アレンジ力の高さが魅力!世界で楽しまれる日本のソウルフード「お好み焼き」
日本が世界に誇るソウルフード、お好み焼き。その魅力はなんといっても具材や焼き方、味付けのバリエーションの豊かさにあります。
シンプルながらも奥深い味わいと、地域ごとに異なる特色を持つお好み焼きは、日本の食文化の多様性を象徴する一品といえるでしょう。この記事では、世界に広がるお好み焼きの魅力やアレンジ例、企業の取り組みに迫ります。
お好み焼きの知名度が上がりつつあるのはなぜ?
お好み焼きはもともと関西や広島を中心に日本全国で親しまれてきた庶民的な料理ですが、最近ではその知名度が世界にも広がりを見せています。この背景にはいくつかの大きな要因が考えられます。
まず注目すべきは、海外のフードフェスティバルやイベントなどへのお好み焼き屋台の出店です。アジアだけでなく欧米で開催される国際的なイベントでも、日本の食文化紹介の一環としてお好み焼きが提供される例が増えており、香ばしい匂いや多彩なトッピング、そしてユニークな調理スタイルが注目を集めています。
とりわけ「鉄板の上で作り、そのまま食べる」というスタイルは、多くの国の人々にとって新鮮でライブ感ある食体験として好評です。
また、2023年5月に広島で開催されたG7サミットでは、各国首脳にお好み焼きが振る舞われたことも大きな話題となりました。
アメリカはお好み焼きを具にしたハンバーガー風、ドイツはソーセージ入り、カナダはフルーツやベーコンにメープルシロップを加えたパンケーキ風など、多種多様なアレンジでお好み焼きの可能性を提示したのです。
報道を通じて広島のお好み焼きが国際舞台に登場したことにより、「日本の料理としての存在感」が一層強まる結果となりました。
出典:NHK「お好み焼きの概念を覆す!?G7各国の7種のお好み焼きが完成」
さらに、世界各地の大都市でお好み焼き店を見つけることができます。アジア圏では日本の外食チェーン店がそのまま進出する例も多く、台湾やタイ、韓国、中国、フィリピン、ベトナムなどのほか、ハワイなどでも展開し、人気となっています。
一方、欧米では現地在住の日本人がデリバリーやテイクアウトを中心に個人店を経営する事例が見られ、日本の味を忠実に再現した店が着実にファンを増やしています。
お好み焼きが海外で受け入れられている理由
お好み焼きは、「ジャパニーズ・パンケーキ」「キャベツケーキ」などと紹介され、一般の消費者にも親しまれるようになりました。海外でお好み焼きが受け入れられるようになったのはなぜか、考えられる要因を3つ挙げていきます。
アレンジの自由度
海外でお好み焼きが受け入れられている最大の理由は、アレンジの自由度の高さにあります。 「お好み(What you like)」という名前のとおり、お好み焼きは具材やトッピングを自由に組み合わせられる非常に応用力の高い料理です。
基本の材料はキャベツ、小麦粉、卵、そして肉やシーフード。これに好きな具材を加えて焼くだけというシンプルな調理法で、なおかつ地域の食材や食文化に合わせて自由にカスタマイズできるため、受け入れやすいのでしょう。
またベジタリアンやヴィーガン向けには肉類を使わずに野菜や豆腐で置き換える、グルテンフリー向けには米粉やひよこ豆粉を使うなど、制限のある食事スタイルにも柔軟に対応できます。
作る楽しさ
また、「自分で作る」楽しさがあるのも魅力の一つ。「粉もん(KONAMON)」は世界各国に存在する料理のジャンルであり、なかでもお好み焼きは家にある材料を使ってフライパン一つで手軽に調理できるため、家族の団らんはもちろんパーティーやクッキングイベントの料理としても人気があります。
実際に海外のYouTubeやSNSでは、家庭でお好み焼きを作る動画が多数投稿されており、それがさらに認知度を高める要因となっています。
栄養バランスの良さ
さらに、お好み焼きはたんぱく質(卵・肉・魚介)・炭水化物(小麦粉)・ビタミンや食物繊維(キャベツなどの野菜)をバランス良く摂れる点でも、健康志向の強い海外の人々に評価されています。バランスを考慮したワンプレート料理であり、手軽に満腹感を得られる点もメリットです。
