たこ焼きが中国全土に拡大 上海万博の「たこ家道頓堀くくる」もブームの火付け役に
日本ではおなじみのたこ焼きが、中国でブームになっていると聞くと驚くかも知れません。
そこで今回は、たこ焼きはどのようにして中国に伝わり、広まっていったのかについて、説明していきます。そもそもたこ焼きとは何なのか、たこ焼きが人気を集めるようになった背景などもあわせ、見ていきましょう。
たこ焼きとは
たこ焼きは、日本人であれば知らない人はいないほど有名な日本の料理です。
たこ焼きが生まれたのは昭和10年(1935年)のことで、現在もなおたこ焼きの人気店として君臨する「会津屋」によるものです。大阪には、ラジオ焼きと呼ばれる球形をした粉もの料理がありました。明石の玉子焼き、いわゆる明石焼きの具材にタコが使われていると仄聞した会津屋の主人が、このラジオ焼きの具材にタコを入れたのがはじまりとなりました。
研究熱心な会津屋の主人により誕生したたこ焼きは、しょうゆ味で何もつけずに食べるものでした。現在のように、ソースをつけて食べる形が主流になったのは、1950年代以降の、中濃ソースやとんかつソースが普及してからとなります。
たこ焼きが中国に伝わった経緯
日本人に愛されているたこ焼きですが、今では国境を越えて中国でも人気を集めています。ここからは、たこ焼きが中国に伝わった経緯を見ていきましょう。
台湾発のたこ焼きが中国全土に広まる
中国本土では、比較的古い時期から日本式居酒屋のメニューにたこ焼きがありました。ただし、メジャーなものとは言い難く、日本居酒屋風のお店でたこ焼きを注文したところ、出てきたのはタコを焼いたものだった、といった逸話も残っています。
実際に中国本土でたこ焼きが広まったのは、台湾のチェーン店が進出してきた2000年以降のことになります。台湾で高い人気を誇ったたこ焼きは、中国本土でも支持を集めました。2010年頃までには、数多くの店舗が中国本土でも展開されています。
上海万博とその反響
このようにして、中国でもたこ焼きは人気を得ました。そんな中で、2010年に上海で開催された万国博覧会の日本産業館で提供された「たこ家道頓堀くくる」のたこ焼きは評判となり、日本国内よりもやや高値という価格設定にも関わらず、会期中に約500,000食を売り上げたのです。
その後、中国では海外旅行が盛んになります。短期の旅行先として高い人気を得ている日本旅行の最中に、大阪を訪れて本場のたこ焼きを食べに行くことを希望する人も多くなっており、「上海万博のあのたこ焼きをもう一度」という人も少なくありません。
中国におけるたこ焼きブームに、上海万博が果たした役割は大きかったと言えそうです。
なぜたこ焼きが中国で人気になったのか
中国でたこ焼きが人気になった背景には、3つの理由が考えられます。
中国の人々の味覚にマッチした
たこ焼きがブームとなったのは何と言っても、たこ焼きが中国の人々の味覚にマッチした、ということが挙げられます。その場で作られるたこ焼きは、手軽にあつあつのものを食べることが可能であるだけに、温かい食べ物を好む中国の人たちにとっても受け入れやすいものであった、ということは想像に難くありません。
また、中国本土で最初に広がったたこ焼きは、日本よりは中国人の味覚に近い台湾で実績を作り上げた会社によるものでした。この点も、中国本土の人たちがたこ焼きを受け入れやすかったことに貢献していると言えそうです。
日本発コンテンツの影響
日本から中国には、ドラマやアニメーション、コミックスなど数多くのコンテンツが輸出されています。劇中の描写にもたこ焼きを食べるシーンは登場しており、こういったところからもたこ焼きに興味を持つ人は少なくありません。
調理のエンターテインメント性
たこ焼きの魅力は、その味わいだけではありません。独特の形をした調理器具の上で、液状の溶いた小麦粉が球形に焼き上げられていく様子は、いわゆる「職人芸」として中国の人たちには非常に興味深く感じられるようです。
スマートフォンを片手に、焼き上げられていく様子と出来上がったたこ焼きを撮影してSNSにアップする人たちも少なくありません。自らたこ焼きの道具を購入し、それを用いてたこ焼きを焼き上げる様子をSNSにアップするような人も、若者を中心に登場しています。
中国のたこ焼きと日本のたこ焼きは同じ味なのか
中国でたこ焼きが人気になったのは「現地の人の味覚に合った」という理由が考えられます。実際に、中国でたこ焼きを広めたのは台湾のチェーン店でした。
それでは、中国で食べられているたこ焼きの味は日本の味と違うのでしょうか?
メジャーなものは、日本風とは言えない
中国本土のたこ焼きで、ポピュラーなのはやはり台湾のチェーン店が作るたこ焼きです。結論から言うと、こちらのたこ焼きの味は、日本で一般的に食べられているたこ焼きのそれとはかなり違っています。
まずは材料です。小麦粉とタコがベースになるのは一緒ですが、中国で一般的なたこ焼きにはキャベツが具材として使われています。もちろん中国でもしっかりしたタコが入っていますが、お店によっては、タコが入っていないたこ焼きという不可思議なものが出てくることがあります。
味付けも日本とは趣を異にします。台湾のたこ焼きの場合、フレーバーは2種類ありますが、その差はわさびの有無に過ぎません。マヨネーズも日本のものと違い甘口で、これは中国の人たちの好みにあわせたものでしょう。
食べてみれば、日本のたこ焼きとは異なるものである、ということは明白です。しかし日本のたこ焼きに慣れ親しんだ人でも、普通に美味しく食べることが可能です。発祥の地台湾だけでなく、中国本土でも広く支持されるのも不思議ではないと言えます。
本場日本の味へのあこがれもある
中国では、台湾のたこ焼きが本場日本のたこ焼きの味と考えている人も多くいます。しかし、2010年の上海万博に出店した「たこ家道頓堀くくる」の味を知っている人も少なくなく、コンピューター通信が発達した時代ですから「あれが本当の日本のたこ焼きである」という意見に触れる機会も増えています。
日本旅行の際に、大阪で本場のたこ焼きを食べたい。そう思う中国の人々は、決して少なくありません。とは言え、中国本土に日本から進出したたこ焼き店はまだまだ少なく、「たこ家道頓堀くくる」が上海を中心に数店舗展開しているのが目立つくらいです。
まとめ
中国においても、たこ焼きは高い人気を得ています。先行して店舗を展開している台湾のチェーン店は、主要な材料を台湾、一部を日本から空輸しており、そのことは中国内の後発業者に対する優位性を保つことにつながっています。
本場、日本の味を実現したたこ焼き店の進出はこれからになります。訪日旅行の際に「大阪でたこ焼きを食べたい」というニーズがかなり強いことから、成功する余地はあると考えることが可能でしょう。メインになるタコをはじめ、ソースやマヨネーズ、のりと言った味付けに欠かせない食材は、日本から運ぶことになりそうです。