インドでカレーの逆輸入、「カレーハウスCoCo壱番屋」「ボンカレー」が進出 今後の日本食の可能性も期待

近年では、カレーの本場であるインドに日本のカレー店が進出していると言われていますが、果たして本当なのでしょうか?

そこでこの記事では、インドに日本のカレーが進出しているのは本当なのか、インド人の日本のカレーに対する評判や日本とインドのカレーの違い、インドでの日本食の可能性について解説していきます。

インドに日本のカレーが進出している?

ここ数年、日本のカレーをカレーの本場であるインドに広めようとする企業や個人経営者が増えています。

インドにある日本料理店では、小麦粉でとろみをつけた日本のカレーがメニューに登場し、日本では知らない人はいないほど知られているカレーチェーン「カレーハウスCoCo壱番屋」は、2020年にインドの首都ニューデリーに1号店をオープンしています。

また、世界で初めてレトルトカレーの「ボンカレー」を市販したことで知られている大塚食品は、2018年に「ボンカレーのカレーパン」の販売をインドで始めました。

インドのカレーと日本のカレーの違い

日本のカレーとインドのカレーには違いがいくつもあります。そのため、インド人からすると、日本のカレーはインドのカレーと全く別のものと捉えるようです。

次からは、日本のカレーとインドのカレーの違いを見ていきましょう。

とろみ

日本のカレーとインドのカレーの最も大きな違いは、とろみ。日本のカレーは、小麦粉を炒めることによってとろみをつけているのでもったりとしていますが、インドのカレーにはとろみがありません。

実は、日本のカレーはインドではなくイギリスのカレーを参考に作られたと言われています。そもそも、日本でよく使われる「ルー」と言う言葉はフランス語で、煮込み料理やソースにとろみをつけるために小麦粉をバターで炒めたもののことを言います。

イギリスはインドを植民地としていた時代があり、当時のイギリス人がインドのカレーをヨーロッパ風にアレンジするためにルーを用いました。日本のカレーは、明治になってからイギリスのカレーが伝わってきたため、とろみがついているのです。

一緒に食べるもの

日本のカレーは一般的には白米と一緒に食べることが多いです。そのため、海外では「ライスカレー」と呼ばれます。

それに対してインドでは、米以外にさまざまな主食があります。「インドカレー」と聞くと「ナン」を思い浮かべるかもしれませんが、実は「ナン」は高級品であり、一般家庭ではほとんど食べられていません。

一般的に多く食べられる主食は、全粒粉と水、塩を使って焼いたパンや、揚げパンなどです。

また、パンだけでなくライスとも一緒に食べられます。しかし、日本のような丸みを帯びていて、もっちりと粘り気がある米ではなく、インドの米は、細長く炊き上がってもパラパラとしており、鍋に沸かしたお湯でバターや塩と一緒にゆでるのが特徴です。

インドのライスカレーは南インドで多く食べられており、香りが高く、インドの汁気の多いカレーによく合うとされています。

味付け

インドのカレーはニンニクやトマト、玉ねぎなどをベースとしたものに何種類ものスパイスを入れて作るので、とてもスパイシーです。

日本のカレーはルーを使いスパイスは多用されていないため、インド人の味覚では「日本のカレーは甘い、コクがない、物足りない」と感じる人もいるそうです。

インドで日本のカレーを広めるための工夫

インドで日本のカレーは、自分たちが普段食べているカレーとは全く違うものとして受け入れられています。

日本のカレーがインド人に受け入れられるよう、日本の企業はどのような工夫をしているのでしょうか?

ベジタリアン対策をしている

インドでは、宗教上の理由から人口の約6割がベジタリアンです。日本のカレーは牛・豚・鳥肉などの動物性原料を使ってうまみやコクを出しているため、インドで提供する際には、動物性原料以外の食材を使って日本のカレーのコクやうまみを出す工夫がなされています。

ポイントは、「サクサク感」「スパイシー」「オイリー」の3つ。インド人はこの3つのポイントを抑えたものが好きなので、非ベジタリアンに対してはサクサクに揚げたチキンを乗せたカレーを用意する、ベジタリアンには肉を使わないチーズフライを用意する、ルーに動物性の油脂やエキスを使わない、などのメニューを用意しています。

また、野菜やハーブを煮込んだ自家製ソースを作ったり、隠し味にチョコレートを入れたりしてコクを出しているところもあります。

インド人にとってこのような日本のカレーは、自分たちが普段食べているカレーとは全く違うものだけれどおいしいもの、として受け入れられています。

辛さを感じることができるようにしている

インド人からすると、日本のカレーは甘く感じたり薄く感じたりする人が多いようです。そのため、トッピングで辛さを選べるようにするなどの工夫をしている店舗もあります。

反面、カレーハウスCoCo壱番屋のように、ベジタリアンメニューはあるものの、ジャポニカ米とルーを使った日本式カレーを提供して、日本のカレーの受け入れを図っているところもあります。

インドでの日本食の可能性

日本のカレーをはじめとして、日本食はインドで今後受け入れられていくのでしょうか?

以下の3点を考慮すると、受け入れは可能だと考えられます。

日本食に興味を持つことができるのか?

インドの食文化は保守的だと言われてきましたが、近年になって大きく変化している、と言われています。

海外旅行をする人が増えて外国の食文化に触れ、受け入れる人が増えてきたことや、インドでも糖尿病や肥満になる人が増え、ヘルシーなイメージがある日本食に興味を持つ人が増えてきたことなどが挙げられます。

健康志向が高い人や若者に受け入れられるか?

保守的な志向から抜け出せない年配者に比べ、若者は新しい料理も柔軟に受け入れることができるため、彼らに日本のカレーは「新しいがおいしい食べ物」だと認識されると、今後さらに広がっていく可能性が期待できます。

備蓄用としても受け入れられるか?

日本のレトルトカレーは動物性材料が使われています。動物性の油脂は融点が低いため、常温で食べることはできますが、舌触りがざらついたりすることがあります。

しかし、インドのベジタリアン対応カレーは、動物性材料が使われていないものがメインです。そのままでもおいしく食べることができるため、非常用の備蓄としても受け入れられる可能性があります。

まとめ

近年増えているインドへのカレーの逆輸入は、難しいように見えますが、確実に現地で受け入れられつつあります。

インドのカレーとは違う日本のカレーは「違っているけれどおいしいもの」とインドでは捉えられています。

日本の企業も、インド人が食べやすいようベジタリアン向けのメニューを開発するなどの工夫をこらしているので、これから受け入れがますます進むことが予想されます。

シェアする