世界で注目される日清食品 タイ、アメリカ、インド、ブラジルでの展開例
日本国内には数多くの食品会社が存在していますが、海外にまでシェアを広げて活躍している企業はそこまで多くありません。
特に即席麺などで実績をあげている日清食品株式会社(以下、日清食品)は、多くのヒット商品を世に送り出している企業として有名です。
企業独自の技術力で開発した商品は、世界におすすめできるものが多く存在しています。今回は、そんな世界に通用する商品を生み出し続けてきた、日清食品という企業を詳しく見ていきましょう。
日清食品の海外進出事情
日清食品は1948年当初、中交総社として設立され、10年後の1958年に世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」を発売します。その後開発されたカップヌードルが、発売50周年目を迎えた2021年に世界100カ国で販売され、誰もが知っているグローバルブランドになりました。
チキンラーメン誕生物語と世界に向けた創業者精神
日清食品の創設者、安藤百福氏は家庭で手軽に食べられるラーメンの開発と販売を実現するための研究を、自宅にある小さな小屋から始めます。
ありふれた道具を使いながら、1日の睡眠時間が平均4時間と言われるほどラーメンの開発に不屈の精神で望み、その研究の結果、約1年後の1958年に「魔法のラーメン」と呼ばれるチキンラーメンが世の中に誕生します。
偉業を成し遂げた安藤百福氏の創業者精神を4つ紹介します。
食足世平「食が足りてこそ世の中が平和になる」
食創為世「世の中のために食を創造する」
美健賢食「美しく健康な身体は賢い食生活から」
食為聖職「食の仕事は聖職である」
どの言葉からも私たちの命を支える食を作り出しながら、世の中のために尽くす意思がうかがえます。
世の中に良質な食を届けることを理念にしている日清食品は、日本だけでなくアメリカ、中国、シンガポール、インド、タイ、ベトナム、インドネシア、カンボジア、ハンガリー、ドイツなどに海外事業所を構え、海外でも活躍しています。
初の海外拠点はアメリカ
チキンラーメンの誕生から8年後の1966年6月に、安藤百福氏自らがインスタントラーメンを国際商品にするためにアメリカを視察し、翌7月にはヨーロッパに市場調査に出かけます。
その結果いくつものアイデアが閃き、カップに入ったインスタントラーメンの開発が始まります。
日本万博の開催と同じ年に、アメリカ、ロサンゼルスにて日清食品初めての海外工場の竣工が始まり、設備資材を日本から運搬し、1972年、本格的に生産準備が海外を拠点に整います。
なぜ日清食品の商品は海外で人気なのか
安藤氏は海外視察に出かけた際に、今までの固定概念を越えた新しい発想と柔軟な考え方があってこそ、インスタントラーメンの世界進出が実現すると確信しました。
そしてロサンゼルスの工場が完成するよりも1年はやい1971年、いくつもの新しい発想と試行錯誤の繰り返しの末にカップラーメンが誕生します。
多様性と柔軟性
日清食品は2017年度から最高売り上げを4期続けて更新しています。その背景には、定番商品の強化と共に若い世代を対象にした斬新な商品開発があります。企業としてのこれらの戦略は、海外の事業所や販路の拡大にも大きな影響を与えています。
従来の日清食品の製品づくりや味を守ることに加えて、販売先での念入りな視聴調査による柔軟な商品開発が現地の人たちに自然に受け入れられました。人気商品の枠を越えてロングセラー商品としての地位も着実に築いています。
現地の人々の暮らしや食文化を尊重し、柔軟な姿勢で積極的に取り入れていく。そして、定番商品となった後も常に、新しい食を開拓していくフロンティア精神を持ち続ける企業理念の実行による成果と言えるのではないでしょうか。
海外の展開例
ここからは4つの国の事例を見ながら、実際にどのような商品が販売されているのかを紹介していきます。
タイ
出典:Amazon
タイはインスタントラーメン市場の内、10%がカップ麺、残りの90%を袋入り麺が占めています。この市場調査の結果から、2013年に工場の新規竣工を機にカップ麺の生産に力を入れていた路線から、袋麺の充実に舵を取ります。
また、タイは世界でもインスタントラーメンの消費率が高く、麺へのこだわりもはっきりしていることから、これまでの経験とタイ人好みの麺づくりを強化し競合他社との差別化をはかっています。
アメリカ
出典:Amazon
日本でカップヌードルが誕生してから約2年後の1973年、「Cup O’Noodles」として、世界に先駆けてカップヌードルが発売されます。
欧米では、麺類をすすって食べる習慣がないことから、従来の麺よりも短めな3種類のカップヌードルが売り出されました。
その後躍進を続けながらも新しいニーズに合わせていく試みも継続されています。
インド
出典:Amazon
場所による気候の違いはありますが、1年を通して暑い国であるインドでは、スープと一緒に麺を食べるよりも焼きそばのようにスープないインスタント麺が好まれています。
バンガロール市に本社工場を構え地方では袋入りの麺を中心に、都市部では比較的単価の高いカップ入りの麺を主力にして販路を広げています。
インドの食文化により近づけるために開発したブランド「スクーピーズ」は、8年以上もインドで愛され続けるロングセラー商品になりました。
ブラジル
出典:Amazon
ブラジルでも従来のインスタントヌードルを刷新し、新たな顧客を確保するためにユニークな商品づくりを展開してきました。2018年には若者向けにパッケージのデザインも改良し、チェダーチーズやテリヤキチキンなどの新メニューも販売しています。
電子レンジでも調理ができるようになり、日本で売られているよりも塩分が控え目でとろみがしっかりついているのが特徴です。
日清食品が目指す完全栄養食への試み
日清食品は、食べる楽しみは人間のしあわせに直結するとの思いから、医療機関への「完全栄養食」の提供を試みています。普段食事制限がある人たちにも美味しいもの食べる喜びを感じてもらいQLO(クオリティオブライフ)を高めるための社会貢献を実施しています。
長年にわたるインスタントラーメンを通して得た経験や技術を活かしながら、新しい技術も大いに活用して多くの人の喜びや幸せにつながる絶え間ない研究を遂行しています。
まとめ
今回は私たちの食を支える商品を生み出してきた日清食品について見てきました。
創業して70年以上の歴史をもつ企業はそこまで多くありません。現在も多くの人に愛される商品を販売し続ける日清食品には、人気になっているだけの理由があります。
日清食品は今後も世界中の人に喜んでもらえる商品づくりをするため、果敢に新しい挑戦も実行しています。
安藤百福氏の創業者精神のように、これからも世界中で躍進していくことでしょう。