日系人が広めたふりかけ、ハワイでも定番食に 使い道はごはんに限らず

お米を主食とする日本で特に発達した食文化のひとつに、ふりかけがあります。実はふりかけの歴史はさほど長くはなく、1912年から1920年頃(大正時代前期)に、熊本の薬剤師吉丸末吉氏が開発したものとされています。

日本では誰もが知るふりかけも、日本国外ではほとんど浸透していないのが現実です。米食文化を共有する近隣諸国の中でも、韓国で日本風のふりかけがいくらか流通している程度であり、残念ながら広く親しまれているとは言えません。

そんな中でも、ふりかけが広く親しまれいるエリアがあります。日本人にもなじみ深いハワイです。この記事では、ハワイの生活にふりかけが深く根付いていることをご紹介します。

ハワイにもふりかけがある?

ハワイでは、ふりかけは日本語のまま「Fujikake」という名前で定番化しています。さまざまな種類のふりかけが店頭に並び、日本では想像できない用途にも使われることがあります。

なぜ、ハワイではふりかけが普及しているのでしょうか。それを知るためのヒントとして、ハワイには、数多くの日系人が住んでいるということが挙げられます。アメリカ合衆国全体において、日系人の割合は1%に満たないのですが、ハワイ州に限ると2010年時点でも23%いて、およそ4人に1人が日本にルーツを持ちます。

こういった日系人たちの存在は大きく、ハワイにはさまざまな日本文化が伝わり、定着しています。醤油や豆腐はもちろんのこと、そうめんや納豆までもがハワイで製造されており、住民たちにも親しまれています。ふりかけが支持を得ていることは、自然なことと言えるのかも知れません。

日本のふりかけとの共通点

さて、ハワイのふりかけにはどのような特徴があるのでしょうか。日本のふりかけとの共通点を見てみましょう。

種類が多い

ハワイのふりかけは、種類が豊富です。新製品が次々と発表されていく日本ほどではないかも知れませんが、日本でもポピュラーなカツオなどの魚介類をベースにしたものをはじめ、海苔が主体になっているもの、鶏卵を加えたもの、しそがベースになっているものなどが店頭に並んでいます。

店頭に並ぶハワイのふりかけは、地元産の他日本からの輸入のものがあります。台湾や中国から輸入されている製品もありますが、それらにも日本のスタイルが踏襲されています。

ごはんにかけて食べることが好まれる

ハワイでも、ふりかけはごはんにかけることが好まれます。外食店では、丼もののごはんにもふりかけをかけることがあります。

丼ものですから当然、味のついた具が乗っています。そこにふりかけを使うことは珍しくありませんので、ハワイの人たちからふりかけがいかに愛されるかが伝わってくるようです。

日本のふりかけとの違い

一方で、ハワイのふりかけはハワイの風土にあわせて発達したものでもあります。日本のふりかけとの違いは、どういったところにあるのでしょうか。

使い道はごはんに限らない

ごはん以外の主食とされるものにも、ふりかけは広く応用されます。マッシュポテトや、ハワイでは古くから栽培されているタロイモをペーストにしたものにも、ふりかけをかけて食べます。

お弁当やお惣菜のコーナーでは、ごはんではなくおかずにふりかけがかけられている商品を目にすることがあります。調味料がわりに、広い範囲で使われていると言えます。レストランでは、メニューに「Furikake」が記載されていることも少なくありませんし、有名シェフのこだわりメニューに、ふりかけが使われることすらあります。

食事にふりかけを利用するシーンは、日本ではカジュアルなものにほぼ限られますが、そこにフォーマルとも言えるシーンが加わることが、ハワイと日本との大きな違いと言えるのかも知れません。

刺身にふりかけが使われる

海の幸に恵まれているハワイでは魚食も盛んであり。日本と同じく、生魚を食べる習慣もありました。19世紀以降、日本をはじめ中国、韓国といった醤油を使う国々から人々が移住して来ます。これら北東アジアからの移民は、生魚をいわゆる「漬け」にして食べる文化を定着させました。

