全ての加⼯⾷品を対象に、原料原産地表⽰を義務付け 消費者の商品選択に貢献
日本では2000年代になって、消費者の健康に大きな影響を与えるような、食品に関する問題が発生しています。その多くが、産地を偽装したり、消費期限を偽装したりするものでした。
それまでは、食品表示に関する法律として、食品衛生法・JAS法・健康増進法がありましたが、表示ルールの複雑さや執行体制の不統一等の問題があり、消費者も食品表示を見てもよく分からない人が多かったことでしょう。
そこで消費者庁によって、食品表示に関する規則を一元化した、食品表示法が2015年に施行されました。しかし、その後も食品の産地偽装問題等が発生しています。
そのため2017年に、食品表示法4条1項に基づく内閣府令である食品表示基準3条の改正により、「新原料原産地表示制度」が導入されました。
新原料原産地表示制度とは
新原料原産地表示制度が導入されるまでは、一部の加工食品に限って原材料の産地表示が必要とされていましたが、新原料原産地表示制度によって全ての加工食品を対象に原料原産表示が義務付けられました。
この制度によって、全ての加工品の原材料や産地について消費者が知ることができるようになりました。新原料原産地表示制度は、2022年3月31日までの経過措置期間が設けられました。食品業者は、この期間に新制度への対応を行い、2022年4月1日には完全施行されています。
新原料原産地表示制度の目的は?
農林水産省によれば、消費者の約77%が食品を購入する際に「原料原産地名を参考」にしており、約93%が原料原産地の情報は「食品に表示されているものを確認」しているといいます。この調査結果は、原料原産地に対する消費者の関心の高さを表わしています。
消費者は、表示されている情報を信頼して、商品を選択します。
新原料原産地表示制度では、全ての加工食品に対して原材料や原産地等について、定められたルールによる表示方法が決められています。食品に関する情報を正しく伝えることによって初めて、消費者は嗜好にあった商品を選択できるのです。
表示方法について
日本で販売されている加工食品には、以下の項目を表示することが義務付けられています。
名称
その商品の一般的な名称が表示されています。名称はその商品の内容を表す一般的なものを表示しなければなりません。誰が見てもそれと分かるような、社会通念上一般的な名前を表示する必要があります。
名称と間違えやすいものとして、品名があります。品名は商品名のことです。場合によっては、名称と同じになることもありますが、表示制度上の扱いが違います。
原材料、原料原産地名、添加物
多くの加工食品では、何種類もの原材料が使われています。原材料を全て表示しようとすると、表示が煩雑になって、かえって消費者を混乱させてしまう可能性があります。
そこで原材料については、「国別重量順表示」の原則によって表示しています。「国別重量順表示」とは、加工製品の中で、最も多く使われた原材料の順に表示することです。そして、最も多く使われた原材料の原産地を表示します。
原材料で複数の原産地の材料を混ぜて使っている場合は、混ぜた材料の多い順に原産地が表示されます。3か国以上の原産地がある場合は、3か国目以降を「その他」と表示することも可能です。
最も多く使われた原材料が加工品の場合は、その加工品の製造地が表示されています。また、添加物についても表示が必要です。原則として添加物に占める重量の割合の高いものから順に表示します。
添加物は、食品の完成前に除去されるものや、食品中に含まれる量が少なく、その成分による影響を当該食品に及ぼさないものは、表示が免除されています。
内容量
商品の内容量を、「グラム(g)」、「ミリリットル(ml)」又は「個数」などの単位を明記して表示します。固形物に充てん液を加え、缶又は瓶に密封したものについては、固形量及び内容総量がそれぞれ表示されています。
製品が容器包装された状態で、内容数量を外見から容易に判別することができる場合は、内容量の表示が省略されている場合があります。
消費期限、賞味期限
消費期限とは、袋や容器を開けないままで、書かれた保存方法を守って保存していた場合に、消費期限に表示の日付まで、安全に食べられる期限のことです。この期限までに消費することが望ましい、傷みやすい生鮮品などに表示されています。
消費期限は、賞味期限より短いのが一般的で、食品を無駄なく消費する目安として表示されています。
賞味期限は、袋や容器を開けないままで、書かれた保存方法を守って保存していた場合に、賞味期限に表示の日付まで、品質が変わらずにおいしく食べられる期限のことです。
缶詰の商品は、消費期限や賞味期限が蓋や缶の底に刻印されていることが多いので、記載されている場所を探して確認しましょう。
賞味期限は、表示の期限を過ぎても表示されている保存方法を守っていればすぐに食べられなくなるわけではありません。ただし、消費期限も賞味期限も、一度開封したものはその期限に関係なく早めに食べることが推奨されています。
保存方法
保存方法は、開封前の保存方法が表示されています。缶詰など、常温で保存する以外に、特別に注意点が無い場合は、省略されている場合があります。
主な表示方法としては、「直射日光を避けて、常温で保存」、「○度以下で保存」などと表示されている場合や、「要冷蔵」とだけ表示されている場合があります。
「要冷蔵」と表示されている場合は、以下を参考にして下さい。
・冷凍食品:-25~-15度
・魚介類・鶏肉:0~3度
・肉:1~3度
・乳・乳製品:3~4度
・野菜・卵・調理食品:4~7度
・果物:7~10度
原産国名
輸入された加工食品には、原産国名が表示されています。輸入された加工食品については、容器に梱包された状態で輸入されたものや、まとまった状態で輸入されたものを国内で小分けにしたものなどがあります。
また、国内で商品について実質的な変更をもたらす行為をしていないものも、輸入品として表示されています。
製造者等
製品の表示に責任を持つ者の氏名又は法人名と、その住所が記載されています。基本的に「製造者」、「加工者」、「輸入者」を区別して表示しています。
製造業者、加工者又は輸入業者との合意等により、これらの者に代わって販売業者が表示を行うことも可能で、その場合は「販売者」として表示します。
表示事例を紹介します。
出典:農林水産省「新しい原料原産地表示制度-事業者向け活用マニュアル-」
これらの食品表示義務を守らなかった場合は、行政から指導や命令を受け、違反内容によっては重い行政処分が下されます。
法人の場合、最大3億円以下の罰金を科される可能性があります。さらに違反を行った企業は、会社名を公表されることになります。
食品を扱っている企業にとって、消費者の安心・安全に対する信頼は、事業を行うための必要条件でもあるのです。消費者の安心・安全に対する信頼を裏切った企業については、社会的信用を失い、罰金以上の大きなペナルティーを受けることになるでしょう。
まとめ
食品は私たちの生活に無くてはならない重要な商品です。毎日食するものなので、安全で安心なものでなければなりません。食品メーカーは、食品をよりおいしくするために日々努力しています。
その過程で、原材料が疑わしいものや、原産地が不明なものが混入しない商品開発を望みます。日本の食文化は海外でも好評です。海外の消費者にも、日本の食品表示について理解してもらい、安心安全な商品を食べていただきたいものです。