日本の食が目当て!訪日外国人の「食」に関する現状とは
コロナが落ち着きをみせ、日本を訪れる外国人観光客の数も元の状態に戻りつつあるといわれています。
アジアの1つの国でありながら、日本には日本でしか経験できない独特の文化があります。特に食文化においては、訪日外国人から高い評価を得ているようです。おそらく、自国との違いに驚くこともあるでしょう。
そこで今回は、訪日外国人のインバウンド事情の詳細を探るため「訪日外国人の旅行消費額の内訳」や「訪日外国人が日本の食に求めていること」「日本が今後インバウンド対策としてすべきこと」などについて解説していきます。
訪日外国人の旅行消費額
2024年1月、観光庁は2023年の1年間における訪日外国人消費動向調査の結果を発表しました。
出典:国土交通省観光庁「2023年暦年 全国調査結果(速報)の概要」
訪日外国人が何にお金を使ったかに着目してみると、最も多かったのが34.6%で宿泊費、次いで22.6%で飲食費、26.4%で買物代がそれに続きます。
上記の結果を2019年の調査結果と比較してみると、2023年の宿泊費は5.2%の増加、飲食代は1%の増加、逆に減少となったのが8.3%減の買物代でした。
2023年の訪日外国人の使い道は、主に宿泊費と飲食代であったと考えて良いでしょう。
次に、国籍別に訪日外国人の旅行消費額を見ていきます。
出典:国土交通省観光庁「2023年暦年 全国調査結果(速報)の概要」
2023年の全国調査結果において、宿泊費への支出額が最も大きかった国は、2,640億円でアメリカでした。
飲料費に関しては、2,063億円で韓国が最も高く、買物代では2,860億円で中国がトップの結果となりました。また、宿泊費・飲料費・買物代のすべてにおいて消費額が1,000億円を超えていた国は、台湾と香港でした。
日本政府観光局(JNTO)が公表しているインバウンド訪日外国人動向によれば、2023年12月時点の国別訪日外国人数は韓国・台湾・中国の順で多く、アジアからの観光客が多いことが伺えます。
参考:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2023年12月および年間推計値)」
訪日外国人が日本の食に求めているもの
ここでは、訪日外国人が日本の食に求める2つのことについてご紹介します。
飲食店の当日予約
最近では円安の影響により、気軽に日本を訪れる個人観光客の数が増える傾向にあります。そのため日本に到着後、現地で飲食店を決める外国人観光客が多いようです。
この場合、当日予約が必然となるため、これに対応できる飲食店が現在求められています。
1人あたりの高い消費額への対応
コロナが収束を迎え、日本への個人旅行が解禁になったことや円安の影響を受けて、最近では高所得者の訪日外国人が増えています。
例えば、一泊6万円レベルのホテルに滞在する外国人観光客が行きたい飲食店は、ミシュランクラスであったり、高級日本食レストランであったりするようです。
ただ、日本の高級レストランは基本的に事前予約しか受け付けておらず、当日予約はできない場合がほとんどです。このようにコロナ禍後、訪日外国人1人当たりの国内消費額が大幅に増えていることへの対応も必須となっています。
日本の食で驚いたことや印象に残ったこと
日本の食は訪日外国人に高い需要があり、じつは「日本食を食べること」が来日の目的ともいわれています。ここでは、訪日外国人の日本食に対する率直な印象についてご紹介します。
驚いたこと
2023年4月、農林中央金庫が公表した「訪日外国人からみた日本の“食”に関する調査」によれば、日本の食で驚いたこと第1位は「味がおいしい」、そして第2位は「盛り付けが美しい」、第3位は「メニューが豊富」という結果になりました。
これらは、主にアメリカ人・フランス人・イギリス人観光客から得られたコメントです。
一方、日本で提供される食事の量の少なさに、驚きを隠せない外国人観光客も多いようです。
例えば、アメリカでは大盛りが通常サイズであるため、さまざまな味を少量ずつ楽しむ日本のコース料理に対しては、物足りなさを感じてしまいます。また、韓国や中国では提供されたものを残すという食事マナーがあります。
このように自国との違いにより、訪日外国人が良くも悪くも日本食に驚かされているのが現状です。
印象に残ったこと
農林中央金庫の同調査において、日本の食事マナーについて印象に残ったこと第1位は「食前食後に挨拶をする」ことでした。これは日本ならではの食事マナーであり、約50.9%の訪日外国人が「印象に残った」と回答しています。
興味深いことに、国別にも違いが見られました。アメリカ人・イギリス人観光客は「健康に配慮する」や「お箸を使う」こと、中国人観光客は「旬のものを食べる」ことが印象的だと答えています。
一方、「食器を持ち上げて食べる」ことが印象に残ったと答えたのは、韓国人観光客です。韓国では、お椀やお皿を持ち上げることが食事マナー違反となるためです。
参考:農林中央金庫「訪日外国人からみた日本の“食”に関する調査」
日本のインバウンド対策の現状と今後
訪日外国人数が増加している中、日本には早急なインバウンド対策が求められています。ここでは、日本政府および食品業界におけるインバウンド対策の現状と今後すべきことについて解説していきます。
日本政府の対応
日本政府が現在掲げている目標は、2030年までに訪日外国人旅行者数を6,000万人に到達させることです。この目標を実現するために、日本政府は対策事業を開始しました。
この事業の中の1つに含まれているのが、ムスリム対応に関する取り組みです。じつは、マレーシアやインドネシアなどイスラム圏からの訪日外国人は増加傾向にあります。
イスラムの教えの中には、豚肉は食べない・ハラール肉以外は食べない・アルコールは飲まないなど、食に関する厳しい決まりがあります。ムスリムは旅行中もこれらの決まりに従い生活をするため、国内での食事環境の整備が必須です。
食品業界の対応
食品業界は、すでに食の多様性への対応を開始しています。
例を挙げれば、香川県で讃岐うどん店を展開している「株式会社人生は上々だ」は、ハラールおよびヴィーガンにも対応している讃岐うどんの販売を始めました。
だしは野菜や昆布でとり、小麦粉アレルギーにも対応できるように米粉を使った麺の製造にも取り組んでいます。
ハラール・ヴィーガン・グルテンフリーなど、海外では需要が高い食文化に対応したメニュー開発は今後必要となっていくでしょう。
また、日本語が理解できない訪日観光客のために求められているのがメニューの多言語化です。英語だけではなく、韓国語や中国語など観光客の多様化にも対応しなければいけません。
ただ、東京や大阪では飲食店向けの「多言語メニュー作成支援ウェブサイト」があり、無料で利用することが可能です。
実際に、このサイトを利用して多言語化メニューを作成した店主のコメントでは、「言葉が話せなくても、観光客とのコミュニケーションが効率的に取れる」と評判は上々です。
まとめ
今回は、訪日外国人の旅行消費額の内訳や日本食への印象、日本におけるインバウンド客への対応についてご紹介しました。
観光庁の調査結果によれば、訪日外国人は主に宿泊費と飲食費に多く支出していることがわかりました。
日本を訪れる目的は「日本食を食べること」ともいわれているため、今後は食に対するインバウンド対策が必須となることが伺えます。
日本食はおいしく、訪日外国人からの評判が高いのは事実ですが、食事の量の少なさに対しては改善の余地があるようです。
インバウンド対策については、日本政府・食品業界ともにすでに対応を始めています。早急な対応が求められているのは、ムスリムやビーガンなど食の多様化を考慮したメニュー作り、そして言葉の多様化といえるでしょう。