日本のレトロ飲料「ラムネ」が世界で再評価!輸出状況や人気の理由は?

日本の夏祭りの象徴ともいえる「ラムネ」。ビー玉で栓をした独特なガラス瓶と、すっきりとした味わいで親しまれてきたこの清涼飲料が、近年海外市場で急速に注目を集めています。
ラムネは単なる飲み物としてだけでなく、瓶の容器というノスタルジックな見た目と自分で栓を開ける「体験型」の飲み方がSNSでも話題となり再評価されているようです。本記事では、ラムネの魅力や海外での人気の背景、輸出の現状、今後の課題までを詳しく解説します。
日本独自のビー玉飲料「ラムネ」の魅力とは
ラムネは、味だけでなくそのスタイルが新鮮で面白く、外国人には日本のユニークな文化を感じさせるものとして捉えられています。ここでは、ラムネの持つ魅力を4つ紹介しましょう。
ビー玉とガラス瓶
ラムネの最大の特徴は、その独特な容器です。ガラス瓶の口にビー玉で栓がされており、飲む際には専用のオープナーでビー玉を押し込むという、ほかにはない開け方を楽しめます。
ビー玉が転がる音や、開栓時のシュワッという音は日本人にとってノスタルジックな夏の記憶を呼び起こします。
外国人にとっては、「見た目がキレイ」「ビー玉の栓の開け方が楽しい」など「飲む」だけに留まらないユニークさがあり、関心が高まっています。
日本文化を象徴する存在
ラムネは、夏祭りや花火大会といった日本の夏の風物詩と深く結びついています。これらのイベントで味わうラムネは、多くの日本人にとって、熱い日本の夏に清涼感をもたらす存在の一つです。
海外の人々にとっても、ラムネは単なる飲み物ではなく、日本の文化やライフスタイルを垣間見ることができるアイテムとして認識されつつあります。
爽やかな味わいと多様なフレーバー
ラムネは、ほんのりとした甘さと爽やかな炭酸が特徴です。近年では、定番の味に加えて、いちごやメロン、ブルーハワイなどさまざまなフレーバーが登場しており、多様なニーズに対応できるようになっています。
このバラエティ豊かな味わいが子どもから大人まで広く受け入れられている理由の一つといえるでしょう。
長期保存が可能で輸出向け
ラムネは瓶入りであることから長期間保存ができ、輸出向けとしても好都合です。和食人気が高まるなかで、寿司店や日本食レストランのドリンクメニューとして採用されることが増え、自然と認知度が上昇しています。
ラムネの生産・輸出の状況
日本の夏の象徴とも捉えられるラムネですが、実はラムネの国内需要は激減しています。
農林水産省によると、1953年頃までは炭酸飲料水の約6割を占めていたラムネですが、多種多様な飲料の開発、缶やプラスチック容器の普及などさまざまな要因によって現在の需要は2割未満とされています。
一方で、海外では日本食ブームとともにラムネが評価され、輸出量が飛躍的に伸びています。
これに伴いラムネの生産量は増加し、2014年の生産が3,450万本であったのに対し、2022年には1億1,360万本製造されました。輸出額は2021年時点で77億円、アメリカや中国、台湾などが主要輸出国ですが、業界は販路を拡大し2025年には2億本生産、154億円の輸出額を目指しています。
出典:農林水産省 「輸出事業計画 ※申請者名:全国ラムネ協会、品目:清涼飲料水」
出典:食品産業新聞社「ラムネ生産量が10年で3倍に拡大、輸出増加が牽引、課題はびんやビー玉などの資材不足/全国ラムネ協会」
海外でラムネが人気を得ている理由とは?

