ジャパニーズウイスキーが世界を席巻!高評価の理由とは?

「流行のウイスキーといえば日本産」といってもよいほど、今注目を浴びているのがジャパニーズウイスキーです。
ウイスキーには長い歴史がありますが、日本産ウイスキーには、他国のものに引けを取らない品質の良さがあるといわれています。
今回はジャパニーズウイスキーについて説明したあと、直近の輸出状況や世界から高評価を得ている理由、現段階でのジャパニーズウイスキーに関する取り組みについて解説します。
ジャパニーズウイスキーとは?
ここでは、ジャパニーズウイスキーの定義とこれまでの歩みについてご紹介します。
定義
実はジャパニーズウイスキーと名乗るには、いくつかの要件を満たさなければいけません。
まずは、原材料についてです。ウイスキーの製造には、穀物・水・酵母の3つが必要とされています。ジャパニーズウイスキーには、麦芽を必ず使うことが規定されており、水については日本で採取されたものを使う必要があります。
水はウイスキーの味わいに大きな影響を与え、軟水を使用しているジャパニーズウイスキーは軽くてなめらかな味が特徴的だといわれています。
ウイスキーの製造過程においても満たすべき要件があります。まず、蒸留は必ず国内の蒸留所で行う必要があり、日本ではサントリーの山崎蒸溜所、ニッカウイスキーの余市蒸溜所、キリンの富士御殿場蒸溜所が三大蒸留所として知られています。
蒸留した原酒を木樽に詰め、日本国内で3年以上貯蔵することも要件の一つです。そして、その後の瓶詰め工程も日本国内で行うことが求められます。
つまり、国産の原材料を使用し、すべての製造過程が日本国内で行われたウイスキーだけが「ジャパニーズウイスキー」と名乗れるのです。
歴史
日本に初めてウイスキーが伝わったのは、1853年のペリー来航時だといわれています。1871年、ウイスキーの輸入が始まりましたが、当時、高価な洋酒はあまり国民に受け入れられませんでした。
ウイスキーが日本社会に本格的に浸透したのは、第二次世界大戦後だといえます。
時代と共に日本のウイスキー製造に関する技術も進化し、今ではスコッチウイスキーやアイリッシュウイスキーに並ぶ世界五大ウイスキーの仲間入りを果たしたのが、ジャパニーズウイスキーです。
ジャパニーズウイスキーの輸出状況

出典:国税庁「最近の日本産酒類の輸出動向について」
国税庁の発表によると2024年のウイスキーの輸出額は約436億円でした。2022年の約560億円、2023年の約500億円と比較するとマイナスですが、2016年の約100億円からは大きく伸びていることがわかります。
ここ数年の輸出減は、世界的な物価高や、そもそも各国でアルコール消費量が減少していることが関係しているようです。
また、農水省によると、2024年のウイスキーの輸出先は、アメリカが97.6億円で1位でした。2位は中国の66.2億円で、3位が66.1億円のオランダです。意外にも、ウイスキー文化のある西洋を抑えて2位に中国が食い込んでいます。
中国のウイスキー人気の背景には、所得の上昇が関係しており、特に上海を含む都市部では、洋酒を語れることがステータスとなっているほどです。
ジャパニーズウイスキーが世界で評価されている理由
ここでは、ジャパニーズウイスキーが世界中から称賛されている3つの理由についてご紹介します。
繊細でバランスの良い香味
ウイスキーには香りが強くパンチが効いたものもある一方で、ジャパニーズウイスキーはその繊細さが世界から高く評価されているようです。
「繊細でバランスが良い」という表現は、ジャパニーズウイスキーのためにあると言っても過言ではないでしょう。
たとえば、海外で知名度の高いサントリーの「響」は、複雑で繊細な香味と味わいがあると評価されています。このジャパニーズウイスキーの繊細さは、日本の和食文化のおかげといえそうです。
和食は強い味よりも、全体的な味のバランスを考慮するのが特徴です。そのため、日本のウイスキーメーカーは和食に慣れ親しんだ日本人の嗜好に合ったウイスキーを開発してきました。
つまり、日本人好みに作られたウイスキーが、今では世界に評価されるようになったといえます。
日本製への強い信頼感
ものづくり大国として知られる日本は、これまでにさまざまな製品を海外に展開してきた歴史があります。アメリカ市場やアジア市場などでは、日本製品の品質の高さと独自性に強い信頼が置かれており、日本食品・飲料も人気です。
ジャパニーズウイスキーも「日本が作った」という点ですでに信頼を獲得しているのです。
また、2021年に日本洋酒造組合がジャパニーズウイスキーの定義を定めたことにより、ジャパニーズウイスキーの地位がさらに強固になったと考えられます。
希少性がある
ジャパニーズウイスキーの中には、希少価値が高いウイスキー銘柄も多くあります。希少性があるウイスキーは、熟成年数が長いものや、シングルモルトであることがほとんどです。
熟成年数についていうと、ウイスキーは基本的に製造年が古いものほど価値が上がります。例を挙げるとサントリーの「山崎25年」は、25年間木樽の中で熟成されたウイスキーであり、非常に高値がついています。
製造年が古いジャパニーズウイスキーは、市場での流通が少ないことから価値が上がります。
また、ウイスキーの希少性を上げるもう一つの要素であるシングルモルトとは、大麦麦芽を原材料とし、単一蒸留所で製造されたウイスキーのことを指します。
ただし、シングルモルトは数種類のウイスキーを混ぜて作る「ブレンデットウイスキー」の原料としても使われるため、すべての量をそのままシングルモルトウイスキーとすることができません。
熟成年数が長いシングルモルトのジャパニーズウイスキーは、数多く流通することがなく、購入が難しいため、高い値段で取引されています。
ジャパニーズウイスキーのさらなる躍進のための取り組み
ジャパニーズウイスキーが世界的に認められたことで、いくつかの課題も生じています。ここでは、課題解決のために日本洋酒酒造組合が始めた取り組みについてご紹介します。
法整備の必要性
ジャパニーズウイスキーが世界的に認められるようになった反面、希少性が高いために、海外の免税店や酒類販売店などで日本産と偽ったものが販売されているケースも見受けられています。
この問題に対し日本洋酒酒造組合は、清酒と同様に「製法品質表示基準」を設けるよう政府に申し出を行いました。この表示基準は、同義語である「日本ウイスキー」や「ジャパンウイスキー」、外国語に翻訳して表示する場合であっても適用されます。
このほかにも、ウイスキーの産地名を明確にする「地理的表示(GI)」の対象とすることを政府に求めています。これら法整備を進めることで、ジャパニーズウイスキーの価値を守ることが期待できます。
ロゴマークの制定
2025年3月27日、日本洋酒酒造組合はジャパニーズウイスキーのロゴマークを制定したことを発表しました。
このロゴマークが表示されることで、本物のジャパニーズウイスキーであることを認識しやすくなるため、消費者にとってもメリットがあると考えてよいでしょう。
まとめ
今回は、ジャパニーズウイスキーが世界に認められた理由についてご紹介しました。
ジャパニーズウイスキーには独特の香味や味わいがあり、繊細でバランスが良い点が海外から高く評価されていることがわかりました。
このほかにも、ジャパニーズウイスキーは希少であるために価値を高めているようです。しかし、ブランド化が進むと同時に、偽表示という問題が生じているのも事実です。
価値を守るための取り組みの一環としてロゴマークが制定されましたが、今後も法整備は必須となるでしょう。