幅広い業務内容でやりがいも大きい、食品の品質管理という仕事を知る
品質管理とは、商品やサービスの提供において、検査あるいは検証を通し顧客に提供できる一定水準の品質を保持していることを確認する仕事のことを言います。生活の中ではあまり耳にしないかもしれませんが、人々が豊かで安全な生活を送るにあたって、決して欠かすことのできない仕事です。
食品についても、品質管理は大きな意味を持ちます。品質管理の必要性、具体的な仕事内容、品質管理を行うにあたって求められるスキルとは何でしょうか。これらから、食品の品質管理とはどのようなものなのかを見ていきます。
食品品質管理の必要性とは?
なぜ、食品には品質管理が必要なのでしょうか。一般的な品質管理の必要性と、食品ならではの品質管理の必要性にわけて、見ていきましょう。
品質管理とは
品質管理は、すべての商品やサービスで必要とされるものです。ものづくりに際して、品質のよいものを作り出すことはとても重要です。その品質を維持しながら、生産のコストを下げて利益を確保する必要がありますし、生産数量や納期も守る必要があります。
よいものを作るにはコストがかかります。丁寧に作るのであれば、相応の時間も必要です。コストを考えれば、それぞれが矛盾する課題とも思えますが、それらを両立させ、課題を解決するのが品質管理の役割です。
品質管理は、材料の調達の時点からはじまっています。製造工程や出荷前の品質確認、出荷後の対応に至る、さまざまなシーンで品質管理の仕事が行われます。
要求水準が高い食品の品質管理
食品は、人の口に入るものです。それだけに、高い水準の品質管理が求められます。食べた結果、健康を害することとなってしまうなどは論外ですし、十分な栄養成分が含まれていない、味や内容量にばらつきが生じたといった問題が発生すると、商品だけでなくメーカー自体に信用がおけないと評価されることになりかねません。このほかにも、髪の毛などの異物混入も大きな問題になりえます。
これらの問題を起こした場合、企業としての信用は失墜し、場合によっては市場から退出しなければならないほどのダメージを負うことも考えられます。品質管理の仕事は一般にシビアなものですが、食品の品質管理は想像以上に重要な意味を持ち、高い必要性を有するものです。
国のルールと企業のルール
ルール面で見ると、食品の品質管理には2つの種類があります。国が定める「食品衛生法」と、企業が定める独自のルールです。食品衛生法では賞味期限の表示をはじめ、製造拠点への立ち入り検査など、行政側が食品の品質管理に関する基本的なルールが定められています。
企業側でも、品質管理について独自のルールを定めています。主なものとして原材料の調査と分析、製造拠点内の衛生管理、原材料や成分の表示作成、クレームの対応などをあげることができますが、製造する商品の特性にあわせ、それぞれに厳しいルールが定められています。
食品品質管理の仕事内容
食品の品質管理という仕事の内容は、どのようなものでしょうか。原材料の受け入れから食品の製造、出荷後までのプロセスごとに必要となる仕事と、全体的な仕事について確認しましょう。
原材料の調査
食品の品質管理において入り口部分と言えるのが、原材料の調査および分析で、理化学検査や官能検査を行います。当然ながら、この検査で合格できなかった原材料を使うことはありません。
代表的な理化学検査としては細菌検査があり、微生物の数や種類を見ます。原材料における水分含有量や酸性・アルカリ性が外れていないかの確認も、理化学検査に含まれます。官能検査は、味や香りといった人間の感覚をもとに、原材料の品質などをチェックするものです。
衛生管理
製造工程においても、品質管理は重要な意味を持ちます。製造現場にリスクとなる微生物がいないかを確認し、発見された際に適切に対処することは、安全で高品質な食品を製造していくためには必要不可欠なことです。
微生物の検査であれば、まず工場内で使われる製造機械や作業用のテーブル、道具を拭き取り、拭き取った先に微生物がいないかを確認します。問題となる微生物が発見された場合は、その対策を行った上で工程上の問題点を確認し、製造に携わる従業員に対して必要となる指導を行います。当然ながら衛生管理の対象は製造機械や道具だけでなく、従業員も対象となります。
商品規格書・一括表示の作成
「商品規格書」とは、自社で製造した商品について、重量や個数だけでなく、原材料の構成やアレルギー物質、保存方法といった情報をまとめたものを言います。製造業者が卸売業者に商談予約する際に要求されることがありますので、商品の販売には欠かせないものとなります。
一括表示とは、食品類のパッケージに記載されている原材料や内容量、カロリーといった成分情報あるいは賞味期限などの表示のことです。これは一般消費者の目にも入るもので、どのようなものかすぐにイメージできる人も多いのではないでしょうか。
クレーム調査と対応
商品を販売したらそれで終わりではありません。中身が規定数量より少なかった、異物が混入していたなど、クレームが発生することもゼロではありません。これに対応することも、品質管理担当者の大切な仕事です。
クレームが発生した場合、まず調査を行い、発生原因を明らかにします。次に、今後同様のことが起きないように対策を行います。これらを報告書にまとめ、社内外問わず必要とされるところに提出します。
衛生教育
食品を製造する企業にとって、従業員の衛生管理はとても重要な意味を持ちます。作業服や作業帽の着用方法をはじめ、手洗いの方法、製造工程で使用する道具等の洗い方を従業員に指導することも、品質管理担当者の大切な仕事です。
食品製造では、作業工程においても衛生面で注意すべきポイントが多数あります。作業上の注意点を従業員に指導することだけでなく、衛生に関する社内講習会の企画あるいは実施も、品質管理担当者の仕事です。
事業所のチェック
人に対する指導と同様、製造現場での問題点を摘出し、改善していくことも品質管理担当者の大切な仕事です。製造現場でのチェックは、定期的に行います。そこで摘出された問題を分析し、改善の指示および指導を行うのも、品質管理担当者の役割となります。
このほかに、衛生管理や製造に関するルールあるいはマニュアルの策定も品質管理担当者が行います。自社だけでなく、原材料メーカーに対して工場監査や衛生指導を行うこともあります。
食品品質管理に求められるスキルと資格
これまで見てきた通り、食品の品質管理という仕事の内容は多岐にわたり、高い専門性が求められます。人々の生活あるいは健康を左右するほどに重要な意味を持つ仕事でもありますから、一定水準以上のスキルを求められるのは当然と言えるでしょう。
クレームに対応する根気も、食品品質管理担当者には求められます。情報化社会となり、相手の顔を見ずにSNSなどで度を超したクレームを言う人もいますが、それに対しても迅速かつ誠実に対応する必要があります。もちろん、顧客からは感謝の言葉を受けることもあり、大きなモチベーションにつながります。
食品の品質管理という仕事において、必須となる資格は特にありません。しかし、この仕事に就くために有利になる資格が複数あります。管理栄養士、食品衛生管理者、食品表示管理士検定です。食品表示管理士検定には、初級、中級、上級があります。これらの資格は、取得のハードルが高いものが多いのですが、採用する側は、資格保持者は一定水準のスキルを持つと判断ができます。加えて、資格取得の努力をした人として、好意的に見てもらえる可能性も高まります。
まとめ
食は、すべての社会活動の基本となるものです。その安全を守る食品の品質管理は、仕事としてはいわゆる裏方ですし、地味な印象を持たれるかもしれません。
一方で、専門性が要求され、業務内容も多岐にわたる仕事です。やりがいも大きく、社会に必要不可欠な仕事と言えるでしょう。