清涼飲料水の輸出実績と今後の展望

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炭酸飲料や缶コーヒーなど多くの種類がある日本の清涼飲料水は、世界各国へ輸出されています。日本で製造された清涼飲料水は品質が高いと評価され、現在世界中で人気を集めているようです。

しかしながら、輸出相手国によっては独自の規制が敷かれ、輸出したくてもそれが難しい国があるのは事実です。

今回は、日本の清涼飲料水の輸出をテーマにご紹介していきます。内容としては2020年〜2023年までの輸出実績、各国の輸出規制、清涼飲料水輸出における今後の展望について解説します。

2020年〜2021年の清涼飲料水の輸出額推移

出典:大阪税関「清涼飲料水の輸出」

農林水産省の報告によれば、2020年は清涼飲料水の輸出額が342.6億円となり、過去最高の金額となりました。

そのうちの約63.7%はアジア向けに輸出され、輸出相手国の第1位は中国、第2位と第3位は香港と台湾があとに続きます。

中国では近年、回転寿司レストランが増加傾向にあり、日本の清涼飲料水を提供する機会が増えたことが背景にあるようです。

そして、翌年2021年には清涼飲料水の輸出額は前年度よりさらに増え、405.8億円を記録しました。2021年最大の輸出相手国は、前年度と同じ中国でした。

他にも、ベトナムやEU向けの輸出に伸びが見られたのが2021年の特徴です。

参考:農林水産省 輸出・国際局 輸出企画課「2021年農林水産物・食品の輸出実績(品目別)」

2022年清涼飲料水の輸出額実績

出典:農林水産省輸出・国際局「2022年1ー12月 農林水産物・食品の輸出額」

2022年1年間の清涼飲料水の輸出額は約482億円、これを2021年1年間の輸出額と比較すると約18.8%の増加となります。

また、2022年12月単月での輸出額は約41億円であり、2021年同月と比べてみると約5.7%増えています。

2022年に清涼飲料水の輸出が高まりを見せた理由は、アメリカ向けの輸出が増えたためです。

コロナパンデミック後、アメリカでは国民の健康意識が高まった結果、日本の緑茶に注目が集まりました。

海外の緑茶といえば、砂糖が入った甘い緑茶が主流ですが、日本の緑茶は砂糖が入っていないため、健康的な飲料として多くのアメリカ人に受け入れられたようです。

2023年清涼飲料水の輸出額実績

出典:農林水産省輸出・国際局「2023年1ー6月 農林水産物・食品の輸出額」

2023年1〜6月の清涼飲料水の輸出額は約272億円と報告されており、前年度の同期と比べて約23.5%増加となりました。

また、前年度の6月単月と比較した場合では約32.4%増加しており、その輸出額は約58億円にまでのぼりました。

清涼飲料水の輸出額が増えた背景としては、中国での需要が高まったことが考えられます。

中国を含めコロナパンデミックが落ち着きをみせ、外出の機会が増えたことや消費者の健康意識の高まりにより、日本の健康系飲料に注目が集まっているようです。

清涼飲料水の輸出規制

海外では、日本の清涼飲料水の需要が年々高まっていることがわかりました。しかしながら、輸出相手国には輸出規制が設けられている場合もあります。

ここでは、中国・台湾・米国・中東それぞれの輸出規制について解説します。

中国

2023年8月、日本政府は福島第一原子力発電所に蓄積されていた処理水の放水開始を決めました。

これを受けて中国政府は、福島・茨城・群馬・千葉・長野・宮城・栃木・埼玉・東京・新潟の10都県を産地とするすべての食品の輸入停止を行うことを発表しました。

そして、上記10都県以外で生産された食品であっても、そのことを証明するための「産地証明書」の提出が求められます。

ここで留意すべき点は産地だけではなく、先述の10都県が運送ルートに含まれていないことも条件となります。輸出港へのルートも規制の対象となるため、輸出時の経路確認は必須です。

