韓国で好まれ続けている日本のラーメン、人気を確立した理由とは

韓国で日本食ブームの広がりが見られたのは、2000年代後半のことです。この際に、生麺を使った日本のラーメンにも注目が集まったようです。

2019年には日韓関係が悪化し、一時は首都ソウルを含む韓国全土において、日本製品の不買運動が起こった過去もあります。そのような状況下でも、日本のラーメンのブームの火は消えることなくひそかに続き、韓国での人気を確実なものとしました。

今回は、韓国と日本のラーメンの違いをご紹介しながら、韓国での日本のラーメンの今後についても解説していきます。

韓国と日本のラーメンの違いは?

韓国と日本、どちらの国においてもラーメンは国民食といえます。ただし、ラーメンの在り方には韓国と日本で多少の違いが見られるようです。

ラーメンの種類

日本では豚骨をベースとした豚骨ラーメンがよく知られていますが、韓国では牛骨からスープを作る牛骨ラーメンが人気です。

また、牛肉や内臓を煮込んで作られるスープは「コムタンスープ」と呼ばれ、しっかりとしたコクがありながら、さっぱりした味が特徴です。

このほかにも、日本と似た魚類ベースのスープも韓国では好まれています。たとえば、インスタントラーメンを展開している株式会社農心(NONGSHIM)は、「イワシカルクッス」というイワシだしベースのラーメンを販売しています。

さっぱりとした上品さのあるイワシスープが、韓国で人気を博しているようです。

麺の種類

日本のラーメンに使われている麺は、コシのある細い麺が一般的です。これに比べて韓国では、もちもちした食感のある太い麺が使われています。

このもちもち感は、麺の原料としてじゃがいもでん粉が使用されているためです。

トッピング

日本のラーメンのトッピングは、もやし・メンマ・煮たまご・ネギ・チャーシューなどが定番です。一方、韓国ではネギやキムチ、チーズや卵などのトッピングが人気です。

チーズや卵を入れるとスープの辛さを抑えられるため、たとえば並外れた辛さの「辛ラーメン」には、とろけるチーズのトッピングがよく合います。

ただし、トッピングに関しては韓国社会の格差が反映されているとの声も聞かれます。

裕福な家庭ではロブスターやアワビ、牡蠣、ムール貝をトッピングすることもある一方で、キムチやもやし、青菜だけという家庭もあるのが現状です。

日本のラーメンは、地方によって独自の文化を持っています。そのため、その土地の人々に好まれる味が根付いているといってもよいでしょう。

一方、韓国には辛さを主力としたラーメンが多くあります。韓国は冬の寒さがとても厳しいため、唐辛子の辛さで体を温めることがラーメンにも求められているといえます。

韓国での辛いラーメンの人気は、現在も高いままです。その反面、コムタンスープのようなさっぱりした塩味も韓国では好まれています。

韓国で好まれる日本のラーメンの特徴

韓国と日本のラーメンには違いがありますが、韓国には行列ができるほど人気のある日本のラーメン店が多くあります。

ここでは人気店を参考にしながら、韓国人に好まれる日本のラーメンの特徴について解説します。

二郎系ラーメン

見た目のインパクトが特徴的な二郎系ラーメンは、韓国で人気があるラーメンの一つです。ソウルにある「556ラーメン(556라멘)」というお店では、日本でも名高い二郎系ラーメンが食べられます。

二郎系ラーメンは、太いちぢれ麺と高く盛られたもやし、そして大量のおろしニンニクが特徴です。これと同じものを提供しているのが、556ラーメンです。

二郎系ラーメンと韓国のラーメンの共通点は、太い麺とトッピングのもやしだと考えられます。麺を覆うほどにてんこ盛りにされたもやしは食べ応えがあり、国を問わず注目を浴びること間違いなしでしょう。

このラーメン店は、いつも長い行列ができるほどの人気を誇っているようです。

醤油ラーメン

ラーメンの中でも長い歴史を持つ醤油ラーメンは韓国でも人気で、醤油ラーメンをメインとする日本のラーメン店が出店しています。

たとえば、食べログランキングにおいて3年連続第1位に輝いた「大阪ブラック」を食べられるお店がソウルにあります。地下鉄合井駅を出て約100メートル歩くと、「世界の果てのラーメン(세상 끝의 라멘)」と書かれたお店が目に入ります。

大阪ブラックとは、スープが黒く見えるほどコクのある醤油ラーメンのことです。

麺のタイプは太麺で、しっかりとしたコクのある醤油ベースのスープが韓国の牛骨スープのコクを思い起こさせるのかもしれません。

広い店内でありながらウェイティングリストが必要なことからも、注目度の高さが伺えます。

豚骨ラーメン

福岡が発祥の豚骨ラーメンはこってりとした味わいが特徴で、今では日本中で親しまれています。最近は海を越えたソウルでも、関西の人気店の豚骨ラーメンを食べられるようになりました。

地下鉄新村駅近くにオープンしたラーメン店「豚人(부탄츄)」は、近畿地方を中心に展開している豚人(ぶたんちゅ)の系列店です。ただ、日本で提供している豚骨ラーメンに少し改良を加えています。

日本の豚骨スープの特徴は塩味が強く脂っこいことですが、この味は韓国人には好まれませんでした。そこで作り手側は、韓国人からの支持を得るために、塩味と脂っぽさを極限まで抑えることにこだわったそうです。

この努力の結果、現在では毎日行列ができるほどの人気店となりました。

韓国での日本のラーメンの今後

現在、韓国では日本のラーメンが日常的に食べられようになりました。しかし、もともとは家で簡単に食べられるインスタントラーメンが主流の国です。

ここでは、韓国での日本のラーメンの今後について解説していきます。

ラーメンライブラリー

韓国で最も大きなシェアを持つコンビニといえば、CU(シーユー)です。このCUが2023年11月、ソウルに「ラーメンライブラリー」をオープンしました。

約200種類の袋入りラーメンが並ぶ、まるで図書館のようなラーメン専門のコンビニです。24時間営業、店内で食べることも可能なラーメンライブラリーの売り上げは、1日500食以上との報告もあります。

実はこの中に、サッポロ醤油ラーメンや北海道函館塩ラーメンなどの日本のインスタントラーメンも並んでいるようです。数は少ないものの、今後、韓国の乾麺文化に日本のインスタントラーメンが参入していける可能性も見受けられます。

ミールキット

デリバリーサービスが普及している韓国では、ラーメンを注文すると麺が伸びてしまうという問題が生じているようです。

この問題を解決したのが、家で調理ができる「ミールキット」の登場です。ミールキットは、1人分もしくは2人分の材料がパッケージされ、簡単な調理で食べられるようになっています。

ソウルにある大型スーパーマーケットには、数々のミールキットが並んでいます。日本のラーメン人気がさらなる高まりを見せれば、近い将来、この売り場に日本のラーメンキットが置かれることも期待できるでしょう。

まとめ

今回は、韓国で食べられている日本のラーメン事情についてご紹介しました。

韓国と日本のラーメン文化の間には、麺の種類や好まれる味に違いが見られるものの、日本のラーメンはすでに韓国で受け入れられています。

日本のラーメン店が首都ソウルに出店し、すでに成功を収めているのは事実です。その背景には、韓国人好みの味に改良した企業努力が垣間見られます。

今後も韓国における日本のラーメン人気は続くことが予想され、日本の乾麺・生麺ともに需要が高まることが期待できます。

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