手軽&ヘルシーで注目を集める日本のせんべい!現地法人やハラル認証で世界の「BEIKA」へ

日本の伝統的なお菓子である「せんべい」や「米菓」が、近年「BEIKA」として海外市場で大きな注目を集めています。
本記事では、日本のせんべいが世界に浸透しつつある理由、具体的な輸出状況、各国・地域での受け入れられ方、そしてさらなる市場開拓を目指すメーカー各社の取り組みについて詳しく解説します。
せんべいが世界に浸透しつつある理由とは?
日本のせんべいが海外で受け入れられている理由は、いくつかあります。まずは主な理由を見てみましょう。
健康志向とグルテンフリー
日本のせんべいが受け入れられている理由の一つに、ヘルシーなおやつとしての魅力が挙げられます。
日本のしょうゆせんべいの栄養成分を見ると、ミルクチョコレートやポテトチップスなどと比較してカロリーや脂質が低くいことがわかります。このヘルシーさが大きな需要を取り込んでいます。
※出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
また、米粉を原料とした米菓は、グルテンフリーかつアレルギー対応可能なスナックであることも海外での人気を後押ししています。特に、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経て、世界的に人々の健康への意識がさらに高まったことも米菓への関心を強めるきっかけとなりました。
日本文化への関心
せんべいが受け入れられるもう一つの理由は、日本文化への興味です。
近年、アニメや漫画、和食ブームなどを通じて海外の人々が日本文化に触れる機会がますます増えています。そこで目にする日本の食文化、たとえば醤油や海苔の味・食感が海外の消費者にとっては新鮮で魅力的に映り、せんべいを試すきっかけとなっています。
せんべいの輸出状況

日本の米菓の輸出は、着実に拡大を続けています。全国の輸出金額は増加傾向にあり、2023年には60億円を超え過去最高額を記録しました。
さらに2024年1月から11月の累計輸出金額でも、すでに57億8,800万円となっており、この勢いが続けばさらに記録を更新する見込みです。
2024年1月~11月のデータから主要な輸出先国・地域を見ると、米菓の輸出金額が最も多いのはアメリカで全体の27.8%を占め、16億1,019万1,000円に達しています。次いで、台湾が21.9%で12億6,978万5,000円、香港が12.4%で7億1,735万9,000円となっており、これら3つの国・地域が主な輸出先となっています。
その他韓国(5.7%)、サウジアラビア(4.9%)、シンガポール(4.1%)なども重要な輸出市場として挙げられます。
輸出を支える新潟県産米の存在
日本の米菓輸出を語るうえで欠かせないのが、新潟県産の米です。
新潟県は全国1位の米収穫量を誇り、「米どころ」として広く知られています。さらに、2022年の国内米菓出荷量でも全国1位を記録しています。
輸出される米菓においても、新潟県産の高品質な米が原材料として重要な役割を果たしています。
2022年3月には「新潟県農林水産物のブランド化推進条例」が施行され、「新潟米」をはじめとする8品目が県推進ブランド品目に指定されています。こうした取り組みは、豊かな米の供給力に加え輸出される米菓の品質保証にもつながり、国際的な競争力を高める要因の一つになっているといえるでしょう。
各国・地域でのせんべいの受け入れられ方
世界各国・地域では、日本の米菓メーカーとの協力でそれぞれの文化や市場特性に合わせ、多様な形でせんべいが浸透しています。
アメリカ市場での浸透
アメリカでは、健康志向の高まりと日本食ブームで米菓の需要が特に高い国です。米菓大手メーカーの亀田製菓は1989年にアメリカ・イリノイ州の「SESMARK FOODS, INC.(現TH FOODS, INC.)」に出資し、北米での米菓製造・販売を開始しました。
同社の製品は、グルテンフリーかつ低アレルギー・低脂肪のライスクラッカーとして健康志向の消費者に受け入れられ、成長を続けています。
※出典:亀田製菓「海外事業」
中国圏・アジア市場の開拓と成長
アジア市場、特に中国では日本の米菓メーカーの技術支援や資本提携が、市場の拡大に大きく貢献しています。台湾企業である旺旺グループは、日本の米菓メーカーである岩塚製菓と1983年に技術提携を交わし、その後の発展を大きく加速させました。
現在、旺旺グループは米菓生産量で世界No.1メーカーへと成長し、台湾・中国国内だけでなく世界56か国で「旺旺ブランド」が親しまれています。
※出典:旺旺・ジャパン株式会社「岩塚製菓 ✕ 旺旺グループ」
東南アジア・イスラム圏への展開
近年、東南アジアや中東などのイスラム市場への進出を目指す動きが活発化しており、そのカギとなっているのがハラル認証の取得です。ハラル認証とは、原材料や製造工程がイスラム教の戒律に則っており適切であると第三者機関に認められた証明のことです。
一般社団法人ハラル・ジャパン協会は、東南アジアを中心に日本のせんべいや焼き菓子などの輸出がスタートしたと報告しており、実際に日本の菓子メーカー3社がハラル認証を取得・輸出販売しています。
※出典:一般社団法人ハラル・ジャパン協会「イスラム市場向けに菓子メーカー3社がハラル認証取得!」
ヨーロッパメーカーの取り組み
ヨーロッパでも、現地の食品メーカーがせんべいの製造・販売を展開しています。
オランダの「Mitsuba」では、「Japanese Peanut Crunch & Crispies(いわゆるミックスあられ)」を、またドイツの「XOX」でも、「Rice Chips」や「Asia Mixed Hot Ricecracker」を製造し、一般的なスーパーマーケットで販売されるようになってきました。醤油・味噌味・照り焼き・わさび・ピリ辛・ナッツミックスなど多様なフレーバーを揃えています。
※出典:Mitsuba「DISCOVER OUR FLAVOURS」
※出典:XOX「Asia」
さらなる市場開拓を目指す取り組み

