海外の原料原産地表示制度を知る 韓国、EU、オーストラリア、アメリカの制度・運用方法

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加工食品のラベルには、さまざまな情報が記載されていますが、中でも、原材料名の表示は大きな意味を持ちます。数多くの原材料が表示され、原産地が表示されているものもあります。消費者の視点では、購入を判断する重要な材料にもなり得る情報とも言えます。

こういった表示のことを「原料原産地表示」と言います。少し前までは目にすることがなかった原料原産地表示ですが、日本だけでなく、食品の輸出先として身近でもある海外の事例をまじえ、詳しく見ていきます。

原料原産地表示制度を知る

2017年9月1日に施行された食品表示基準の改正により、わが国でも、国内で製造されたすべての加工食品に対し、原料原産地を表示することが義務化されました。経過措置は2022年3月で終了しており、記事の執筆時点では既に原料原産地表示に対応する必要があります。

原料原産地表示とは、加工食品の製造にあたり使用された原材料について、その原産地を表示することを言います。表示するべき原材料が生鮮食品の場合と、加工食品の場合とでは扱いが異なり、前者はその産地が、後者は製造地が表示されます。

この制度の施行により、消費者側は購入おける判断材料が増えますが、メリットが及ぶのは消費者だけではありません。加工食品の製造会社や小売店などの販売者にとっても、商品の安定供給への取り組みなどが消費者に見えやすくなりますので、評価を高めることにもつながります。

日本における原料原産地表示制度の運用

実際に、この制度がどのように運用されるのかを見ていきます。まず、対象となるのは国内で製造した加工食品のみであり、輸入した加工食品はこの改正では対象となっていません。ただし、輸入した加工食品には原産国名が表示されます。

また、原産国の表示義務があるのは、使用されている原材料のうち、重量ベースで一番多く使われているものとなります。二位以下の原材料については表示義務はありませんが、自主的に表示することが望ましいとされています。

表示の対象は国内で製造された加工食品となっていますが、スーパーマーケット等の小売店で調理された惣菜や、レストラン等で提供される料理に関しては対象に含まれていません。店舗のスタッフ等に原材料の原産地を確認することが容易である、という理由です。

なお、原産地の表示方法はかなり柔軟性を持たせたものになっています。これは原材料の調達先が一カ国に限らないケースがあることが理由ですが、国産か輸入かという観点では、比較的厳密な決め方がされています。

海外の原料原産地表示制度

日本でもようやく定着してきた原料原産地表示制度ですが、国外における導入状況も気になります。先進国であり貿易相手としても重要性が高い韓国、EU加盟国、オーストラリア、アメリカについてそれぞれ具体的に見ていきます。

韓国

韓国における原料原産地表示制度の導入は日本より早く、2016年時点で、加工食品の原料原産地表示制度は既に施行されていました。対象品目は、加工食品ほぼ全般にわたっています。

原産地表示は日本と同様で、国産原料については国産、輸入原料については原産国名を表示することとなっています。遠洋産水産物に関しては「遠洋産」という記載を行います。表示例を以下に示します。

出典:消費者庁・農林水産省「海外の原料原産地表示制度

韓国の制度は、日本と違う点もいくつかあります。まず、表示の対象は重量割合で上位二位までのものであり、日本の「一番多く使っている原材料」より一歩踏み込んだ形になっています。商品名に強調表示した原材料についても、原産地を表示する必要があります。

原産地が二カ国以上ある場合の記載方法も、日本のものとは違っています。割合の多い順に記載することとなっているのは日本と同じですが、韓国の場合は上位二カ国について、原産地だけでなく混合割合を示すことが求められています。

日本では表示対象としない中間加工品が原材料の場合ですが、それが輸入品の場合、韓国では中間加工地の表示が必要とされています。中間加工地が国内の場合は、原材料の生産地を表示する必要がありますが、輸入の場合は生産原材料の産地表示までは求められていません。これも、日本に比べると厳しいルールであると言えるでしょう。

同一の原料について、原産国が複数ある場合の表示は難しい面も多く、日本でも柔軟性を持たせた記載が認められています。韓国でもそれは同様ですが、ホームページなどに原産地情報を公開した上で、URLやバーコード等、その情報にアクセスできるようにすることで「外国産(国家名は○○に別途表示)」と記載することが認められています。

IT大国である韓国らしい運用とも言えるでしょう。これにより、原産国情報の表示がより明確になりますから、消費者の安心感が増すだけでなく、企業の取り組みも評価されることになるでしょう。

EU加盟国

EU加盟国における原料原産地表示制度は、2015年4月から実施されています。日本や韓国と比較した場合、対象となる品目は限られています。後述するオーストラリアとあわせ、表示例を以下に示します。

出典:消費者庁・農林水産省「海外の原料原産地表示制度

まず、オリーブオイルです。オリーブを絞ってオリーブオイルに加工した場所はもちろん、使用されたオリーブがどこで収穫されたのかを示すことが求められています。

有機食品も、原料原産地表示制度の対象となっています。有機食品を構成する農産材料の生産地については、EU加盟国での生産か、第三国での生産かを区別して記載する必要があります。国名表示は、すべてが特定の国で生産されたものであった場合に可能となります。

これら以外には、原産地の表示を行わなかった場合に消費者の誤解を招くおそれがある製品が、原料原産地表示制度の対象となります。

オーストラリア

オーストラリアでは、すべての食品において加工あるいは包装が行われた国の表示が義務付けられています。原料についても、原産国または「輸入された」ものであるという表示を実施する必要があります。

表示規則についても細かな決まりがあります。まず製造を意味する「Made in」あるいは「Manufactured in」の表示が認められるのは、その国で製品に対しての実質的な変更が加えられた場合に限定されます。

生産といった意味あいが強くなる「Product of」「Produced in」「Produce of」の表示に関しては、産品の主成分の大部分が原産地とされる国で産出されていること、製造工程のすべてが原産国とされる国で実施されていることが条件となります。

アメリカ

アメリカでは、原料原産地表示を行う義務はありません。ただし、輸入食品に関しては原産国を表示する必要があります。

具体的には、食品の製造を行った国について、最終購買者が認識しやすく、かつ消えない形で記載する必要があります。日本で製造した食品には「Made in Japan」といった形で記載されます。

まとめ

日本および、日本と関係の深い各国における原料原産地表示制度を見てきました。これを見ると日本の制度は、要求水準の高い韓国の制度に近く、EU加盟国やオーストラリア等と比較したときに、大きな差を感じるのではないでしょうか。

とはいえ、今後加工食品における原料原産地表示への要求が高まった場合、先進的とも言える制度を持っていることは強みとなります。国内向けの製品に関しては原材料の原産地を把握しているわけですから、輸入相手国がこういった情報を要求していても、対応は難しいことではありません。

魅力的な日本の食品を各国の消費者に届けていくためにも、こういった制度についての情報収集は、大切であると言えそうです。

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