台湾

台湾においても、日本の処理水放水に対する輸入規制が行われています。ただ、中国とは異なり10都県ではなく、千葉・群馬・福島・茨城・栃木の5県で生産された食品に対して、台湾政府は放射性物質検査報告書と産地証明書の提示を求めています。

上記5県以外を産地とする場合であっても、産地証明書の発行は行わなければなりません。

もし台湾側の水際検査において放射性物質が検出されることがあれば、その結果を衛生福利部食品薬物管理署の公式ホームページに掲載することを台湾政府は発表しています。

米国

2021年9月22日、米国食品医薬品局(FDA)は日本産の食品に対する輸入規制を撤廃することを発表しました。この規制は、福島第一原子力発電所の事故以降から施行されていましたが、科学的根拠にもとづいて輸出可能になりました。

輸入規制は無くなりましたが、日本から輸出される清涼飲料水には「FDA食品施設登録」と「FDA向け事前通知」と呼ばれる登録・通知が必要です。

登録については、バイオテロ法に従って米国内で食品を製造・加工・梱包・保管をする施設保有者・経営者は、FDAに食品施設を事前登録しなければいけません。

また、輸出前の事前通知は米国内の食品の安全性を保持し、米国民を守る目的で行われています。

中東

アラブ首長国連邦においても米国と同様に、福島第一原子力発電所事故による輸入規制を撤廃しました。

しかし、清涼飲料水を輸出する際には、湾岸協力会議(GCC)または連邦レベルで規定されているサイズを満たしていることが条件です。

また、炭酸飲料・人工フレーバー飲料・エネルギードリンクなどのそれぞれに対して、技術規格が設けられています。

さらに、エネルギードリンクの輸出には適合性評価の手続きを行い、適合性認証(ECAS)の発行を受けることが求められます。

これからの清涼飲料水輸出

ここでは、清涼飲料水の輸出が今後どう発展していくのかについて解説します。日本政府は現在、中東に向けて清涼飲料水の輸出拡大戦略を立てているところです。

ハラール認証

世界中で日本の清涼飲料水の需要が高まる中、イスラム圏への輸出も増加しています。

イスラム圏では基本的にハラール認証が必要となるため、清涼飲料水についてもハラール対応が必須です。

出典:一般社団法人ハラル・ジャパン協会 公式ホームページ

広島県尾道市にある柑橘類の加工・販売を手がける丸松株式会社では、すでにハラール認証を取得した「濃い旬搾りみかん」というジュースを輸出しています。

このみかんジュースの主な輸出相手国は、イスラム教徒人口が多いマレーシアでしたが、アラブ首長国連邦やシンガポールなどからも問い合わせがあるようです。

中東向け

日本の清涼飲料水の輸出額は2013年以降、中東で大きく増加しており、主な輸出先はトルコ・アラブ首長国連邦・カタール・サウジアラビアの4カ国です。清涼飲料水の中でも、特に炭酸飲料は幅広い年代に人気があるようです。

さらなる輸出額の拡大を図るためには、それぞれの国のニーズに合った商品を考える必要があります。

ハラール対応はトルコ・アラブ首長国連邦・カタール・サウジアラビアの4カ国への輸出に求められます。そのなかでもサウジアラビアでは、特にアルコールが厳禁です。

また、アラブ首長国連邦以外の国においては、日本食レストランの数がまだ少ない傾向にあります。今後は見本市や日本食材を紹介するイベントなどに積極的に参加して、清涼飲料水を含む日本食品をアピールする必要がありそうです。

まとめ

今回は、日本の清涼飲料水の輸出について詳しく解説しました。

清涼飲料水の輸出額は年々増加しており、その背景には人々の健康志向の高まりや日本製品への信頼があることがわかりました。

しかしながら、中国・台湾・米国・中東などでは現在も輸出規制が設けられており、事前の登録や通知が必要な場合があることに留意しなければいけません。

清涼飲料水の今後の展望としては、ハラール認証を目指した商品開発や中東向けの輸出拡大が挙げられます。現在、日本政府もこれらを輸出拡大戦略の一環としています。

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