海藻を好んで食べる食文化の日本と韓国、海苔の違いはどこにあるのか 韓国で日本の海苔の評判は今一つ
日本食に欠かせない食材のひとつに、海苔があります。その登場シーンは多様で、味付け海苔はおかずの定番ですし、そのまま食べることもあります。刻み海苔は薬味という形で、アクセントのような使い方もされます。海苔巻きやおにぎりのように、海苔の存在が主役に近い料理もあります。
日本で広く食べられている海苔の多くは日本産ですが、韓国海苔も近年存在感を高めています。この、韓国海苔とはどのようなものなのでしょうか。
日本の海苔の歴史
まずは、日本における海苔の歴史を見てみましょう。縄文時代の遺跡からアラメやホンダワラの海藻が発見されていることから、海苔も古くから食べられていたのではと考えられます。奈良時代の文献では、海苔の存在が確認できます。
時代は進み、江戸時代には海苔の養殖手法が確立します。これまでは天然のものを採取する手法でしたが、1949年に海苔の糸状体が発見され、その養殖技術は飛躍的な進歩を見せます。生産量も安定し、海苔が日常的な存在になるための基礎が形成されたのです。
日本の海苔と韓国の海苔の違い
このように、日本では古くから食材としての海苔に親しんできました。ただし、需要のすべてを国内産で賄っているわけではありません。韓国産の海苔の輸入は、1947年から行っていたのです。当初、輸入量は限られたものであり、その状況は1990年代半ばまで続きます。
海苔の輸入が動きを見せたのは、1995年以降です。韓国からの海苔の輸入が増え始め、2004年には最初のピークを迎えます。2005年に中国からも海苔の輸入が開始され、その影響もあって韓国からの輸入は一旦落ち込みます。しかし、落ち込みは一時的なもので、リーマンショック後に再び上昇に転じました。
現在では、スーパーマーケット等でも韓国海苔は当たり前に見られるようになりました。
さて、韓国海苔と聞くと、ごま油と塩の味が利いていて、パリッとした食感をイメージしますが、日本の海苔とはどのような違いがあるのでしょうか。
材料の違い
日本の海苔と韓国海苔の違いとして、まず知っておきたいのが材料の違いです。日本の海苔に使われる主流となる海藻はアサクサノリやスサビノリで、いずれも色合いは赤みを帯びています。日本の海苔は、その多くが有明海や瀬戸内海で養殖されていますが、全国的に養殖が行われているわけではなく、生産地域は限られています。
一方韓国海苔は、オニアマノリやイチマツノリといった日本では「岩海苔」として知られる種類の海苔が主に使われています。
参考までに、日本では「岩海苔」は、板状に加工すると穴が目立つこともあり、その多くは板海苔にはなりません。「岩海苔」の著名な産地は日本海側にも多く、京都府の袖志海苔や北陸地方の雪海苔などがよく知られています。
作り方の違い
日本の海苔と韓国海苔の外観を比較すると、きめの細かい日本の海苔に対し、韓国の海苔は穴があいていたりするなど、野趣にあふれたものになっています。これは使われている原料の違いだけでなく、作り方も関係しています。
日本の海苔は、乾燥前に細断し、その後成形を行います。板状にした海苔は脱水したのち、温風をあてて乾燥させます。一方で、韓国海苔は細断を行わず成形し、海苔の乾燥にも時間をかけます。乾燥後に遠赤外線で焼かれた海苔は、塩とごま油で味付されます。
こういった製造工程の差異も、日本の海苔と韓国海苔の違いを生む大きな要因となっています。
味付けの違い
日本の海苔で、韓国海苔に相当するのは味付け海苔です。これらを比較した場合、味付け海苔は醤油がベースの甘辛い味付けとなっているのに対し、韓国海苔は味付けが塩とごま油の比較的シンプルなものになります。
