2024年施行インドネシアのハラール認証義務化と取得方法について

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グローバル化が進むにつれて、日本においても食の多様性が求められるようになりました。その一つの例がハラールへの対応です。ムスリムの人々と共に暮らしたり、共にビジネスを行ったりする場合に、ハラールへの理解は欠かせないものとなります。

実際に、世界最大のムスリム人口を抱えるインドネシアでは、2024年よりハラール認証の義務化が決まりました。

そこで今回は、インドネシアへ進出する際に必要不可欠となった「2024年施行インドネシアのハラール認証義務化」および「その取得方法」について詳しく解説します。

2024年に施行するハラール認証義務化の背景

イスラム法ではアルコールや豚肉、イスラム法に従って処理されていない牛肉・鶏肉などの肉類が禁じられています。ハラール認証とは、原材料や製造工程などがハラールに適合しているかを審査し、承認を行うことです。

ドイツの調査会社Statistaによれば、2018年のインドネシアにおけるイスラム教徒者数は、国民全体の約87%であったことを報告しています。

参考:statista|2018年のインドネシア人口に占める宗教別の割合

しかしながら、残りの国民は他の宗教を信仰していることもあり、ハラール認証を受けてない製品の流通が許されているのが現状です。つまり、インドネシアではハラールとして厳格な管理をされていない製品でも販売することが可能です。

一方、2014年にJPH法と呼ばれるハラール製品保証法が公布されて以来、市場に流通しているすべての製品に対してハラール認証を義務化する動きが見え始めていました。

その証拠として、2017年にハラール製品保証実施機関(BPJPH)が新しく作られ、JPH法を実施しています。

しかし、2019年10月17日に施行予定であったJPH法は、制度化に時間がかかり先送り状態となっていました。2021年2月、ハラール製品を受け持つための政令が交付され、施行に至りました。

この政令によって、原則としてインドネシア国内に行き渡るすべての製品がハラール認証を受ける対象となっているのが現状です。

2024年より段階的にハラール認証を義務化していき、ハラールと認められない商品にはその旨を明記することが求められます。

参考:JETRO|ハラール認証新制度、進展するも運用は不透明(インドネシア)

ハラール認証が義務化となったサービス

ここでは、ハラール製品保証法の制定によって、ハラール認証することが必須となった物品とサービスについて解説します。この義務化は、インドネシアに進出している日本企業にも要求されます。

ハラール認証の対象物品

ハラール認証の対象物品には、食料品・医薬品・化粧品・化学製品・遺伝子組み換え製品・生物学的製品および動物由来の成分を含む製品が含まれます。

それぞれの物品には対応期限が設けられており、もっとも早い対応が必要となるのが、2024年10月17日に開始となる食料品です。医薬品・化粧品・化学製品・遺伝子組み換え製品に関しては、2026年10月17日が開始日となります。

参考:JETRO|ハラール認証新制度、進展するも運用は不透明(インドネシア)

ハラール認証の対象サービス

ハラール認証の対象となるのは、食品の処理や加工だけでなく、保管方法や配送時・販売時の状況も含まれます。ハラール認証はそれぞれの製造ラインごとに監視されているため、すべての製造ラインから非ハラール製品は生じないことが原則です。

加工肉を例に挙げれば、処理・加工するときには非ハラール製品から隔離された場所で行い、動物性油脂を使用していない材料で包装することが求められます。

配送するときには、非ハラール用のコンテナからは隔離して輸送し、販売時には非ハラール製品とは距離をとって陳列します。

過去の認証はどうなるか

ここまではハラール認証が義務化された後について解説してきましたが、ここでは義務化以前にハラール認証を受けた製品について解説します。

過去の認証も使用可能

基本的に過去に認証された製品は、材料に変更がなければ引き続き販売が可能です。留意すべき点は、ハラール認証には有効期限があることです。

2021年6月、ハラール製品保証実施機関(BPJPH)はこれまで2年間であった有効期限を4年間に延長すると発表しました。そのため、2019年10月17日以降にハラール認証を受けた事業者は、早急に有効期限の延長手続きを行う必要があります。

参考:JETRO|ハラール認証新制度、進展するも運用は不透明(インドネシア)

