パリのリヨン駅で駅弁が販売 大館名物「花膳」の鶏めし弁当が大人気に

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日本で駅弁と言えば、電車の乗客向けに販売されている弁当のことを指します。駅弁とお茶を車内に持ち込んで、弁当を食べながら流れる景色を眺めるのも旅の楽しみの一つです。

駅弁は日本生まれですが、最近フランスでも販売され始めたようです。フランスでは、すでに日本の弁当文化が定着しており、これに加えて日本の駅弁人気が出始めています。

そこで、今回は「フランスでの弁当文化と駅弁事情」「フランスで人気がある駅弁とは?」、そして「駅弁がブームになった理由」についてご紹介していきます。

弁当だけじゃない!フランスでも駅弁が買える?

2021年11月より、フランスでも駅弁が買えるようになりました。ただ、どこの駅にでも置いてあるわけではなく、パリのリヨン駅(Paris Gare de Lyon)で購入できます。

このリヨン駅は、そびえ立つ時計台がある有名な駅で、地中海方面へ行く電車の出発地としても知られています。パリの主要な駅の一つ、リヨン駅で駅弁が売られていることは、たくさんの人の目に触れる機会があり、立地的にはとても良い場所と言えます。

「駅弁(Ekiben)」という言葉は、フランスではまだ真新しいのですが、もともと「弁当(Bento)」という言葉はフランス人の間で浸透していました。この弁当文化が特に見られる場所は、パリのオペラ地区です。この地区には、日本食レストランが数多く存在し、様々な弁当が売られています。

例えば、オペラ地区にある「アキ ブーランジェリー(Aki Boulangerie)」というお店では、日本のパンコーナーの隣に、弁当コーナーを設けています。弁当の種類としては、唐揚げ弁当・おにぎり弁当・とんかつ弁当などがあり、日本でも人気のある弁当がそろっています。

他にも、同じオペラ地区に「十時や(Juji-ya)」という弁当屋さんがあります。ここは1995年から創業している老舗で、弁当だけでなく、お惣菜も販売しています。お弁当の種類には唐揚げ弁当やサケ弁当、エビフライ弁当などがあり、お惣菜にはだし巻き卵や煮物など日本の味をパリでしっかりと再現しているお店です。

このことから、パリの中心地であるオペラ地区においても日本食の認知度が高いことがわかります。

人気の駅弁は?

フランスで人気の弁当は、唐揚げ弁当だと言えますが、人気の駅弁となればやはり「鶏めし」です。

この大人気となった鶏めしを買える場所が、前述したパリのリヨン駅です。お店の名前は「1899 ToriMeshi」。看板メニューが「鶏めし弁当」で、日本でも有名な駅弁の老舗「花膳」が提供しています。

花膳は秋田県にある1899年創業の歴史ある弁当屋で、日本でも数々の賞をもらっています。鶏めしに使われているお米は、秋田県産の「秋田こまち」です。もちろん、リヨン駅で売られている鶏めしにも同じお米が使われています。

この美味しいお米を花膳秘伝のスープで炊き込み、その炊き込みご飯の上に、甘辛く煮た鶏もも肉をのせ、炒り卵を添えれば鶏めし弁当の完成です。炊き込みご飯は冷めても味が変わらないように工夫が施されています。

この鶏めし弁当は、日本の味をそのまま提供していますが、フランス風にアレンジが加えられている弁当もあります。それは、日替わり弁当です。例えば、焼き魚に少しスパイスを効かせたアボガドクリームを添え、フランス人が好む味に仕上げて販売しています。

1899 ToriMeshiでは弁当だけでなく、秋田県の中学校と協力・開発した「駅弁に合うお茶」も販売しており、本物の日本の味をフランスに届けています。

フランスで駅弁がブームになった理由

日本の老舗「花膳」のパリ出店のおかげで、フランスで駅弁の認知度が上がっているのは事実です。では、なぜフランスで駅弁がすんなり受け入れられたのでしょうか?その考えられる理由には、大きく3つあります。

駅弁ブームが起こった理由① 弁当文化の浸透

最初にご紹介したように、フランスでは駅弁が流行する以前から弁当文化が浸透していました。

そのためフランス人は、ランチボックスに入ったご飯と日本の味に慣れていたことは間違えありません。こう考えると、鶏めし弁当がフランスで受け入れられるのも容易なことです。

また別の背景としては、もともとフランス人のランチを持参する文化が大きく影響していると考えられます。フランスでのランチ事情を説明すると、ほとんどの人がサンドイッチやバゲットなど本当にシンプルなランチを食べています。

こうなったのは、ここ最近の不景気も影響しているようですが、現状でのフランス人が摂るランチは、品数が少なく、短時間で済ませてしまうのが主流となっています。これに比べて日本の駅弁は、品数が多いことに注目が集まりました。

花膳が提供する鶏めし弁当にも、実は鶏めしだけではなく、副菜として金平ごぼうやヒジキの煮物も入っています。駅弁は見た目も鮮やかで、フランスのシンプルなランチと比べると栄養も豊富なことがわかります。

この品数の多さと栄養価の高さも駅弁ブームが起こった理由と言えますが、その背景にはフランス人の食事に対する考え方も影響しているようです。このことについては、次に説明していきます。

駅弁ブームが起こった理由② フランス人のヘルシー志向

2019年に民間調査会社オドクサ(Odoxa)が行ったアンケート結果によると、フランス人の約80%が病気を予防するために日頃の健康に気をつけていると答えました。具体的には、食事と運動を意識している傾向にあるようです。

海外で「日本食」と言えば、健康的な食事という認識が高いのは事実です。もちろんフランスも例外ではなく、パリにおける日本食レストランの数も日本食の人気度を表しています。

健康でありたいと願うフランス人にとって、様々な食材が詰まった駅弁は、健康食そのものなのでしょう。

駅弁ブームが起こった理由③ 日本文化への高い関心

一般的に、フランスには親日派が多いと言われています。その証拠に、フランスでは毎年JAPAN EXPOという日本文化を発信するイベントが開催されていますが、その参加者数は24万人を超えるとも言われています。

そして、日本のサブカルチャーであるアニメがフランスで絶大な人気を集めていることも、今回ご紹介した駅弁人気に影響している可能性があります。その理由は、アニメの設定が日本の学校であることが多いためです。

学校のランチタイムの場面では、お母さんが作ってくれた弁当が登場することが多く、アニメを通じて日本の弁当の存在を知ったフランス人も多いようです。アニメの主人公が美味しそうに弁当を食べることも、フランスの弁当文化を助長し、現在の駅弁ブームを引き起こしたとも言えるのかもしれません。

まとめ

今回は、フランスでの弁当文化を基盤とした駅弁ブームについてご紹介しました。

もともとパリでは弁当文化が長く続いており、2021年からはパリのリヨン駅で日本の駅弁を購入できるようになりました。そのリヨン駅で人気の駅弁は、秋田県にある老舗の弁当屋「花膳」が手がける「鶏めし弁当」です。花膳がこだわり続けた味は、日本人だけでなく、フランス人にも受け入れられています。

そして、フランスで駅弁ブームが起こった理由として、「フランスに長く根付く弁当文化」「フランス人の持つヘルシー志向」「日本文化への関心の高さ」の3つを挙げました。

結局は、フランス人が日本文化に対して好感度を持ってくれていることが駅弁人気にもつながっているようです。日本の本物の味、花膳が手がける駅弁は、これから少しずつフランス全土に広まっていくことでしょう。

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