高品質と多様な種類が魅力!日本産いちごがアジア圏を中心に人気を獲得

日本でもおいしいと定評のある日本産いちごが今、海外から人気を集めています。
外国人が自国のいちごと日本産いちごを比べてみると、品質や品種が違うことから味にも違いが感じられるようです。
日本産いちごの輸出状況は、果物全体の輸出量にも影響を与えつつあります。
今回は、日本産いちごの輸出が伸びている理由と、日本政府および各県の取り組みについてご紹介します。
日本産いちごの輸出状況
ここでは、日本産いちごの輸出状況について詳しく解説していきます。
輸出状況
財務省の貿易統計によれば、2013年にはわずか126トンであったいちごの輸出量が、2023年には2,056トンにまで増えているとのことです。
つまり、ここ10年ほどでいちごの輸出量が20倍に増加しており、輸出額についても2013年と比較すると26倍となっています。
日本産いちごには多くの品種があることが、輸出状況にこのような大きな変化をもたらしている理由のようです。特に、大粒の品種である「あまおう」が海外で人気が出たことをきっかけに、他の品種のいちごも徐々に知られるようになりました。
輸出先

このグラフからもわかるように、日本産いちごの主な輸出国はアジアにある国々です。その中でも香港が圧倒的に多く、次いで台湾、シンガポール、タイと続きます。
最近では、日本産いちごが家庭でのぜいたく品として重宝され始めており、富裕層から一般家庭まで広く浸透しているようです。
現状の日本産いちごの販路は百貨店やスーパーマーケットなどの小売がほとんどですが、今後はレストランやカフェなど、外食産業への展開も期待されています。
日本のいちごはなぜ各国で人気?
日本産いちごが海外で人気を得ている背景には、日本におけるいちごの消費量の高さがあるようです。
いちごは世界中で食べられていますが、いちごの消費量が最も多いのは日本だといわれています。
いちごの消費量が多いということは、消費者のいちごへの関心が高いことを意味します。そのため国内での競争が激しくなり、生産者たちはいちごの甘さやジューシーさを向上させてきました。
そうして日本各地でいちごの品種改良が行われた結果、個性あるいちごが各地で誕生し、その品種の数は現在約300種にのぼります。
いちごの主な生産地である宮城県、栃木県、山梨県、熊本県などでは、ご当地ブランドとしていちごが一役買っていることも事実です。
味や品質の良いいちごが開発され続けてきた結果、日本産のいちごは海外でも高く評価されるに至ったのです。
いちごの輸出拡大のための国や各県の取り組み
日本産いちごのさらなる輸出拡大に向けて、日本政府やいちごの主産地である各県では、さまざまな取り組みが行われています。
農林水産省

いちごを含む日本産果実の輸出拡大を図る目的で、農林水産省は日本産果実マークを作成しました。「JAPANESE FRUIT」と書かれたこのマークを日本産果実に付けることで、簡単に他国産との見分けがつくようになります。
実は日本産果実マークは日本だけでなく、香港や台湾、シンガポールなど26か国でも商標登録されています(2024年2月時点)。
日本産果実であることを示すブランドマークといえば、農林水産省の日本産果実マークと言っても過言ではないでしょう。
日本産果実マークがあることで、日本産と見分けがつくため、手に取ってもらいやすくなることが考えられます。
宮城県
宮城県は、東北地方でトップのいちご生産地です。更なるいちごの輸出拡大を図るために宮城県が始めたのが輸出相手国を増やすことでした。
2023年1月に始まった宮城県のいちごの輸出ですが、当初の輸出相手国はタイのみでした。その後、香港、シンガポール、マレーシアの3か国が加わり、現在では合計4か国となりました。
2023年5月の出荷実績では、当初は9,600パックの輸出計画であったのに対し、最終的には16,000パックが輸出されたことが報告されています。
この事業に携わる株式会社アライドコーポレーションは、今後も海外販売店へのアピールに力を入れる方針で、その一環として宮城県産いちごの促進動画を100本作成することを目標に掲げています。
栃木県
人口が多い首都圏に位置する栃木県でも、いちごの生産が盛んに行われています。
栃木県はいちごの品種開発にも力を注ぎ、家庭向けの「とちあいか」、業務向けの「とちおとめ」、夏にも食べられる「なつおとめ」など、10品種のいちごの生産を行っています。
これらの品種の中でも、「とちあいか」は粒が大きく、際立った甘さとまろやかな味に定評があるようです。
栃木県農政部経済流通課の報告によれば、2023年のいちご輸出額は2,892万円に達し、前年度と比較して117%増加となっています。栃木県の主な輸出国はタイ、シンガポール、香港の3か国です。
山梨県
日照量が多く、朝と夜の温度差が大きい山梨県の気候は、いちごの生産に適した場所です。
山梨県では、日本産青果物の生産から販売までの流れを一貫して行う企業による新たな取り組みが行われています。
この事業を展開しているのが、東京に本社を構える株式会社日本農業で、その子会社のジャパンストロベリー株式会社が本輸出を行っています。山梨県南アルプス市で栽培されたいちごを収穫・梱包したあと、約80kmの距離を陸路で運び、成田国際空港から台湾へ航路輸送する流れです。
台湾の残留農薬基準は日本よりも厳しいため、適切な農薬を選んだり、農薬の使用量を少なくしたりすることで、台湾に輸出できる基準を満たしています。
熊本県
熊本県には2015年に誕生した「ゆうべに」という独自ブランドのいちごがあります。きれいな円錐形で、香りが強いのがゆうべにの特徴です。
2025年1月、JA熊本経済連は熊本空港から香港へ向けてゆうべにを航路輸送するという初の試みを行いました。これまでは、東京や福岡といった県外空港を農産物の輸送に利用していましたが、熊本空港の国際便増加にともない、本格導入を目指します。
熊本空港のような生産地近くの空港を使うことで、現地により早く届けられることや輸送コストの削減、現在問題となっているトラックドライバー不足にも対処できるメリットがあります。
2024年12月にフィリピン向けのいちご輸出がスタート
2024年12月15日、フィリピンへの日本産いちごの輸出が解禁されました。それまでフィリピン政府は、日本産いちごにショウジョウバエ科の一種の病害虫が発生したことを理由に、日本からの輸入に対し禁止処置をとる状況が続いていたのです。
この状況を打破しようと、農林水産省はフィリピンの検疫当局と協議を重ね、いくつかの検疫条件を満たす場合には、輸出可能とする合意に至りました。
広大なストロベリー農場があるフィリピンでは、いちごは国民に親しまれている果物のようです。今回の輸出解禁を受けて、ますます日本産いちごの需要が伸びることが予想されます。
まとめ
日本では、これまで継続的な研究を重ねたことから多くの新品種のいちごが誕生しています。さらに、これらのいちごは高品質であることから、海外からの注目を集めていることも事実です。
日本産いちごの主な輸出先は、香港や台湾、シンガポール、タイなどのアジア諸国が多く、その輸出量は増加の一途をたどっています。
日本産いちごのさらなる輸出拡大を図るために、農林水産省と主な生産地の宮城県、栃木県、山梨県、熊本県ではさまざまな取り組みを行っていることもわかりました。
この状況に加えて、フィリピン向けの日本産いちごの輸出が解禁されたことから、今後はさらに需要が伸びていくことが期待されています。