海外メーカーが現地でせんべいの生産を開始している一方で、日本の米菓メーカーは品質にこだわった商品の海外展開に力を入れています。具体的な事例を見ていきましょう。
亀田製菓
せんべいの海外展開を先駆けているのが亀田製菓で、「KAMEDAブランド」として海外ビジネスを拡大させています。
アメリカの菓子メーカーへの出資や亀田USAの設立を皮切りに、中国・ベトナム・タイ・インド・カンボジアなどで現地メーカーと共同法人を設立。これらの取り組みは、日本の米菓が単なる輸出のスナック菓子としてではなく、独自の文化と品質を持つ「BEIKA」として世界市場での地位を確立することに貢献しています。
※出典:亀田製菓「海外事業」
岩塚製菓
岩塚製菓は、創業以来「原料に勝る加工品はない」という信念を大切にし、国産米100%の使用、自社での製粉、厳選された原料へのこだわりを貫いてきました。
一方で、海外に流通している米菓の中には湿気や油焼けによっておいしさが損なわれた状態で提供されているものもあり、これを大きな課題と捉えています。
そこで「海を越えた先でも、お客様が口にするその瞬間まで美味しさを保証すること」を最も重要と考え、賞味期限を延ばすための技術を開発し「BEIKA MOCHI」を商品化。また海外事業部を新設し、特殊包装を導入してアメリカのスーパーなどを中心に販売する取り組みも進めています。
日の出屋製菓産業
大手メーカーだけでなく、地方の米菓メーカーも海外販路開拓に積極的に取り組んでいます。
富山県の日の出屋製菓産業は、主力商品である「しろえびせんべい」がアメリカの菓子サブスクリプションサービスに採用された実績を持ちます。また販路拡充を目指し、東南アジア圏での電子商取引(EC)を開始しました。
※出典:農林水産省「高級米菓で、富裕層向け・贈答用として差別化」
宮田製菓本舗
京都の宮田製菓本舗は、2022年5月に本社工場全体でハラル認証を取得し、マレーシアの日系流通「JOUNETSU BYDON DON DONKI」を通じて輸出を開始しました。
安価でおいしいだけでなく、ムスリムの消費者に安全・安心に届けられるとして、マレーシアを皮切りにシンガポール・タイ・香港・台湾などへの輸出も予定しています。
※出典:一般社団法人ハラル・ジャパン協会「京都 宮田製菓本舗、工場全体で2022年5月ハラル認証取得」
酒田米菓
酒田米菓はハラル認証取得後、「日本の食品 輸出EXPO」に出展し、国際的なバイヤーに認証取得製品を紹介するなど米菓の積極的なプロモーションを行っています。
まとめ
ヘルシーかつグルテンフリーであること、そして日本文化への関心の高まりを背景に世界中で需要が拡大している日本のせんべい。「賞味期限の延長」や「品質管理」といった日本の技術への信頼性もこの流行の大きな要素といえます。
日本が誇る伝統菓子であるせんべいは、今後も多様な食文化の中でその存在感を高め、さらに多くの人々に「おいしい」という感動を届けていくことでしょう。