前の豆腐ブームが起きています。
以前アメリカでは「おいしくない」と嫌われていた豆腐がなぜ今ブームとなっているのでしょうか。その理由には、これまでの時代背景が深く関わっているようです。
今回は「アメリカで日本の豆腐が売れている理由」や「TOFUと豆腐の特徴」などについて詳しく解説します。
アメリカにおける日本の豆腐市場
現在アメリカでは、植物性食品の需要が急上昇中です。この中でも特に豆腐は売上が伸びている食品であり、今後の成長も期待されています。
市場調査を行うMordor Intelligence社の報告によると、アメリカの豆腐市場全体の売上は、2016〜2021年の5年間で約38%増加しました。
この背景には、アメリカ国内においてスーパーマーケットやホテルなどへの流通ルートの数が明らかに増えたことが挙げられ、近年ではオンラインでの豆腐の注文も増加していると考えられます。
またアメリカ国内で豆腐の売上を伸ばしているメーカーは、主に5社あるとも報告しています。
アメリカに本社があるAlbertsons(アルバートソンズ)、Hain Celestial(ヘイン・セレスティアル)、日本の大手食品会社であるHouse Foods(ハウスフーズ)、Morinaga Milk Industory(森永乳業)、そして韓国に本社を置くPulmuone(プルムオーン)です。
上記5社を合わせてもアメリカの豆腐市場を占める割合は約26%程度と、豆腐市場の競争率の高さが示唆できます。
アメリカで日本の豆腐が売れている理由
ここでは、嫌われ者だった豆腐が今ではアメリカの人気者となれた理由について解説していきます。
豆腐ブームを引き起こした時代背景
1980年代後半、豆腐は「味がない」ことが理由でアメリカ人の嫌いな食べ物にランクインしたことがあります。しかし、コロナパンデミックがこの状況を180度変えました。
消費者が手頃な値段で買える豆腐を肉の代替品として求めはじめたのです。
2020年、COVID-19の拡大によりアメリカでは肉の供給不足が起こりました。理由は陽性となった従業員の増加に伴い、多くの工場が一時的な操業停止をせざるを得なかったためです。
もともとアメリカにおいて、豆腐は大豆由来の健康的な食品として知られていました。コロナパンデミックにより生活に困窮したアメリカ人も増え、2〜3ドルで購入できる豆腐は良いタンパク質源となり得ました。
さらにコロナ重症者には肥満や過体重をもつ患者が多いことも証明され、アメリカ国内で健康志向が広まったことも豆腐ブームを後押したのです。
豆腐ブームに貢献した企業の商品開発
コロナパンデミックだけではなく、アメリカの豆腐ブームには企業の商品開発も貢献しています。
たとえばアメリカに本部を置く多くの企業は、日本とは異なる豆腐の食べ方に着目しました。
アメリカでは豆腐を生で食べる文化はなく、豆腐を料理の材料として使うことが多くあります。そのため、さまざまな料理に使えるように豆腐の硬さの種類を増やしました。
また、企業は健康志向の高まりから豆腐を原料とした加工品にも力を入れています。豆腐由来のアイスクリームやクリームチーズなどはアメリカのスーパーマーケットにおいて、すでに購入可能です。
このような豆腐加工品は、ビーガンやベジタリアンにまでシェアを広げています。
豆腐とTOFUの特徴
ここでは、日本の「豆腐」と海外で売られている「TOFU」のそれぞれの特徴について解説します。
豆腐とは
日本で売られている豆腐の種類は、基本的に木綿豆腐・絹ごし豆腐・充填豆腐・寄せ豆腐の4種類がメインです。
木綿豆腐は、豆乳ににがりを入れて固めて崩し、再び圧搾させた硬めの豆腐です。絹ごし豆腐は、豆乳ににがりを入れてそのまま固めた柔らかめの豆腐です。
充填豆腐は「充填絹ごし豆腐」とも呼ばれ、1丁ずつ容器に充填していく点が絹ごし豆腐の製法と異なっています。寄せ豆腐は、木綿豆腐を作る過程で型に入れず寄せた状態で提供されます。
日本の豆腐の硬さだけに着目すると、木綿もしくは絹ごし豆腐の2種類しか存在しません。この種類の少なさは、日本は冷奴として豆腐を生で食べる文化が根付いているためです。
また、日本では自ら豆腐を製造し販売する「製造小売」が今も健在です。手作り感のある個性的な豆腐の味を日本人は楽しんでいると考えられます。
TOFUとは
日本の豆腐と比較して、アメリカで販売されているTOFUの硬さの種類は最低でも4つあります。
たとえばPulmuone(プルムオーン)を親会社に持つNasoya(ナソヤ)は、硬さをSOFT・MEDIUM・FIRM・EXTRA FIRMの4つに分けて豆腐を販売しています。
硬さがSOFTおよびMEDIUMの豆腐の用途は、茹でる・蒸すなどの調理に向いているため、チリソースをかけて食べたりスープに入れたりするのがおすすめです。
FIRMとEXTRA FIRMの豆腐については、焼く・炒める・揚げるなど肉の代替品としてステーキやチャーハンに向いています。この他にもSILKEN TOFUも販売されており、滑らかな食感を活かしたスムージーやチーズケーキのレシピが紹介されています。
TOFUは、アメリカにおける多様な豆腐の食べ方に対応した食品といえるでしょう。
日本企業が開発したTOFU商品例
最後に、日本企業が開発したTOFU商品を2つ紹介します。
ハウス食品
日本のハウス食品は、アメリカではHouse Foodsと呼ばれています。プロテインバーの代替品として開発されたのが「GO UMAMI BAKED TOFU BAR」です。
低カロリーで手軽にタンパク質を摂取できることがこの商品の特徴です。適度な硬さで味もおいしいため、今アメリカで注目を集めているのがこのTOFU BARです。
材料にも充分配慮し、遺伝子組み換えされていない大豆を使用し、着色料・保存料・香料は一切使っていません。
森永乳業
日本では牛乳や乳製品を製造・販売している森永ですが、アメリカでは「Mori-Nu」として豆腐の製造・販売も行っています。
Mori-Nuでは、日本の絹ごし豆腐の滑らかさとクリーミーさを再現した「Silken TOFU」シリーズを販売しています。硬さはSOFT・FIRM・EXTRA FIRM・LITE FIRMの4種類があり、この他にも枝豆や柚子フレーバーの豆腐も販売しています。
賞味期限が長い豆腐としても知られており、未開封の状態であれば常温で約1年間保存が可能です。
まとめ
今回は、アメリカで日本の豆腐ブームが起きている理由について紹介しました。
アメリカで嫌われ者だった豆腐に対し、急に注目が集まった背景には、コロナパンデミックの影響が大きいでしょう。アメリカではCOVID-19の拡大により肉の供給不足が起こり、手頃な価格の豆腐の需要が増加しました。
また、コロナパンデミックによる健康志向の高まりも今の豆腐ブームを後押ししたといえるでしょう。
日本の「豆腐」とアメリカの「TOFU」の特徴から分かることは、それぞれの国の食文化に合うように硬さの種類を変えてあることです。
大豆由来の豆腐加工品はビーガンやベジタリアンにも対応できるため、今後も豆腐ブームは続くと考えられます。