アジアを中心に世界を魅了!和牛の需要が高まっている理由とは?
和牛は非常に人気が高く、焼肉やしゃぶしゃぶの食材として国内でも定着しています。
近年では、アジア圏を中心に世界で和牛の需要が増えており、「Wagyu」の表記で高級ブランドとして認知されているようです。
今回は、国産牛と和牛の違いや和牛を含む牛肉の輸出状況、アジア圏で和牛が人気の理由、和牛がどのように食べられているのかなどについて詳しくご紹介していきます。
国産牛と和牛の違いとは?
まずは、和牛と国産牛の違いについてわかりやすく解説します。両者には明確な違いがあるのです。
国産牛とは
国産牛とは、基本的に日本国内で3か月以上飼育された牛のことを指します。ただし、海外から日本に輸入された牛の場合は、3か月以上かつ日本で飼育された期間のほうが長くなれば国産牛として扱われます。
つまり、条件を満たせば、外国種の牛であっても国産牛と表示することが可能です。例を挙げると、オランダやドイツが原産地であるホルスタイン種も、国内で飼育すれば国産牛に含まれます。
国産牛であるかどうかの判断基準は、日本で規定の期間以上飼育されているかどうかであり、原産地や品種は問われないということです。
和牛とは
品種が問われない国産牛と異なり、和牛かどうかは品種で判断されます。そのため、品種さえ同一であれば海外での飼育も可能であり、アメリカやオーストラリアでも生産されています。
こうした海外産のWagyuは日本産の和牛に比べて価格面で優位に立ち、需要の伸びとともに成長を続けているのです。
日本政府の和牛に係る取り組みとしては、2015年に農林水産省が牛肉部会を立ち上げたことが挙げられます。この牛肉部会では外国産のWagyuとの差別化を図るために「和牛統一マーク」の使用に力を入れ、世界へのアピールを続けています。
和牛の品種
和牛として認められているのは、黒毛和種・日本短角種・無角和種・褐毛和種の4品種と、これらの品種間の交雑種です。
黒毛和種は日本全国で飼育され、和牛の約90%を占めています。きめ細やかな霜降り肉になりやすいのが黒毛和牛の特徴です。また、上質な赤身肉で知られる日本短角種は、北海道と東北地方で育てられています。
無角和種については山口県が主な生産地であり、脂肪の少ない肉質が特徴です。現在、数が減少しているため貴重な品種とされています。
4つ目の褐毛和種は「あか牛」とも呼ばれ、適度な霜降り肉となるため人気がある品種です。高知系と熊本系に分けられ、熊本の阿蘇地方では放牧されている「くまもとあか牛」を見ることができます。
国産牛と比較して、こだわりの飼育によって生まれる上質さが和牛の醍醐味といえるでしょう。
和牛を含む牛肉の輸出状況
独立行政法人農畜産業振興機構の報告では、2023年の牛肉輸出量は前年度と比べて13%増加していることがわかります。この理由は、外食消費が回復した香港と台湾で牛肉の需要が増えたことです。
また、2023年の牛肉の輸出先については、台湾が20%、香港が18%、アメリカが14%と、アジア諸国でも牛肉の需要が増えていることが伺えます。
実は牛肉の輸出量の増加は2014年から続いており、そのなかでも2020年から2021年にかけての牛肉の輸出量には、著しい伸びが見られました。
これは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって人々が外食を控えるようになった巣ごもり需要にうまく対応できた結果のようです。この時期にはレストランではなく自宅で和牛を味わう人が増え、2021年の牛肉輸出量は7,879トンと過去最高となっています。
また、輸出される和牛の部位に着目すると、欧米人とアジア人で好みが大きく分かれることがわかります。
日本貿易振興機構(ジェトロ)によれば、欧米人は和牛のロインをステーキで食べる傾向にあり、アジア人は和牛のもも肉・うで肉・肩肉を、すき焼きやしゃぶしゃぶといった日本式の食べ方で味わっているとのことです。