海外でラムネが人気を集めている大きな理由の一つが、その「SNS映え」する見た目です。
ビー玉が詰まった透明なガラス瓶は、写真や動画に撮ってシェアしたくなる魅力があります。美しいガラス瓶は飲み終えたあともインテリアとして活用し、SNSに投稿している例も見受けられます。
また、ビー玉を押し込んで開けるという体験型の飲み方も「面白い」「珍しい」といった付加価値を生み出しており、InstagramやYouTubeなどで「開ける」プロセスが一つのコンテンツとして拡散され、新たなファンを獲得しています。
ただし、ラムネ人気はSNS映えやコンテンツとしての面白さだけが理由ではありません。各国特有のラムネの状況について見ていきましょう。
【フランス】食文化を通して
フランスでは日本食ブームが続いており、ラーメン店や寿司店などでラムネが提供されることが増えています。また、日本文化を紹介するイベントやお祭りなどでもラムネが販売され、珍しい日本の飲料として注目を集めています。
パリなどの都市部では、日本食材を扱う専門店、アジアの食料品店などでラムネが入手可能です。近年では日本食品を扱うオンラインストアなどでも取り扱っており、幅広いフレーバーを楽しむ人が増加の傾向にあります。
【イギリス】ラムネを使ったカクテルを
イギリスでも、日本食レストランやアジア食材店でラムネを扱っているほか、夏の飲み物として親しまれているようです。なかには猛暑が続く夕方に、ジンなどのお酒を合わせてロックでラムネを楽しむ人もいます。
【アメリカ】アニメ文化から
アメリカでは、アニメや映画などに登場するラムネをきっかけに関心を持つ人もおり、日本の祭りをテーマにしたイベントやコンベンションでもラムネが定番商品として登場しています。
アメリカで開催されたアニメエキスポでは、日本のキャラクターグッズや雑貨と一緒に、または飲食ブースなどでラムネが販売され、若者を中心に注目されるようになりました。
【タイ】屋台文化との親和性
タイでは、縁日文化と自国の屋台文化が似ていることもあり、日本アニメの人気とともにラムネは親しみやすい存在として受け入れられています。
観光地のナイトマーケットや日本風の屋台村には、カラフルなボトルが並び、ラムネは「日本気分」を味わえるアイテムとして注目を集めています。ユニークな開け方や、ビー玉の音も相まって、人気は増加傾向にあるといえるでしょう。
【韓国】スーパーマーケットの陳列
韓国では、日本食材専門店でなくても、一般的なスーパーマーケットなどでラムネを手軽に入手できるようになってきました。
最近では、アニメキャラクターがラベルに描かれたコラボ商品や日本各地の特産品を使った「ご当地ラムネ」など、デザインやフレーバーのバリエーションも広がっています。
好きなキャラクターが描かれていたことをきっかけにラムネを手に取る人も多く、飲料としての魅力に加えて企画商品の一つとしても注目を集めています。
ラムネのさらなる輸出拡大のための課題
ラムネの人気が高まる一方で、製造に関しては課題もあります。ラムネの生産は中小企業が多くを担っており、設備投資や資材の確保にかかる負担が大きな悩みとなっているためです。
海外需要の高まりに対し、国内での生産ラインは限られており、特に瓶やビー玉の資材が不足し増産が難しいというのが現状です。国内での生産体制の強化や、海外のサプライヤーとの連携など、多角的な視点からの対策が求められています。
またガラス瓶のリサイクル促進やキャップ・ラベルに使われているプラスチックの代替素材の開発、輸送エネルギーの効率化や包装資材の簡素化など、SDGsにも関連して環境負荷を軽減する取り組みが必要と考えられています。
まとめ

独特の形をしたボトルとビー玉、爽やかな味わいで海外からの注目を集める日本のラムネ。SNS映えやレトロブーム、日本文化への関心といった要因が重なり、その人気は着実に広がっています。
一方で、資材不足や生産キャパシティの限界、SDGsへの対応といった課題も存在します。
これらの課題を克服し、日本文化発信のツールとしての可能性を最大限に活かすことで、ラムネは世界中で愛される飲料としての地位を確立していくでしょう。