日本発の世界的食材!カニカマが各国で人気の理由とは?
日本でお馴染みの「カニカマ」は、英語では「Crab stick」や「Imitation crab meat」、または日本語由来の「surimi(スリミ)」と呼ばれ、現在世界中で大人気の食材となっているようです。
すでに、自国でカニカマ工場を稼働させている国もあり、その需要の高さが伺えます。
今回は、カニカマの輸出事情や海外での生産量、世界中で人気の理由、カニカマがそれぞれの国でどのように食べられているかなどについて詳しく解説していきます。
日本でお馴染みのカニカマ
カニカマは、名前とは異なり、実は原材料にカニは含まれておらず、白身魚のすり身で作られています。臭みがなく、味にクセが少ないスケトウダラが原材料であることがほとんどです。
スケトウダラのすり身に卵白・でんぷん・塩を加えて作られますが、この際にカニの味を再現するカギとなるのが、カニエキスの存在です。カニエキスは、カニの殻や身などから抽出したもののため、本来のカニの味を引き出してくれます。
さらに、カニカマの赤い色も、実はトマト色素やパプリカ色素で着色して鮮やかに仕上げてあります。
現在では食材として当たり前に食卓に並ぶカニカマですが、もともとは人工クラゲの製造を試みた際の副産物がきっかけで誕生したようです。
水産加工メーカーの株式会社スギヨによれば、結局は失敗作となった人工クラゲでしたが、束にして食べてみるとカニの繊維の食感に近いことに気づいたとのこと。
最初はどこにも受け入れられずに苦労したようですが、一軒の問屋を通じて築地に並んだことがきっかけで、一気に人気が出始めました。
1972年に誕生した日本独自の食品といえるこのカニカマが、現在では世界各国でブームを巻き起こしているのです。
カニカマの輸出事情や海外での生産事情は?
ここでは、日本産カニカマの輸出先と自国で生産している国について、生産量も含めて解説します。
海外への輸出事情
2021年に財務省が発表した貿易統計によれば、カニカマを含む練り製品の輸出量トップはアメリカで、香港と中国が続きます。
この統計からは、和食人気が高く、寿司レストランの多い国での需要が高いことがうかがえます。
さらに2014年以降、カニカマはヨーロッパでも広く知られるようになりました。現在ヨーロッパ諸国の中で最もカニカマの消費量が多いのがフランスです。
フランスではカニカマは手巻き寿司やサンドイッチ、サラダなどに使われています。ただし、フランス政府が国内産製品を優先する政策をとっていることから、日本産カニカマではなく、フランス産のカニカマ(surimi)が販売されているのが実状です。
フランスのスーパーに行けばsurimiが当たり前のように置かれていることから、日本発の食材がフランスの食文化に根付いていることがうかがえます。
海外での生産量
カニカマの製造・販売を手がける株式会社スギヨの2021年の集計によれば、カニカマ生産量の第1位は16万6,500トンを生産するEUでした。その中で8万トンを占めるのがリトアニアです。
リトアニアの生産量が世界トップである理由には、世界最大級のカニカマ工場があること、そして原材料であるスケトウダラの捕獲量が世界一であることが挙げられます。
カニカマを製造するためには専用の機械が必要ですが、リトアニアの工場で使われている機械は日本製です。実は、株式会社ヤナギヤのカニカマの製造装置が世界中で使われており、世界シェアの実に70%を占めています。
また、アメリカでも、ヘルシー志向の高まりに伴い、カニカマの生産量が右肩上がりの状況です。世界最大級のスーパーマーケットチェーン「Walmart」でもカニカマは購入可能です。
世界中でカニカマが人気の理由とは?
ここでは、カニカマが世界中で人気となった理由をいくつかご紹介していきます。
カニの代替品
世界的に天然のカニの捕獲量が減り、カニの価格が高騰するなか、カニカマはとても安価にカニの風味を味わえる食品として地位を確立しています。
東ヨーロッパやアメリカの内陸部など、魚介類を食べる機会が少なかった地域でも、カニカマは「魚臭くない」「カニの殻がなく、食べやすい」といった歓迎の声が上がっています。
また、一部、カニエキスを一切含まないアレルギーフリーのカニカマも販売されており、甲殻類アレルギーがあっても安心して食べられると喜ばれているようです。
手軽さ
カニカマはスティック状であるため、スナック感覚で食べられることも魅力の一つです。しかも、低カロリーでありながらタンパク質もしっかり摂れるカニカマは、ダイエッターからの注目も集めています。
さらに、料理のアレンジがしやすいこともカニカマが人気の理由です。カニカマには薄味がついているためそのまま食べることもできますが、個人の好みで自由に味付けすることも可能です。さまざまな料理に使えるため、レストランでも家庭でも広く受け入れられています。
日本食レストランの増加
2023年10月に農林水産省が発表した「海外における日本食レストランの概数」によると、2021年から2023年のわずか2年間で日本食レストランの数は1.2倍に増加し、約18.7万店に達しました。
特に中南米では2年間で約2倍に増加、ヨーロッパとアジアでは約2割増となっています。
この背景には世界規模での寿司ブームがあり、カニカマを具材としたカルフォルニアロールは、アメリカやフランスのスーパーでも手軽に購入することが可能です。寿司ブームによって、世界のカニカマの需要が高まったことは明らかな事実といえるでしょう。
カニカマは世界でどのように食べられている?
世界中で大きな需要があるカニカマですが、いったいどのように食べられているのでしょうか。ここでは、日本での食べ方との共通点と相違点についてご紹介していきます。
日本との共通点
日本のカニカマの食べ方といえば、そのまま食べる・マヨネーズをつける・サラダの具材にするといったあたりが定番です。
実は、フランスでも同じ食べ方をする方が多くいます。ただし、サラダに使用する場合は、カニカマをほぐすのではなく、ハサミで切ってサラダに入れるのが一般的なようです。
このほかに、カニカマを寿司の具材として使用するのも共通点といえるでしょう。日本ではレタスやきゅうり、卵焼きなどと一緒に太巻きにする「サラダ巻き」が定番ですが、海外ではsurimiをそのまま巻いた「Surimi roll」などがよく見られます。
日本との相違点
日本においてのカニカマは副菜のイメージが強いですが、ヨーロッパでは主菜にもなり得ます。たとえば、グラタンやパスタ、パイ包みのように火を通す料理にもカニカマは使われているようです。
主菜や副菜だけでなく前菜になることもあり、ジュレやテリーヌの具材としてカニカマが一皿を美しく彩ることもあります。これは日本の食べ方とは大きな違いといってもよいでしょう。
一方のタイの屋台では、独自のカニカマ料理を味わえます。揚げたカニカマを提供するお店もあれば、串刺し状態のカニカマを鍋で煮込んで提供するお店も見ることができます。
さらに、タイのセブン-イレブンでは、カニカマ入りのホットドッグが販売されており、とても好評のようです。
まとめ
日本発のカニカマは、すでに世界でもお馴染みの食材となっていることがわかりました。
カニカマの生産量が最も多いのはヨーロッパですが、和食が特にブームになっているアメリカやアジアでも更なる需要の高まりが期待できそうです。
今後カニカマの生産量・輸出量拡大を図るには、各国の食文化に合った戦略が必要となるでしょう。日本のカニカマ製造企業各社も、カニカマ発祥国として輸出拡大を狙っているのが現状です。