和牛がアジア圏を中心に人気の理由
ここでは、アジア諸国で和牛人気が高まっている理由について、和牛そのものの質や日本政府・企業の取り組みなどの視点から解説していきます。
和牛の質
アジア圏をはじめ、海外で和牛の需要が高い理由として、ほかの肉にはない質の良さが挙げられます。
和牛には、融点の低いオレイン酸という不飽和脂肪酸が含まれており、口の中で溶けるような独特な感覚を与えてくれます。また、和牛は水分が多く、とても柔らかいのも特徴です。
この和牛のおいしさに特に惹かれた国がタイだといえるでしょう。タイで主に食べられていたのは鶏肉と豚肉であり、牛肉については筋が多く、硬い肉が多かったようです。
ところが、日本に観光に来たタイ人が和牛のおいしさに気づき、タイの中間層と富裕層の間で需要が拡大しているのです。
日本政府の取り組み
2020年、日本政府は牛肉の輸出拡大を図ることを含めた「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」を立ち上げました。
この戦略の中で、政府は和牛の認知度をさらに上げるための海外に向けた積極的なプロモーション活動や、和牛を飼育するのに必要な環境整備の強化に取り組んでいます。
2025年には、輸出金額1,600億円を達成することが目標です。
日本企業の取り組み
日本企業も和牛人気の後押しに一役買っています。
岡山県津山市が誇るブランド牛「つやま和牛」の香港輸出が、2024年1月に初めて行われました。津山市としてはこれをスタートラインとして、今後は東南アジアに向けて更なる展開を計画しているとのことです。
また、食肉加工販売大手である伊藤ハム米久ホ-ルディングス株式会社が輸出専用に育てた、同社オリジナルブランド黒毛和牛「ITO WAGYU(R)」のA5サーロインが2023年1月、ワールド・ステーキ・チャレンジにおいて「世界最優秀和牛ステーキ」および「アジア地区最優秀ステーキ」を受賞しました。
今後はこれまでの販売網を参考にしながら、今回受賞した「ITO WAGYU(R)」をブランド肉として、輸出拡大を図ることを発表しています。
和牛は海外でどのように食べられている?
高品質で知られるWagyuは、海外でも高級食材として扱われているようです。
滋賀県内で飼育されている近江牛は、現在バンコクの高級レストラン「近江牛 岡喜」でも提供されています。このお店は牛肉をメインとした日本式焼肉レストランであり、近江牛の生産を手がける岡喜グループの輸出成功事例です。
また、兵庫県丹波篠山市を拠点とする丹波田中畜産株式会社は、フィリピンにある高級レストラン「Wagyu Studio」と契約を交わしています。このレストランで提供されているのは、ブランド和牛「神戸牛」です。
このWagyu Studioでは日本式焼肉だけではなく、和牛を使った餃子やユッケ、ジャーキーなどさまざまな和牛メニューが用意されています。
このほかにも、和牛は高級路線の鉄板焼きとして注目の的です。香港のメインストリートに位置する商業施設The Landmarkには、和牛を提供する高級レストラン「Kaen Teppanyaki」があります。
同店では、名前のとおり和牛の鉄板焼きを提供しており、和牛のステーキやハンバーグなど目の前で焼いてくれるパフォーマンスがとても魅力的です。
まとめ
日本でも高級食材として扱われる和牛は、海外でもWagyuとして高く評価されていることがわかりました。
特にアジア圏への和牛を含む牛肉の輸出量は近年著しい増加が見られ、今後もこの傾向が続くとの見込みがあります。さらなる和牛の輸出拡大に向けて、日本政府をはじめ、各企業も積極的に活動を進めているところです。
ステーキだけではなく、日本式焼肉や鉄板焼きなど、和牛の用途はさまざまです。高品質な和牛の魅力を世界に広げていくことで、和牛の需要が高まっていくことは間違いないでしょう。