フィリピンの米食文化から見る「餅」人気 特に餅アイスが注目を集める
フィリピンは、東南アジアにある約7000もの島からなる国です。
距離的に近いこともあり、フィリピンと日本では食文化に大きな共通点があります。その1つは、お米が主食であることです。そして、私たち日本人が「うるち米」の他に「もち米」を食べるように、フィリピン人も「もち米」で食事やデザートを作っています。
この記事では、フィリピンの食文化をお伝えするとともに、今後、フィリピンで「mochi(餅)」人気が高まっていく可能性を紹介します。
フィリピンに餅を食べる文化がある?
世界では、「お米」「小麦」「とうもろこし」が3大主食と言われ、高温多湿な気候に適しているのが稲作です。フィリピンも日本と同じように、稲作に適した高い温度と十分な降水量があるためお米の栽培が古くから行われていました。
同じアジアにあるフィリピンの食文化に触れながら、フィリピンと日本を比較してみましょう。
フィリピンの概要を日本と比較
日本は、人が暮らす島の数が416島、無人島を含めると約6800島あります。一方、フィリピンの島の数は、約7600と言われています。フィリピンのほうが島の数は多くなりますが、面積は日本のほうが広く、フィリピンは北海道をのぞいた日本の広さとほぼ同じです。
フィリピンも日本同様に活火山が点在し、農作物を育てるのに不可欠な肥沃な大地に恵まれています。豊かな土地と1年を通して温暖な気候に恵まれ、フィリピンではココナッツやサトウキビ、マニラ麻、バナナを代表とする南国の果物などが主要な農産物です。
そして、どちらもお米が主食ですが、日本人以上にフィリピン人はお米をたくさん食べます。
日本人が一人当たり約119gのお米を1日で食べるのに対して、フィリピン人は約325gのお米を食べると言われています。フィリピン国内で稲作は盛んに行われていますが、自給分で賄うことはできず、日本もわずかですが輸出し、タイやベトナムなどから大半を輸入しているのが現状です。
主食を輸入に頼っている側面があるものの稲作の歴史は古く、日本に稲作が伝わった時期と同じ頃にフィリピンでも稲作が始まったと言われています。そして、フィリピンには約2000年前から継承されてきた美しい棚田があり、世界遺産に登録されています。
世界遺産に登録されているフィリピンの棚田「バナウェ」
フィリピンの首都マニラのあるルソン島の北部に、1995年に世界遺産に認定された棚田「バナウェ」があります。マニラから約350キロ離れた山の斜面に作られた棚田は、「天国への階段」と例えられるほど荘厳な景色が広がり、有名な観光地にもなっています。
人の歩ける畦の幅は30cm程になりますので、農機具に頼ることはできず、すべて手作業で行っています。
標高1500mに位置するこの棚田では、主に2種類の稲が作られています。ひとつは東南アジアで広く普及しているジャポニカ米、もうひとつは古代米とも言われる赤米です。赤米はもち米のように粘りがあり、お赤飯を食べている食感に近いと言われます。
そして、2000年かけて継承され、守られてきた棚田の風景を見ると、日本人同様にフィリピン人が命の糧であるお米を大切にしてきたことがうかがえます。
お米が主食のフィリピン人はお餅も大好き
フィリピン人の多くは、1日3食お米を食べます。
そのため、フィリピンで大人気のファストフード店「ジョリビー」だけではなく、マクドナルドでも白いご飯がセットメニューに入っています。日本では見られないフィリピンオリジナルのメニューが定番になるほど、フィリピン人はお米をたくさん食べます。
主食として食べる以外にもお米を使ったおやつも大人気ですが、うるち米ではなくもち米を使ったスイーツが人気で、ココナッツやキャッサバなどと合わせた素朴なおやつがスーパーや市場の屋台などで売られています。
そして、お餅を使った商品の美味しさが定着するにつれて、「Sukiyaki」や「Sushi」と同じように、「mochi」という日本語がフィリピンでも浸透し始めています。
それでは、フィリピン人がどのような餅料理を食べているのかを紹介します。
フィリピンではどのような餅料理が人気なの?
フィリピンならではの餅料理と定番のスイーツの紹介をします。和菓子のようなお菓子もあり、日本の「餅」との共通点がうかがえます。
カカオの産地フィリピンならではの餅料理
カカオが生育する場所は、赤道から南北に20度の地域に集中しているために「カカオベルト」と言われています。フィリピンはカカオベルト内にあるため、良質のカカオが育ち、カカオ産地としても有名です。
そんなフィリピンならではの名物料理が、もち米とカカオがメインの「チャンポラード」で、主に朝食に食べられます。
カカオと一緒にもち米を煮込むシンプルなお料理ですが、フィリピン人の好きな餅と名産のカカオのコラボレーションメニューです。また、フィリピンならではの特別な料理と言えます。チャンポラード用にタブレット状になったカカオがスーパーなどで販売されています。
和菓子のようなフィリピンの餅菓子
フィリピン人に人気のもち米を使ったスイーツは、日本の和菓子にとても似ています。豊富な種類があるフィリピンの餅菓子から、3種類の料理を紹介します。
ひとつ目は、「カリオカ」です。日本のみたらし団子を大きくしたようなお餅が串にささり、カリカリに焼いたあとに甘いタレをつけて売られています。もち米ならではの、もっちりとした食感で人気のローカルフードです。
ふたつ目は、「エスパソル」と言われる餅菓子です。ココナッツともち米で作ります。エスパソルはどこにでも売られている定番のスイーツですが、上品な見た目と素朴な美味しさから、わらび餅に例えられます。
最後は、日本の鏡餅のような「ティコイ」です。ティコイを食べる時期は、日本の鏡餅のようにお正月です。大きなティコイを切ってそのままで食べたり、油で炒めてカリカリにしたり、またアイスクリームと一緒にも食べることもあるようです。
日本の餅は人気がある?
最近フィリピンでは「mochi」の知名度が上がり、日本のお餅でない商品にも「mochi」と書かれるほど、餅の人気が高まっています。
アジアのトレンドを発信しているサイトでは、「和牛」と並んで今注目を集めている日本食としてお餅が挙げられています。
特に日本の雪見だいふくのような餅アイスが大人気で、どこの店舗でも餅のアイスだけ売り切れていることも多く、一番の人気商品と言われるほどです。
もともとフィリピン人がお餅が好きだったことも影響していますが、やはり今まで食べてきた日本食の美味しさや健康的な面が大きく後押しして、「Mochi」と書かれた商品が人気になっていると言えるでしょう。
まとめ
日本の最西端にある与那国島から、フィリピンの最北端までの距離は約480kmです。お米を主食にしていることから食文化でも共通点が多くあり、フィリピンで「mochi」が人気商品になったこともうなずけるのではないでしょうか。
現在、日本からのお米の輸入量は総輸入額の1%未満になりますが、このまま日本の「mochi」人気が上昇していくと、日本のもち米や餅製品の輸入量が増加し、日本の餅が新たなブームを生み出すかもしれません。