海外で見られるお好み焼きのアレンジ例
お好み焼きは世界各地で独自のアレンジが加えられています。国や地域によって馴染みのある食材や調味料が異なるため、そこに地元の工夫が反映されているのです。どのようなお好み焼きがあるのか見ていきましょう。
アメリカ
アメリカでは、日本でお馴染みのソースとは別に、唐辛子とガーリックを合わせたシラチャーソースとマヨネーズを混ぜてお好み焼きのソースとするレシピがよく提案されています。
また、キャベツと一緒ににんじんの千切りを加えることで、彩りと甘みをプラスするアレンジも浸透しています。さらに、ニューヨークのフードフェスティバルでは、チーズやキムチを加えたアレンジお好み焼きも人気を集めています。
フランス
フランスには、そば粉のクレープである「ガレット」という食べ物があります。さまざまな具材を生地に載せるという共通点から、お好み焼きを「ガレットのようなもの」と説明すると理解しやすく、認知され始めています。
現地のお好み焼きは、キャベツの代わりに白菜を使うレシピが広く紹介されています。ヨーロッパでは、一般的に手に入るキャベツが日本のものに比べて非常に硬いため、お好み焼きの食感には合わないと考えられます。一方の白菜は加熱によって柔らかくなり、優しい甘みが出るためフランス人の好みに合っているのかもしれません。
アジア諸国
東南アジアでは、日本の外食チェーンがお好み焼きにナンプラーやチリソースを加えるなど、地元の調味料を取り入れたアレンジを紹介し認知度を高めています。
パクチーをトッピングしたタイ風レシピ、キムチを具材に加えた韓国風レシピなど、日本とはまた違った味わいを楽しんでいるようです。
お好み焼きの更なる躍進を目指す企業の取り組み
日本の企業も、お好み焼きの魅力を世界に広げようとさまざまな取り組みを行っています。
代表的な例として挙げられるのが、オタフクソース株式会社の海外戦略です。オタフクソースは、2023年にフランス・パリに支店を開設し、現地でのお好み焼き文化の普及に力を入れています。
現地のフードイベントや展示会などで試食の機会を提供し、フランス人の味覚に合ったアレンジも加えてお好み焼き文化の定着を図っています。これにより、ソースの販売促進だけでなく、料理全体としての認知度向上に成功しています。
出典:オタフクソース株式会社「お好み焼と日本食の文化を欧州で広めるパリ支店、開設のお知らせ」
また、「千房(ちぼう)」や「鶴橋風月(つるはしふうげつ)」などの有名なお好み焼きチェーンも、インバウンドでの来店増加を受け海外進出を果たしています。アジアでは特に成功を収めており、ローカライズされたメニューと丁寧なサービスで現地の人々に高く評価され、ブランドの価値向上に貢献しています。
出典:千房ホールディングス株式会社「店舗ブランド」
出典:株式会社イデア「海外 店舗一覧」
さらに注目されるのが、冷凍お好み焼きのグローバル展開です。ECサイトの開設や協力企業と連携した輸出の取り組みを通じてプロモーション活動を行ってきました。
出典:千房ホールディングス株式会社「“冷凍お好み焼”輸出拡大に向けたECサイト展開による取組紹介」
冷凍お好み焼きにはソース、鰹節、青のりなどの具材があらかじめ含まれており、電子レンジやフライパンで手軽に調理できるのが特徴です。栄養バランスの良さに加え、「簡単・便利さ」も強みとして訴求しています。さらに現在は、グルテンフリーの冷凍お好み焼きの開発も進められています。
まとめ
お好み焼きは、ただの「郷土料理」や「日本の家庭料理」にとどまらず、今や国際的な人気を誇る料理へと成長しつつあります。これは、お好み焼きにアレンジ力の高さ、自作の楽しさ、栄養バランスの良さといった多面的な魅力があるためです。
世界各地でローカルな食材や文化と融合しながら、独自の進化を遂げているお好み焼き。日本企業の積極的な海外展開や、冷凍食品としての普及も相まって、今後さらにその魅力は世界へと広がっていくでしょう。