寿司を中心に日本食人気が上昇、ラオスの食文化から見る日本食の位置づけ
インドネシア半島に位置し、東南アジアでただひとつの内陸国ラオス。西側のタイと東側のベトナムに挟まれた山岳国です。
日本からの観光旅行先としては、あまり一般的ではない国ですが、豊かな自然が残り、ニューヨーク・タイムズで「世界で一番行きたい国」第1位に選ばれたこともあります。
日本ではなじみのないラオスですが、近年目覚ましい経済発展を遂げており、1人当たりのGDPが上昇してきている国でもあります。
そんなラオスで、寿司をはじめとする日本食の人気が高まっています。今回は、ラオスという国の食文化を紹介しながら、日本食の実態についてご紹介します。
ラオスの食文化とは
1893年にフランスがラオスを植民地化する以前、ラオスはタイの支配下にあり、メコン側をはさむ地域には、国境の両側で同じ民族が暮らしていました。そのため、ラオスの食文化は、タイにとても近いものがあります。
また、中国南方の雲南省から、ミャンマー、タイ・ベトナム北部の山間部、ラオスの一帯、半径200kmほどの地域は、アジア南東部の内陸部として、似た食文化を持っています。
ラオスの食文化の特徴
周辺国と似た食文化の中で、他の東南アジアの国にはないラオスの食文化の特徴は、もち米を主食にしていることです。
東南アジアのお米としてポピュラーな、パサパサしたインディカ米ではなく、やわらかいもち米が主食なのは、日本人の味覚にも合うでしょう。
またラオスに限らず、インドネシア半島のメコン川流域では、川でとれる魚をメインにした食文化を持ちます。
ラオスが山岳国であることから、山岳地帯で採れる豊富なハーブが多用されることも、ラオスの食文化の特徴です。
山の幸、川の幸を生かして、近代化されていない伝統的な味が守られているのが、ラオスの食文化といえます。
ラオス人が好む味付け
ラオスは山岳国で標高が高いものの、年間を通じて暑く、最高気温は30~40度近くになります。そのため他の暑い国と同様に、食べ物の味付けは辛い傾向です。
ただ辛いというよりも、甘辛さ、濃い味が特徴です。多くの日本食レストランでも、日本での味付けよりも濃い味付けがされています。
ラオス料理の味の特徴
「酸味、辛味、発酵、ハーブの香り」がラオス料理の特徴です。
酸味や発酵、ハーブの香りは、日本人でも和食の中でそれなりに慣れている味付けでしょう。問題は、強すぎる辛みと、全体的に味が濃いことです。
1人当たり500gを毎月消費する発酵調味料は、生魚を3ヶ月~1年発酵させており、とても強い匂いがあります。
1人前の料理に使う唐辛子の量も、10本程度入れることもあり、日本人には食べられないほど辛い味になります。
ラオス料理で使われるハーブ
ラオス料理で使われるハーブも、香りの強いものが多用されます。
レモングラス、パクチー、ライム、唐辛子などはラオス料理に必須のハーブです。
これらはどれも、タイ料理の有名なトムヤンクンにも使われるため、ラオス料理の味や香りはタイ料理にとても似ています。
また、他の東南アジア料理にあるように唐辛子とコリアンダーを加えたスパイシーな薬味も好まれます。
肉料理にも、魚料理にも、焼く際にハーブが使われるので、ラオス料理にハーブは必要不可欠なものと言えるでしょう。
このように、ラオス人が通常好んで食している味付けは、辛くて濃い味、強い風味が特徴です。
ラオスで人気の日本食
辛く濃い味を好むラオス人に日本食は受け入れられているのでしょうか?
実は2021年頃より、ラオスの首都では日本食レストランの出店が相次いでいます。
これまではラオスの富裕層を対象にしていた日本食レストランが多かったものの、最近ではローカル向けで低価格な日本食レストランが増えています。
気軽に日本食を食べられるようになったことから、若者を中心に日本食への関心が高まっています。
ここからは、ラオスで人気の日本食を見ていきましょう。
寿司
世界中で人気の「寿司」ですが、ラオスでも人気が高まっています。
中でもサーモンは人気のネタであり、トビコやサーモンのロール寿司がよく提供されています。ロール寿司は視覚的にも鮮やかな色が印象的で、見た目も豪華なものが好まれているようです。
そもそも、ラオスには、日本食と同じように伝統的な「発酵食」があります。その代表的なものが、「なれ寿司」です。実は日本の寿司はアジアにそのルーツがあり、それが生魚ともち米を発酵させた「なれ寿司」という説もあります。
現在、日本の寿司がラオスで受け入れられるベースには、寿司のルーツであるアジアの食文化があることも、大きな理由でありそうです。
ラーメン
ラーメンもラオスで人気があります。ボリュームたっぷりでお腹にもたまるラーメンは、中間層以下のラオス人にも気軽に手が出るメニューです。
また、ラオス人の味覚にあった辛みを出しやすい点も、ラーメンが人気の理由です。
東南アジアの屋台文化にマッチしやすいのか、ラーメンは特に受け入れられやすいのでしょう。さらに各国の味付けがされるのも特徴です。
ラオスでは辛い味付けが人気ですが、その他にも、トムヤム味のラーメンもあります。
また、自由に調味料を追加できるお店が多く、提供されたラーメンにさらにラー油を足す客も多いのです。
ラーメンの種類では、とんこつや魚介ラーメンが人気です。もともと濃い味が好きなラオス人ですから、とんこつラーメンのこってりした味は好みのようです。
またラオスの魚醤が味付けのベースにあるため、魚介のラーメンも受け入れられやすいようです。どれも、ラオス人に向けてはこってりした味付けになっています。
定食
ラオスでは寿司やラーメン以外にも、日本食のあらゆるメニューが人気です。
そのため定食にあたる総合食も普及しつつあります。特に、鶏の天ぷらや、魚の照り焼きなどの定食が人気です。ボリュームたっぷりでお腹にたまり、寿司よりも割安感のあるメニューが、家族連れなどに多く注文されているようです。
まとめ
インドネシア半島に位置するラオスは、かなり濃く辛い味を好む国民性があります。
また歴史的な変遷、地理的な影響から、ラオス料理、ラオスの人々の食生活は、周辺の地域の食生活とつながっているのも特徴です。
そんなラオスでは、寿司をはじめとする日本食が注目を集めています。日本食レストランは、富裕層向けの高級飲食店として認識されていましたが、最近ではローカルな日本食レストランが続々とオープンし、多くのラオス人が日本食を楽しむようになっています。
そもそもラオスで寿司が人気なのは、ベースにあるラオスの食文化、米を主食にした発酵食や、魚を食べる習慣が大きく影響しているからでしょう。
「辛い、濃い」味の好みは、日本食の味とは少し違いますが、定食を提供する日本食店も拡大してきている様子です。
ラオスの今後の経済成長とも相まって、徐々に増えてきている日本食レストランが、今後さらに広く受け入れられていくのが期待されます。