なお、日本には焼き海苔と呼ばれる、海苔巻きやおにぎりに使われる海苔もあります。韓国でも海苔巻きやおにぎりはポピュラーな料理ですが、それらに使われる海苔はこれまで述べてきたような韓国海苔ではありません。日本の焼き海苔に似た「海苔巻き用」として市販されている海苔を使用します。
韓国でも、収穫量が多い海苔は「海苔巻き用」タイプの海苔であり、韓国海苔のような岩海苔の収穫が多いわけではありません。
用途の違い
日本の海苔と韓国海苔には、それぞれに適性があります。たとえば日本の海苔は、揚げ物にすると海苔の香りが高まりますが、これは磯辺揚げを考えるとするとイメージしやすいでしょう。
磯辺揚げ以外にも、食材を海苔でくるんで揚げるといった料理も考えられます。肉類はもちろん、野菜あるいは魚介類など、海苔を使った揚げ物のレシピは豊富にあります。海苔の天ぷらのように、海苔を単体で揚げてもいいでしょう。
韓国海苔は、塩とごま油をベースにしたシンプルな味付けがされていますから、料理を引き立てる調味料のような使い方が可能です。サラダなどに投入することで、味だけでなく食感も加えることができます。ただし、韓国海苔の味付けは決して強いものではありませんので、他の調味料を少し加えるといった工夫も必要です。
味付け海苔タイプではなく、調味料のような使い方がより行いやすいフレークタイプの韓国海苔も、容易に入手できるようになっています。いろいろな食材に合わせやすい形状ですので、こういった韓国海苔を使ったレシピは、発展の可能性を秘めていると言えます。
原料産地の違い
日本の海苔と韓国海苔とでは、原料の産地も違っています。基本的に、日本の海苔は日本産の原料を使っていますし、韓国海苔は韓国産の原料を使っています。
ただし、日本の海苔であっても、韓国から輸入した乾海苔を原料としている商品があります。普及品を中心に、韓国産の原料を日本国内で味付け海苔などに加工した商品も増えてきています。一方で、日本のメーカーが日本産の原料を使用し、韓国流の味付けをした商品も「韓国風海苔」として販売されています。
現在のところ、高級品に関しては、日本の海苔は国産原料を用いています。ともあれ、原料産地では日本の海苔と韓国海苔を区別することは、意味をなさなくなりつつあるのかも知れません。
韓国で日本の海苔はどのように受け止められているか
日韓とも、昆布やワカメをはじめとした海藻を好んで食べる食文化を持ちます。特に海苔は両国とも身近な食材であり、日本では韓国海苔の存在感が年を追うごとに大きくなっています。
それでは、韓国において日本の海苔はどのように受け止められているのでしょうか。それを知るために、国別に見た海苔の輸出量推移を確認すると、韓国への輸出量は非常に少ないことがわかります。
参考)株式会社戸田理平商店
海苔の輸出入推移グラフ(1996~2014年)
https://todanori.main.jp/
このことは、韓国の人たちが日本の海苔を食べる機会が少ないことを示しています。
一般に、韓国ではしっかりした味付けが好まれます。ただし塩辛さに対しては評価が厳しく、醤油味が強い日本の味付け海苔は好まれない可能性が高いと言えます。「味がしない」「少し物足りない」という評価がなされることもあります。
前述の通り、韓国では日本の海苔に触れる機会は現在のところ限られています。韓国市場への浸透を図るには、韓国人が好む味付けの商品を開発するなどの工夫が、まずは求められると言えるでしょう。
まとめ
日本の海苔も韓国海苔も、それぞれに魅力があります。特に味付けという観点では、醤油ベースと塩ベースという日韓の食文化の違いがそのまま反映されているなど、興味深い面も持ちます。
日本では韓国海苔が存在感を高めているのに対し、韓国では日本の海苔は、まだまだ知られていません。海苔を好んで食べる食習慣は共通していますし、両者の違いを知りそれを商品づくりに活かすことで、日本の海苔にとって有望な市場に変化する可能性はあると言えそうです。