非ハラール製品の販売も可能

2021年に施行された政令の2条には、「ハラール認証義務に当てはまらない製品は、それを明らかに記す必要がある」という記載があります。

ハラル製品開発・監督センター長を務めるシティ・アミナ氏は、「義務化後も非ハラール製品であることをパッケージに明記すれば、これまで通り非ハラール製品の販売も可能」と述べています。

つまり、この政令により非ハラール製品の流通や販売ができなくなるわけではありません。確かに、インドネシアの人口の多くはイスラム教徒ですが、他宗教と共存してきた歴史をもつインドネシアにとっては妥当な判断となるでしょう。

参考:JETRO|ハラール認証新制度、進展するも運用は不透明(インドネシア)

ハラール認証の管轄 過去と現状について

出典:ハラル・ジャパン協会 公式ホームページ

現在インドネシアでハラール認証を任されているのは、2017年に新しくできたハラール製品保証実施機関(BPJPH)です。そして、実際にハラールであるかの検査を行っているのがLPHというハラール検査機関です。

多々あるLPHの中でインドネシア政府の公認を受けたLPPOM-MUIという研究所が、私たちの生活に密着している食料品・くすり・化粧品の審査と監査を行なっています。

もともとハラール認証の権限を持っていたのは、インドネシア・イスラーム聖職者会議(MUI)でした。しかし2019年以降、その権限は宗教省大臣直轄のハラール製品保証実施機関(BPJPH)に移されました。つまり、インドネシア政府がハラール認証を行っていることを意味します。

しかしハラール製品保証実施機関(BPJPH)へ移行後、新規のハラール認証に対する発行が遅延しているため、引き続きMUIによるハラール認証の発行が行われているのが現状です。

ハラール認証の取得方法

ここでは、ハラール認証の取得の仕方を4つに分けて紹介します。例として、日本からインドネシアへハラール製品を輸出する際の流れを紹介します。

※2023年6月時点の情報です。申請する際は必ず最新の情報を確認してください。

参考:一般社団法人ハラル・ジャパン協会|インドネシアのハラル認証「BPJPH」|

1. 申請

まず、インドネシアのハラール製品保証実施機関(BPJPH)にハラール認証申請をします。

現在はオンラインで直接申請ができるようになっていますが、内容が複雑であることや対応言語がインドネシア語であることから専門のコンサル企業に頼った方が賢明です。

2. 審査・監査

次に、ハラール認証機関が提出された申請書類を審査します。

書類に問題が見当たらない場合は、監査員が申請者の製造施設に直接出向き、使われている原料や施設が要件を満たしているか検査を行います。

3. ハラール認証証明書の発行

すべての要件を満たしていれば、ハラール認証証明書がハラール製品保証実施機関(BPJPH)より発行されます。

輸出者は、施設の構造・設備に関する書類や衛生管理に関する書類などを提出し、認証された製品をインドネシア医薬品食品監督庁(BPOM)に登録する必要があります。

4. 現地チェック

製品がインドネシアに到着したあと、税関や関連施設で書類審査が行われ、書類に不備がなければインドネシアへの輸入が許可されます。

申請から認証までにかかる時間は平均的に半年〜1年といわれていますが、製品や工場の規模などによってその期間は異なります。

ハラール認証取得時の注意点

インドネシアのハラール製品保証実施機関(BPJPH)によるハラール認証は、政府が発行していることから世界的に価値の高い認証とされています。そのため求められる基準が高く、審査および監査は非常に厳しいものとなります。

また、対応期限までに認証を取得できなかった製品は税関の通過ができなくなります。今後の駆け込み申請の増加にともない、申請準備を計画的に進めていくことが必要です。

まとめ

2024年より義務化されるハラール認証において、まず取りかかるべき物品は食料品です。原材料だけではなく、加工から販売までの一連のサービスも審査対象となります。

インドネシアではハラール製品保証実施機関(BPJPH)がハラール認証の発行を行なっていますが、これは政府による認証であるため、世界的に意義のあるハラール認証となります。

非常に厳しい審査や監査を切り抜ける必要があるため、事前の計画的な取り組みが必要です。

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