品目別輸出額第6位のサバ、ナイジェリア、ガーナが上位に サバ缶「GEISHA」が先陣を切る
今アフリカ諸国では、日本でお馴染みの魚「サバ」が大ブームを引き起こしています。特にナイジェリアやガーナでは、サバの缶詰が人気を集めているようです。
もともと、アフリカには魚を食べる文化があったため、サバは国民に受け入れられやすかったのかもしれません。ただ、数ある日本の魚で、なぜ「サバ」だったのでしょうか?これには、私たちが知らない事情がありそうです。
そこで、今回は「アフリカ諸国に輸出されるサバ事情」をはじめとして、「サバが人気となった理由」、そして「アフリカで人気のサバ料理」についてご紹介していきます。
アフリカ諸国に輸出されるサバの現状
農林水産省が発表した2020年の品目別輸出額によると、サバは第6位にランクインするほど輸出量の多い水産物です。
アフリカ諸国の中で、サバの輸出国として毎年上位に入る国は、ナイジェリアとガーナの2カ国です。2020年のサバの輸出量はそれぞれ、1万5千700トンおよび1万2千500トンでした。また、2017年から2019年までサバの輸出国として首位を占めていた国はナイジェリアで、ガーナも5位以内にランクインしていました。
では、なぜこれほど大量のサバがアフリカ諸国に輸出されているのでしょうか?その理由は、日本国内でサバが広く流通してないためです。これは日本側の問題なのですが、500g以下の小さいサバは量販店が買いたがらないことが原因です。
「小さくて規格外であること」、そして「小さいサバは脂がのっておらず、質が落ちる」というイメージから買い手が少ないのがサバの現状です。日本で売れないのであれば海外へ輸出するという選択は、当然の流れなのかもしれません。
参考:農林水産省「品目別貿易実績」
https://www.maff.go.jp/
なぜアフリカでサバが人気なのか
ここからは、アフリカ諸国でサバが人気となった理由についてご紹介していきます。
サバがアフリカ諸国へ輸出される形態には2つあります。一つは「缶詰の状態」、もう一つは「生を冷凍した状態」です。実は、このサバの輸出形態にアフリカでのサバ人気の理由が隠されているようです。まずはサバ缶から説明していきます。
アフリカでサバが人気の理由① サバ缶の長い歴史
出典:川商フーズ株式会社「GEISHA缶詰のグローバル展開」
現在、アフリカ諸国で大流行しているサバ缶を販売しているのは、「川商フーズ」という日本の会社です。この会社は、半世紀以上にわたり「GEISHA(ゲイシャ)」と呼ばれるサバ缶を売り続けています。
実際のところ、このゲイシャ缶の年間輸出量の約半分はナイジェリアとガーナの二カ国で占められています。スーパーマーケットに並べられるとすぐに売り切れることもあるようで、ゲイシャ缶はすでにアフリカの国民食となっています。
また、このサバ缶のデザインにも人気の理由があります。ゲイシャ缶には名前通り、芸者の絵が描かれています。
この芸者の絵の歴史は、実はサバ缶よりも長く、商標として登録されてからかれこれ100年以上が経っています。缶詰に芸者の絵が採用された理由は、当時の日本において、芸者の絵が海外からの観光客に大好評だったためです。
ナイジェリアやガーナでGEISHAと言えば、サバ缶と認識されるほど広く知られているゲイシャ缶。長く地元に密着してきたことと、缶詰のデザイン性に人気の理由があるようです。
アフリカでサバが人気の理由② アフリカの漁業事情
アフリカは海に囲まれているため、日本からサバを輸入しなくてもサバを獲ることはできます。そうできない理由は、大型漁船がなく、獲った魚を保管するための冷蔵・冷凍設備が整っていないためです。
魚を食べる食文化をもつアフリカ諸国にとって魚は必要な食材であるため、もっぱら輸入に頼っているのが現状です。ただ近年、欧州諸国が資源保護を訴えはじめて以来、魚の獲りすぎを避けるために小さい魚を獲らなくなりました。
欧州諸国が小さい魚を輸出しないようになった、というこの状況に見事にマッチしたのが日本のサバ事情です。魚を輸入したいアフリカ諸国と、規格外の小さいサバを輸出したい日本は良きパートナーとなりました。
日本で穫れたサバは冷凍され、船でナイジェリアやガーナの港に降ろされます。そしてその一部は、トラックでアフリカの内陸部まで運ばれます。
また、サバ人気の別の理由として、サバの調理のしやすさも挙げられます。アフリカ料理では、魚を煮たり、焼いたり、燻製にしたりすることが多いのですが、サバはこれらの調理法に適しています。
では、アフリカの食文化にうまく溶け込んだサバは、実際どのように調理されているのでしょうか?次は、アフリカで人気のサバ料理についてご紹介していきます。
アフリカでのサバの人気料理は?