ハワイでもよく食べるマグロは、いずれもハワイに存在しなかった調味料の醤油とごま油で味を調えます。ここにふりかけをかけるのが、今日のハワイでも食べ方でもあります。

お菓子の味付けにも使われる

ハワイでは、ふりかけがさらに意外なところに使われています。それはお菓子の味付けで、ふりかけを使ったポップコーンであるハワイアン・ハリケーン・ポップコーンには、複数のフレーバーがあります。この商品は日本でも入手が可能だったこともあり、知っている人も多いかも知れません。

こういった商品だけでなく、プレーンなポップコーンにふりかけをかけて食べることもあります。ハワイで、ふりかけが愛されていることを感じることができます。

ハワイで人気のふりかけは?

ハワイには多様なふりかけがあります。材料別に説明しますが、これらを複数組み合わせている商品が多く、それぞれに人気があります。

魚介類ベース

日本でも定番となっているカツオを用いたふりかけがまず挙げられます。バリエーションとしては、おかか味のものをはじめみりんを用いたものがあります。カツオの他には、日本でも好まれる鮭やエビを用いたものがあります。

海藻ベース

定番となっているのは、のりを用いたふりかけです。日本でも根強い人気を誇るわかめを用いたふりかけは、お茶漬け用のものがあります。

農産物ベース

スパイシーなわさび味を筆頭に、使い勝手のいいしそ味、香ばしいごまを用いたふりかけが代表と言えるでしょう。鶏卵とのりを組み合わせた、日本でもおなじみのふりかけも店頭に並んでいます。

変わり種・プレミアム

出典:konaseasalt公式ホームページ

変わったところとしては、キムチ味のふりかけが挙げられます。また、ハワイで製造されている「Kona Sea Salt Furikake」というふりかけは、厳選された原材料に化学調味料無添加というこだわりを見せている一品です。限定商品ということもあって、ふりかけマニアの心をくすぐる一品と言えそうです。

このラインナップであれば、日本のスーパーマーケット店頭における品揃えと遜色ないという印象を受けるのではないでしょうか。これらのふりかけ中でも、定番とされているのがカツオ(おかか)、わさび、のりの三種で、いずれも安定した人気を誇ります。

ふりかけを使った料理は?

ここまでに見てきた通り、ハワイでは、料理にも広くふりかけが使われます。

中でも「ふりかけアヒ」は、マグロを用いた料理でハワイの人たちにも好まれているものです。アヒはハワイの言葉でマグロを意味する単語ですので、料理名についてはふりかけという日本語と、アヒというハワイ語のハイブリッドと言えるでしょう。

ふりかけアヒの概要

マグロにふりかけをまぶしてソテーし、それをタルタルソースでいただく料理です。

日本では、ふりかけを食材にまぶすという使い方はなじみがないかも知れません。それでも、食べると美味しいと感じる人が多く、ハワイでふりかけ料理が定着していることを、実感できる一品と言えそうです。

材料やソースについて

さまざまなレシピがあります。使う魚はマグロならなんでも構いませんが、メカジキを使うレシピが多く紹介されており、他にはハワイで多く流通するキハダを推奨するレシピもあります。

使うふりかけも、お好みで構いません。カツオを用いたもの、ごまを用いたもの、海苔を用いたものなどがレシピで紹介されています。タルタルソースでいただくことが基本ではありますが、それもこだわる必要はなく食べ方も自由でいいでしょう。

まとめ

海を渡り、ハワイに移民していった日本人たちが持ち込んだふりかけは、ハワイの食生活に深く溶け込んでいます。

ハワイ州の人口は2020年時点で140万人強と、市場がさほど大きくないことに留意する必要はあります。それでも、日常使いのふりかけだけでなく、レストランで使うような、付加価値の高いふりかけにも可能性を見出すことができるのではないでしょうか。

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