日本の伝統食材「あずき」は海外でも普及している?
日本では馴染みのあるあずきですが、近年アジアやアメリカ、ヨーロッパ各国へ広まりつつあるようです。
日本において、あずきは赤飯を作る際やあんこに加工して和菓子に使用するのが一般的で、日本の食文化を築いた食材の一つと言っても過言ではありません。
今回は、海外でのあずきの取り扱われ方や食べ方について紹介したあと、海外進出に向けた日本の自治体や企業の取り組みについて詳しく解説していきます。
日本の伝統食材「あずき」について
ここでは、あずきの歴史や産地、日本産あずきの種類についてご紹介します。
あずきの歴史
中国で最も古い農業の書物『氾勝之書』には、あずきの栽培方法が記載されており、あずき栽培の始まりは紀元前1世紀まで遡るといわれています。
日本では、縄文遺跡からあずきが出土しているため、古代から国内で食べられていた可能性が高いです。
そして、これまで日本のあずきは中国由来のものだと考えられていましたが、最近の遺伝子研究によって、日本のあずきは中国のあずきとは別の系統で進化した種類であることがわかっています。
産地
日本のあずきの主な生産地は北海道であり、国内のあずき収穫量の9割を占めています。北海道の気候や気温があずきの生育環境に合うことが理由です。
北海道以外では、岩手県・青森県・秋田県などの東北地方、また兵庫県・京都府などでもあずきが栽培されています。
種類
あずきの種類には、北海道が主な生産地である「エリモショウズ」、兵庫県・京都府が主産地の「丹波大納言」の2種類があり、これらはあんこの原料として使用されます。
一般的なあんこの味として知られるのがエリモショウズで、独特のアクっぽさがあります。一方、丹波大納言は、兵庫県の丹波地方で栽培される高級品として有名です。主に京菓子用として、質の高い和菓子に使用されています。
海外でのあずきの取り扱いは?
日本では、北海道産のあずきやあんこをスーパーで手軽に買えますが、海外ではどうなのでしょうか。ここでは、海外でのあずきの表記や販売状況についてご紹介します。
あずきの表記
日本では「あずき」あるいは漢字表記で「小豆」ですが、海外では「Azuki」または「Aduki」とアルファベット表記されています。
例えば、イギリスのスーパーで販売されているあずきの缶詰には、「Aduki beans in water」と書かれていたり、フランスでは「HARICOTS AZUKI」として生豆のあずきが売られていたりします。
これら以外にも、「Adzuki」と表記している国もあるようです。
あずきの販売状況
海外では、アジア系スーパーを中心に、水煮缶や生豆のあずきだけでなく、あんこも買えるのが現状です。最近では、オンラインでも手軽にあずきやあんこを購入することができます。
もともと豆を甘く煮る文化がなかった欧米でも、最近は日本の食文化の普及によって、あずきやあんこの知名度が上がってきています。
大福やどら焼きなどのあんこを使った和菓子の人気が出たことが、あずきやあんこを求める消費者の増加につながったと考えられます。
ただし、海外で販売されているあずきは、必ずしも北海道産というわけではないようです。あずきは日本以外の国でも生産されており、中国産のあずきが海外のオーガニックショップに置いてあることも一般的です。
中国産が一般的であるため、北海道産のあずきやあんこはその質の高さが付加価値となり、高級品として扱われています。
あずきは海外でどのように食べられている?
日本ではあずきは甘くして使う場合がほとんどですが、海外ではどうなのでしょうか。ここでは、日本との違いに着目しながら海外でのあずきの食べ方についてご紹介します。
主菜や副菜
日本では、あずきを使った甘くない料理として赤飯が挙げられますが、海外と比べるとお菓子以外のレシピ数はかなり少ないのが現状です。
一方、欧米では主菜や副菜にあずきを使用し、甘くしない食べ方が主流となっています。
例えば、あずきをカレーやサラダの具材として使ったり、豆をすりつぶしてペースト状にした料理であるフムスの材料にしたりと、日本とは違った方法であずきが食べられています。
もともと海外には、赤インゲン豆やライ豆などの豆類を使った料理が多くあるため、あずきもその仲間入りをしたと考えてよいでしょう。
また、あずきはヴィーガン料理の材料としても人気があるようです。火を通したあずきをフードプロセッサーにかけ、ヴィーガンミートボールの材料としているレシピもあります。
欧米は、日本と比べてヴィーガンの数が多く、ヴィーガンレシピを紹介するサイトではあずきがよく登場しているようです。
スイーツ
一方のアジアでは、日本と同様に、あずきをスイーツに使うことが多いです。
台湾では粒あんが好まれており、かき氷や豆腐スイーツの上にトッピングされています。このほかにも、水に溶かして飲むタイプのあずきパウダーもあります。
台湾以外では、韓国とタイでもあんこスイーツが人気です。韓国で販売されているたい焼きは、小さなフナの形をしており、中身は粒あんです。一口サイズのたい焼きも販売されるようになり、その手軽さから、さらなる注目が集まっています。
また、タイは甘党が多い傾向にあり、日本の菓子パンの需要も高いようです。あんぱんも人気のパンの一つで、しっとりとした甘さがタイ国民に受け入れられたようです。
あずきのさらなる海外進出のための取り組み
あずきは世界中に広まりつつありますが、普及の余地はまだありそうです。実際に、日本の自治体や企業もあずき製品を世界に広めようと積極的に動いています。
井村屋のあずきバー
菓子や食品の製造・販売を行う井村屋グループ株式会社は、中国に拠点を置き、アジア各国に向けてあずき商品を輸出しています。また、2010年にはアメリカにも拠点を置き、健康食品としての側面からも、あずき商品の製造販売を開始しました。
その中でも、あずきを使用したアイスである「あずきバー」は注目の商品といえるでしょう。
2019年、井村屋グループ株式会社はマレーシアにIMURAYA MALAYSIA SDN.BHD.を設立しました。そして2021年9月に、マレーシアの食文化を考慮した3種類の「IMURAYA AZUKI BAR」を発売しました。
あずき味・抹茶味・ミルク味があり、マレーシアにはイスラム教徒が多いことから、ハラール認証を受けた原料のみを使用しています。
北海道のあずき茶
北海道十勝清水町も、あずきを特産品としている町の一つです。そして、JA十勝清水町が販売促進を行っている食品が地元産のあずきを使用した「あずき茶」と「あんこ」です。
2024年2月、インドネシアで北海道十勝清水町フェアが開催されました。その際の主力商品があずき茶で、煮出したあずき茶を使ったジェラードはとても好評だったようです。
フェアに際して十勝清水町産から食材の提供を受けた現地の日本食料理店2店舗は、その盛況ぶりから、北海道十勝清水産ののあずきを継続的に使用することを決定しました。
これは十勝清水産のあずきの質の高さが認められた結果であり、今後は高級品としてあずきの輸出拡大を目指していけそうです。
まとめ
日本の伝統的な食材であるあずきが、現在Azukiとして世界中に広まっていることがわかりました。
欧米諸国では、豆を甘く煮ることはあまりされていませんでしたが、日本のスイーツの普及によって、あんこもが受け入れられやすくなったようです。
今後も斬新なあずきレシピが開発されることが考えられ、あずきの需要がさらに高まることが期待できます。