日本のとんかつにそっくりなドイツ料理「シュニッツェル 」料理の共通点や特徴
みなさんはドイツ料理の「シュニッツェル」を知っていますか?
ドイツ料理と聞くとソーセージやフライドポテトを思い浮かべますが、現地にあるドイツ料理レストランのメニューには必ずと言っていいほどシュニッツェルがあります。
実は、この「シュニッツェル」は日本の人気料理「とんかつ」との共通点があるのです。
そこでこの記事では、シュニッツェルの概要やとんかつとシュニッツェルの違いなどについて紹介していきます。
「シュニッツェル 」とは何か
日本ではあまり聞きなじみのないシュニッツェルとは、仔牛のヒレ肉や赤身肉を叩いて薄く伸ばし、衣をつけて焼く世界的に有名な料理です。
シュニッツェルは主にドイツやオーストリア・スイスなどで食べられており、地域によって食べ方が違うと言われています。
シュニッツェルには様々な種類があります。例えばシュニッツェルの基本とされているのが、仔牛の肉を使用したウィーン風のシュニッツェル。オーストリアでは「仔牛以外の肉を使用したシュニッツェルは、使用されている肉をメニューに記載しなければならない」という厳しい規則もあります。
ウィーン風シュニッツェルはレモン汁をかけて食べるのが一般的ですが、甘めのクランベリーソースをかけて食べることもあるようです。
他にも、マッシュルームのクリームソースやマッシュルーム入りトマトソースなどを添えて食べる場合や、卵にパルメザンチーズを加えたり、パスタと一緒に食べたりするなど、アレンジを加えているものもあります。
またドイツの裁判所が介入したシュニッツェルもあります。
仔牛肉の中にハムとチーズを挟んだシュニッツェルは、ドイツの裁判所が「スイス産のチーズと豚肉のハム以外を使用してはならない」という規則を作るほど。
家庭で作るには規則を守らなくとも何も言われませんが、レストランで提供する際には規則を守らなかったときの罰則があるのだとか。そんな規則に厳しいシュニッツェルですが、ドイツでは子供から大人まで大人気のメニューです。
とんかつの起源は「シュニッツェル」?
ドイツ料理の「シュニッツェル」は、日本の「とんかつ」と似ている料理でもあります。
とんかつのルーツは西洋から伝わった「カツレツ」です。そのため、とんかつはドイツの「シュニッツェル」から伝わった料理なのではないかと疑問に思われるのではないでしょうか?
しかし、シュニッツェルが日本のとんかつに影響を与えたという歴史はありません。シュニッツェルの起源は定かではありませんが、15世紀に北イタリアからウィーンに伝わったと言われています。
一方でとんかつのルーツは、明治時代にフランスから伝わった「コートレット」です。
コートレットは、仔牛や羊、豚などの肉にパン粉の衣をつけて炒め焼きするフランス料理です。コートレットを英語読みすると「カットレット(cutlet)」になり、日本では「カツレツ」と呼ばれるようになりました。
当時豚肉を使ったカツレツは「ポークカツレツ」と呼ばれていました。その後「ポーク」を日本語で「豚(とん)」と訳されるようになったことから「トンカツ」という名前が広まっていったとされています。また、調理法も日本のアレンジが加えられていったため、カツレツとはまた別の料理として有名になっていきました。
とんかつとシュニッツェルの違い
日本では西洋から伝わったカツレツを和風にアレンジした物がとんかつと言われるようになり、今では日本を代表するソウルフードになりました。
シュニッツェルととんかつの起源は異なりますが、サクサクとした衣がついた肉料理という点では一致していますね。
しかし、双方には異なる点もいくつかあります。ここからは、とんかつとシュニッツェルの6つの違いについて紹介していきます。
肉は豚肉に限らない
とんかつにはよく豚肉が使用されますが、シュニッツェルには仔牛肉を使用するのが一般的になります。
シュニッツェルはドイツに限らず様々な国で食べられているので、アヒル肉や鶏肉などを使用する場合もあるようです。
ハンマーで肉を薄く伸ばす
下ごしらえに肉をハンマーでたたいて薄く伸ばすのがシュニッツェルの基本となります。ハンマーでたたくことで筋に切れ目が入り、肉が柔らかくなるのです。肉の厚みが重要となるとんかつとは真逆の発想で驚きますね。
ドイツでは肉を薄くするための専用ハンマーがスーパーやデパートで販売されています。ハンマーは表面がデコボコした突起状になっておりずっしりした重みがあります。女性もこのハンマーを使用して下ごしらえするのが当たり前なので、とんかつを作るよりも大変であるのは間違いありませんね。
きめ細かいパン粉を使用
シュニッツェルにはきめ細かいパン粉が使用されているので、とんかつのようなサクサク感とは違い、しっとりとした仕上がりになります。ドイツのパン粉は味なしやパンを焼かずに作った物など何種類かありますが、基本的にきめ細かくサラサラです。
最近では日本のパン粉が人気になっており、現地のスーパーで「PANKO」という名前で販売されるようになりました。これは日本食レストランなどで使用されている日本のパン粉に影響され、サクサク感を好むドイツ人が増えたことで需要が高まったからと予想されます。
油で揚げずにフライパンの上で焼く
シュニッツェルは油で揚げずバターやひまわり油、オリーブオイルをしいたフライパンの上で焼きます。油を大量に使用するとんかつと違い、油を高温にする手間や油の後処理などの時間がかからないシュニッツェルの方が作る人には簡単かもしれません。
とんかつの倍以上の大きさ
ドイツで提供されているシュニッツェルは、とんかつの倍の大きさになります。1人分の注文でも巨大なシュニッツェルと大量のフライドポテトが出されますが、ドイツ人はペロリと食べてしまうので驚きです。大きさはありますが肉の厚みがあまりないのでそこまで重たくないのでしょう。
味付けはレモン汁か甘いジャムが定番
シュニッツェルは味付けにレモンを搾るのが普通ですが、ベリー系のソースをかけて食べるのも定番です。
ベリー系のソースには、ラズベリーなどの甘いソースや少し甘酸っぱいクランベリーソースが使用されることが多くあります。
とんかつはドイツで食べられている?
「シュニッツェルが定番のドイツでとんかつは人気があるのだろうか」と疑問に思う方もいるでしょう。
実際、現地にある日本食レストランでは、とんかつが大人気メニューとなっておりドイツ人にも好評です。シュニッツェルとは違いサクサクな衣に分厚い肉を使用しているとんかつは、ジューシーな食感で好きになる人が多いのです。ドイツ人のほとんどが肉料理や油で揚げたハイカロリーな食べ物を好んで食べるので、とんかつはドイツ人に好まれる食べ物と言えるでしょう。
まとめ
シュニッツェルはドイツを代表する料理です。使用する材料について規則が設けられるほどなので、シュニッツェルがどれだけ愛されている料理なのかわかりますね。
またシュニッツェルは日本のとんかつと似ている料理ではありますが、肉の分厚さや味付けなど、異なる点もいくつかあります。
しかしシュニッツェルに慣れ親しんだドイツ人にも、とんかつは受け入れられています。今後とんかつは「日本版シュニッツェル」として、ますますドイツで広まっていくのではないでしょうか。