【インドネシア】ハラール対応のラーメン人気が急上昇 日本の味も広がる
赤道直下を含む熱帯に位置するインドネシア。暑い国特有で、辛い料理が好まれる傾向にあります。また古くからスパイスの産地で、独特の食文化と食材を持つ国です。
そんなインドネシアでは、日本のラーメンが人気です。辛いものに慣れたインドネシアの人たちには、日本のラーメンはどのように受け入れられているのでしょうか。
今回はインドネシアの食文化を紹介しながら、日本のラーメンがどのように人気になっているのかについて解説していきます。
インドネシアの食事情「ハラール」
2019年の宗教省の統計によると、インドネシアのイスラム教徒の割合は国民の約9割(86.69%)を占めました。
インドネシアは、世界でもっともイスラム教徒の多い国です。
そのため、イスラム教における食事制限=ハラールが存在します。
ハラール(HALAL、ハラル)とは、「イスラム法で許された項目」という意味で、具体的には、物(食べ物、飲み物、化粧品)や、行為(約束、契約、仕事)などあらゆる項目が含まれます。
その中でも、食べ物・飲み物について許されているものが「ハラール食」です。
もっともポピュラーなハラール食での禁忌は、豚肉です。他の動物の肉も、ハラールで定められた方法で処理したものでないと、ハラール食と認められません。
イスラム教の人たちは基本的に豚肉を食べませんが、その他の食材にも規制があるため、「ハラール」であることを示した食材店で購入するのが一般的です。メインの食材だけでなく、原材料の中に含まれる豚エキスやラードなども禁止です。
この点は、イスラム教徒でない外国人、日本人には馴染みのない風習です。
ただしインドネシアでは、イスラム教は国家宗教ではありません。そのため、どの程度ハラールを守るかは個人による違いがあります。厳格にハラール食でないと食べない人、豚肉だけを避け他の動物は食べる人などが混在しているようです。
インドネシアで日本のラーメンが人気?
ハラールという食の制限はあるものの、インドネシアでは日本のラーメンに人気が集まっています。
インドネシアにラーメンがマッチする理由の1つは「暑い国」だからではないでしょうか?
日本では、暑い夏に冷たいそうめんや冷やし中華が食べたくなりますが、海外の暑い国では暑さに負けないよう、熱く辛いお料理や、熱い飲み物を楽しむことが一般的です。激辛ラーメンも、現地の人の舌にマッチします。
また、東南アジアには屋台文化がありますが、インドネシアもその1つです。どんぶり一皿で提供される気軽な庶民食ラーメンは、インドネシア人に受け入れられやすいのでしょう。
インスタントラーメンが大人気
昨今のインドネシアでは、食材や飲料もインスタントが増え、人気になっているようです。特に、ラーメンはお店で提供するメニューとしてだけでなく、インスタント麺も非常に多く、バリエーションにも個性があります。
またインドネシアでは、主食として即席めんが主流になっており、袋めんの消費量は即席めん市場全体の9割以上を占めています。
日本のインスタントラーメンの知名度は、インドネシア産のものと比べるとまだ高くありません。しかし、インドネシアではカップめんの消費量も増加中であるため、日本のインスタントラーメンにも大きな可能性があるかもしれません。
人気のラーメンの種類
インドネシアでは独自のラーメンが提供されています。
ハラール対応の製法、在住者や中国系の人たちをターゲットにした味、日本のラーメンそのものの味、さまざまなタイプの工夫を凝らしたラーメンが見られます。
その中から、人気のラーメンをご紹介します。
ハラールに合わせたラーメン
日本のラーメンが浸透しているのは、主に首都ジャカルタです。
ジャカルタのあるジャワ島では、特にイスラム教徒の比率が高くなっています。そのため、現地のインドネシア人にもラーメンを食べてもらうため、ハラールに対応した形に食材や調理法を変えて提供されています。
日本で人気のラーメンの多くは、豚骨出汁がほとんどですが、インドネシアでお肉やスープは、豚肉から鶏肉に変えたものが多いです。
中には海老など魚介系のスープを使ったラーメンもあります。また鶏ガラでも魚介でもなく、牛骨ラーメンも人気になっています。
日本にはない味が開発されていて、現地に出張した日本のビジネスマンや旅行者たちにも、味わってもらいたいレシピになっています。
例えば、日本の有名なラーメンチェーン店である「らーめん まる玉」は、本家でも提供している鶏+卵のラーメンを販売しています。日本の味をそのままに、インドネシア人でも安心して食べられるラーメンを提供していることから人気を集めています。
また、インドネシアに展開している「清六屋」はハラール認証を取得し、厳格なムスリムでも安心して食べられるラーメン店です。
ハラール食でない豚入りラーメン
日本らしい豚骨ラーメンをそのまま提供しているラーメン屋も多々あります。
ムスリムの方たちは、豚を食せないため、現地の華僑や在住日本人などがターゲットです。華僑の多い地域、在住日本人の多い地域に出店することで、イスラム教徒が大半のインドネシアにおいても店舗数を増やし、成長し続けています。
中には豚骨ラーメンをメインにしつつ、豚以外を使ったラーメンを提供しているお店もあります。ショッピングモールなどを中心にチェーン店を展開し、現地の人も含めて人気を博しています。
日本で人気のラードとニンニクがのったこってり系ラーメンや激辛ラーメンなどが現地の方から支持されているそうです。
また、ラーメンに加えて餃子や枝豆、唐揚げなどのサイドメニューも提供されており、日本と同じ味を味わうことができます。サイドメニューであれば、イスラムの方も食べることができるので、インドネシアの多くの方が日本の味を楽しんでいるようです。
まとめ
日本とは気候も風習もまるで違うインドネシアですが、日本食の中では、ラーメンはかなり受け入れられやすいメニューのようです。
もともと暑い国の料理として辛い味に馴染みがあるため、激辛ラーメンはまさにぴったりです。また、ムスリムは食せないものの、とんこつラーメンは定番として変わらぬ人気があります。
インドネシアのポピュラーなお料理にも、麺類はたくさんあります。ラーメンも同じ麺類として受け入れられやすいのでしょう。
イスラム教徒が大多数であるインドネシアのため、宗教的な事情もよく考慮されています。ハラール食に対応するため、日本のラーメンの美味しさを残しつつ、日本のお店にはない特別のレシピが開発されたのも興味深い点です。
ビジネスとしては、外国人も多い都市部でムスリム以外をターゲットにするか、ムスリムをターゲットに含めてラーメンをハラール対応にするか、その見極めが成功の秘密のようです。
現地を旅行する日本人やイスラム教以外の人には、どちらも味わえる楽しみがありますね。
インドネシアのラーメン市場は、まだまだ発展の余地がありそうです。