アフリカのレストランに行くと、メニューが「肉料理」「魚料理」「野菜料理」の3つに分かれていることが多いようです。今回はアフリカの魚料理に注目したいと思います。
アフリカで人気のサバ料理① 塩焼き
日本でもよくサバの塩焼きを見かけますが、アフリカでもよく食べられているようです。ただ、少し異なっているのは味付けの仕方です。
日本では、シンプルにサバに塩をつけて焼き、レモンをかけて食べるのが定番です。これと比べてアフリカでは、調味料は塩だけでなく、ハーブも使う傾向にあります。
アフリカの独特な気候と風土のおかげで、アフリカでは多様なハーブが育てられています。例えば、ルワンダで栽培されているレモングラスは焼き魚料理によく合います。他にも、塩に加えてガーリックやショウガ、バジルなどで味付けして、サバ一匹を丸ごと焼いたりとバラエティーに富んでいます。
そもそも「焼く」という調理法は、アフリカ全土で行われています。日本では調理燃料として電気やガスが主流となっていますが、アフリカでは主に木炭が使われています。木炭の使用は、アフリカでの生活スタイルにとても合っているようです。
木炭の利点は、必要に応じて木炭を追加することで火加減を調節できることです。アフリカではプロパンガスが高価であるため、まだ一部の地域でしかガスは普及していません。木炭を使用している地域にとって「サバを焼く」という調理法は、とても身近であったこともサバが人気となった理由だと考えられます。
アフリカで人気のサバ料理② トマト煮
アフリカ諸国での主な調理燃料は木炭ですが、木炭のもう一つの利点は、一度つけたらなかなか消えないことです。
アフリカの家庭では、朝から木炭に火をつけ、夜までつけっぱなしにすることが多いようです。これは、長時間の煮込み料理をするのに最適なため、アフリカでは「焼く」だけでなく「煮る」料理も多く存在しています。
そして、サバを煮込む時の味付けには、トマトを使用します。アフリカでは一般的に、トマトを料理のうま味ベースに使うことが多く、サバもトマトと一緒に煮込んだものが好まれています。
このサバのトマト煮の人気度は、先にご紹介したゲイシャ缶にも現れています。実はゲイシャ缶には「MACKEREL IN TOMATO SAUCE」というトマト味もあり、ゲイシャ缶と言えば「トマトソース味」と言われるほど、アフリカ諸国で人気の高さを保っています。
まとめ
今回は、「日本からアフリカ諸国へ輸出されるサバ事情」「サバが人気となった理由」「アフリカで人気のサバ料理」の3つについてご紹介しました。
日本国内では、規格外の小さなサバは売買されにくいため、サバを必要としているアフリカ諸国へ輸出することが主流となったようです。そして、アフリカでのサバ人気の理由には、サバ缶「ゲイシャ」の長い歴史と、現在のアフリカにおける漁業環境が影響したと考えられます。
また、サバの人気の料理法としては、定番の「塩焼き」と「トマト煮」の2つがあるようです。どちらの調理法も木炭を使えば簡単にできるため、アフリカの食文化に馴染みやすかったのでしょう。
すっかり国民食として定着したゲイシャ缶とサバ料理は、これからもアフリカで安定した人気を見せてくれることは間違いありません。